2016年の4テーマ:米空軍科学技術諮問委員会

Dahm.jpgSAB.jpg10月9日、米空軍の科学技術諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)が、来年2016年の検討テーマを明らかにしました。
SABは、多様な分野から集められた約50名の研究者や科学者で構成され、前の米空軍首席科学者を勤めていたWerner Dahm氏が委員長を務めています。SABは毎年、米空軍が依頼したテーマ分野について、淡々と事実と現状に基づき、何がその分野で今後起こりうるかを時系列で予想し、投資の判断材料を提供する役割を担っています
今年2015年のテーマは3つで、「既存無人機の強固に防御された空域での生き残り策」、「量子コンピュータの活用可能性」、「非ネットワークシステムのサイバー対策」でした。
検討結果については「原則非公開」で、一般に明らかになることは少ないのですが、テーマの選定から「米空軍の関心事項」や「技術動向」を伺い知ることが出来るのでご紹介します
10月13日付米空軍協会web記事によれば
SAB2.jpg●10月9日、SABが公表した2016年のテーマは4つである。迅速な検討を要する課題として「航空機搭載型のレーザー兵器」を挙げ、長期的な課題として「A2AD域での作戦」、「意思決定を支援するデータ分析」、「電子戦における不透明で変化する脅威対応」を取り上げた
●(各委員が各担当分野で検討し、)委員会として最初に各委員が知見を持ち寄るのが来年1月で、最終報告を6月に予定する。ただし結果を急ぐ「航空機搭載型のレーザー兵器」については、4月までにレポートをまとめる
●「意思決定を支援するデータ分析」に関しては、産業界で種々の教訓が得られている、多様な情報源からの複数階層に及ぶデータの分析に関して吟味する
●「電子戦における不透明で変化する脅威対応」では、今後の複雑で常続的に変化する電子戦環境に航空アセットが上空で対処するために、搭載機材が上空でセンサー等から入手した情報を元に電子戦対応を柔軟に行う事を検討する
●「A2AD域での作戦」については、強固に防御された空域では現有AWACS等のアセットが当該空域に接近出来ず、指揮統制や作戦運用を可能にする戦闘空域の状況把握が困難になる事を想定し、OTHレーダーや多様なセンサーからの「端切れ情報」を融合する技術を吟味する
「航空機搭載型のレーザー兵器」について
SAB3.jpg●本件については、米空軍特殊作戦コマンドに対し、同コマンド保有のAC-130Jにレーザー兵器を搭載するかどうかの判断に資するような、実行可能性に関する評価を全体のレポートに先んじて実施する
●Dahm委員長は、機材から発生する熱の処理や、航空機に発生する「jitter:ノイズから生じるデータや信号の乱れ」への対処等々の問題に触れつつも、まず技術的にどの程度が可能かを部隊に示さなければ、彼らも作戦コンセプトを整理出来ないだろうと述べた
●本年9月、同コマンドのBradley Heithold司令官は、AC-130Jに2020年までにレーザー兵器搭載を搭載する計画について語った際、「ケネディー大統領が1970年までに人類を月に送る」と宣言したと同様の挑戦だと語っている
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innovation3.jpg「A2AD領域での作戦」や「電子戦」に関する事など、切羽詰まった課題も含まれており、米空軍の問題認識が伺えます。可能な範囲で同盟国も巻き込み、知恵を絞って対処したいものですし、日本としても協力を惜しまない姿勢が求められましょう
しかし以前も愚痴りましたが、未だに日本の大学の教員等には、「軍事に関する事には一切協力しない」と、国防に非協力的な態度を取る者が多数存在します
大自然の生き物全てに共通する使命を忘れるような輩には、研究費など支給をしないぐらいの強い姿勢が必要でしょう
米空軍SABに関する記事
「現存無人機のA2AD域での生残り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-06
「米空軍科学諮問委員会の3テーマ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01
米空軍Scientific Advisory Boardのサイト
→http://www.sab.af.mil/

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