米陸軍も緊急能力造成室RCO設置

Fanning-DAF.jpg8月30日、同性愛者と公言しているEric Fanning米陸軍長官が講演し現場の緊急ニーズを踏まえ、既存技術を活用したり組み合わせたりして迅速に現場に投入する緊急能力造成室(RCO:Rapid Capabilities Office)を、同日立ち上げたと発表しました
米陸軍の装備開発は、長期間かけて資金を大量投入したあげくに最終段階で中断や、20年検討して装備化されたら既に時代遅れ、といった「死屍累々」状態が続く評判の悪さがあり、遅ればせながら米空軍が成果を上げている同名組織設立(海軍も設置済み)で、汚名挽回を目指します
背景には、米陸軍が15年間イラクやアフガンに明け暮れた後、ウクライナで対峙したロシア軍が、無人機や電子戦やサイバー戦や宣伝戦を交えたハイブリッド戦で恐るべき能力を発揮していることや、中国を初めとする潜在敵国がA2ADと言われる拒否戦力を着実に充実していることがあります
とりあえずは、電子戦やサイバー戦や残存性(survivability)、更にGPS喪失時の代替PNT(position, navigation and timing)に重点指向し、Fanning米陸軍長官が自らRCOを監督する評議会のトップに付く姿勢です
8月31日付Defense-News記事によれば
Fanning-RCO2.jpg30日、BloombergのイベントでFanning米陸軍長官はRCOを同日創設したと語り、「米陸軍が最も要求度の高いものを優先に、1年~5年で前線に投入にする姿勢で取り組む」「前線が緊急に必要とするものを、より迅速に革新的な調達プロセスで提供する」と語った
●同長官は背景として、「敵対者は米軍の弱点をよく観察し、意欲的に近代化を進めてて米軍との技術的差を縮めている」、「米軍の敵対者に対する優位性は、かつてほど無く、望ましい差も無い」と危機感を訴えた
●例として長官は、「ロシア軍はウクライナで、無人機や防御サイバー戦や先進電子戦を用い、新たなレベルの洗練された戦いを行っている」、「米軍の容易な進出を拒否するA2AD環境下での作戦運用の必要性が高まっている」こと等を挙げた
●そしてRCOは当面、電子戦やサイバー戦や残存性、更にGPS喪失時の代替PNTに取り組み、半年以内に目に見える成果を出すが、「ドメインをまたぐ融合された解決法の優先順位を見定め、解決法をリーダー達に直接示してその反応を直にうけるプレッシャーの中で業務を進める」と長官は説明した
RCOの運営や当面の取り組み
RCO-AF.jpgRCOの組織は階層や結節を少なくし、機敏で現場ニーズに反応の良いものを目指し、長官自身がリーダーとなる評議会(board of directors)を併せて設置するとも長官は説明した。なお同評議会は、調達の円滑性、各種試験、現場配備、契約行為の全ての決定権を持つ
●また、米陸軍省のKatrina McFarland調達担当次官やMark Milley陸軍参謀総長も評議委員となり、国防省のケンドール調達担当次官もしかるべき役割で関与してもらうと説明した
軍需産業との接点はRCO内の「Emerging Technologies Office」が専属で担当し、各種イベントやフォーラム等を通じて陸軍のニーズを明らかにし、企業側の技術力との橋渡しを行うとRCO関係者は述べている
●同長官はまた、まず最初の電子戦分野では、GPSが妨害を受けた際の対処に取り組み、10月の米陸軍年次会議の席で、原子時計を活用した独立航法システムの活用について等について提示し議論すると説明し、
●またRCOは、防御的なサイバー手法にも取り組んでおり、評議会の議題に上る予定だと述べ、既存の技術や現有装備の他方面での活用など、時間や費用をかけないで飛躍につながる目を追求すると語った。
Fanning-RCO.jpg最初の評議会は9月中旬に開催する予定だが、予算確保の面では政府や議会との交渉が控えている。これに関しRCO関係者は、編制作業を終えている2017年度予算でも、経費捻出の道はあると表現している
2018年度以降の予算には、米陸軍として正式にRCO関連経費を計上したいと考えている。必要な人員の確保についても予算と同様に、既存の技術や装備を融合する事を主眼としており、それほどは必要としないと関係者は主張している
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まだ40代前半で、しかも史上初めて陸軍トップで「ゲイ」宣言のEric Fanning陸軍長官ですが、仕事への取り組みは前向きでスピーディーです
「半年で成果を出す」との発言に期待し、しばし待ちましょう。それにしても最近、電子戦やサイバー分野で、結構画期的な新兵器や装備が出そうな予感が漂っています
まぁ・・・完成しても、あまり公にならない兵器でしょうが・・・。
MC-12.jpg米国防省内で最初にRCO(Rapid Capabilities Office)を設置したのが米空軍で、当時のゲーツ国防長官の命により、前線のニーズが高かった映像データ中継機能を持った航空機を、既存の航空機に既存の装備を搭載する事で実現し、わずか1年で前線投入に成功したMC-12が最初の成果です
米空軍RCOの活動関連
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
米空軍RCOの原点事業MC-12について
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02
「成果第1号MC-12について」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-06-12
電子戦で画期的装備出現の予感
「人工知能で電子戦を戦う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-31

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