イスラエル目線で2017年の中東を

Netaniaf.jpg元旦付Defense-Newsが、恐らく1日に行われたイスラエル国防省(又は国防情報部)関係者による記者団に対する「2017年予想見積もり」ブリーフィングの様子を紹介しています。
「A senior defense official」が語ったと言うことで表現が微妙ですが、全般にイスラエルが戦争に巻き込まれる可能性は低いと「cautiously optimistic」に見積もりながら、今日の中東では、双方が相互に「戦争したくない」と考えている時に地域の力学で緊張がエスカレートしがちだと警戒しています
イスラエルの脅威分析ではお馴染みの、北のレバノンのヒズボラ、ガザ地区のハマス、西岸のパレスチナ自治政府PA、そしてシリアやイランが順次分析に現れますが、ロシアにも言及しているところが興味深いです
最近中東専門家の間では、対ISILやソマリアやリビア等で中東が混乱し、イスラエルから世界の目が離れている間隙に、西岸地区での入植地拡大をイスラエルが急速に図っているとして厳しい非難の声が挙がっていますが、当然一切触れていません
馴染みのない方にはご興味のない話でしょうが、中東を無視は出来ませんので、勉強のため取り上げます
元旦付Defense-News記事によれば
Nasrallah.jpg●イスラエルの不安定を招く可能性の一番高いのは西岸地区のPAとガザ地区のハマスであり、これには引き続き警戒の手を緩めるわけには行かない
イスラエルと接する一番強力な戦力を持つのはヒズボラであるが、緊張のエスカレーションに陥らない限りは、直接対峙の可能性は低い
●戦乱で疲弊したシリアに関しては、ロシア等がそのプレゼンスを後退させた時に、イランやヒズボラがどのような動きに出るかに関し、不安は尽きない。シリアのアサド大統領に対しては有利な位置にあるが、イランとヒズボラの伸張を懸念しており、現在の混乱の着地点として恐れる方向
ヒズボラの構成員は約8000人と見積もっているが、2011年以降、既に1700名が戦死し、数千名の負傷者が出ている。それでもヒズボラはイスラエルとの戦いに備えて武装努力を継続しており、イスラエルの攻撃に備えている
Khamenei.jpgヒズボラ指導者のNasrallahは毎週のようにイスラエル征服を訴えるような人物であり、イスラエルは悠長に構えていられない
●イランに支援されたヒズボラからは目を離せない。特にヒズボラが航空機攻撃用の対空火器は、将来ロシアに対して使用される可能性もあり、機会があればプーチン大統領に助言したい。中東の安定と中東でのロシア国益を確保したいならば、ヒズボラから目を離すなと
●イランに関しては、P5と独がロシアと合意した核包括合意が、イランからの核脅威を当面の間は取り除いたが、イランのシリアやレバノンやガザや西岸のテロ組織に対する行動は、イスラエルに対する耐えることのない脅威の源泉である
●(トランプ大統領や米国の共和党政権誕生により、核包括合意が破棄されたり再交渉となる可能性に関する質問に対し、)イランがテロの源泉であり、弾道ミサイルを活発に開発しており、国際社会は「あめとむち」で対処しなければならないが、この合意は安定を改善する機会であり、この機会を逃すべきではない
Rouhani.jpgイランは5月に大統領選を迎え、イランは不安定の年を迎える。ロウハニ大統領は内政問題を訴えるだろうが、ハメネイ最高指導者や革命防衛軍は「革命の輸出」を主張するだろう。
昨年6月の議会選挙では現大統領側が有利に戦ったが、依然として最高指導者側はシステム全体のコントロールを握っている。一方で最高指導者側も国民への圧力作用の限界を知っている
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イスラエルが得意の「プロパガンダ」と見るのも結構ですが、イスラエルがイランとの核合意を一定評価している点が興味深いです。あれだけ核合意に反対していたのに・・・。トランプ氏に中東をかき回されてはたまらない・・・との思いが先行しているのでしょうか・・・。
いずれにしても、相変わらず激動であろう2017年を見る視点の一つとしてご活用下さい
イスラエル関連の記事
「国際消火飛行隊を提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-29
「イスラエル後に湾岸へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21

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