13日、米空軍が保有する巨大空中爆発爆弾「MOAB:Massive Ordnance Air Blast」が、史上初めてアフガニスタンで対ISIS作戦に使用されたとの報道がありましたので、この「核爆弾以外で投下された最大の爆弾」とか「全爆弾の母:the mother of all bombs」とか呼ばれる爆弾についてお勉強したいと思います。
このMOABは正式名称「GBU-43B」で、「実戦で投下された最大」の爆弾だそうですが、米軍が保有する核兵器以外で「最大の爆弾」ではありません。
ちなみに、13日に投下されたMOABは21600ポンドですが、実存する核兵器以外で「最大の爆弾」は30000ポンドの巨大貫通弾MOP(Massive Ordnance Penetrator:GBU-57A/B)で、強固に防御されたイランの地下核施設の攻撃を想定したモノだと言われています(2007年に初試験でボーイングが製造担当)
MOAB正式名称「GBU-43B」のあれこれ
●MOABは、それほど強固でない地表目標を広域に渡り破壊することを狙う爆弾で、地中に貫通する能力は無い。従って、広範な地雷原、渓谷、洞窟等に潜む敵や目標に用いられる
●MOABは、当時のサダムフセインを威圧するために2002年当初から開発が始まり、構想から2003年3月11日の最終試験までわずか1年あまりの迅速さで米空軍研究所AFRLで製造完成された。そして同年4月1日に部隊配備されたが、イラク戦争では使用されなかった。
●長さ10m以上であるため通常の爆撃機には搭載できず、C-130輸送機の後部から物量投下する要領で、パラシュートで搭載台車ごと機外に引き出し、投下後に搭載台車と分離して自然落下する。ただし、GPS誘導装置付の尾翼により、誘導爆弾として使用できる
●爆薬2/3とアルミ1/3で炸薬部分が構成されている言われているが、価格や何発保有しているかなど、MOABの詳細は非公開である
●アフガン派遣米軍のJohn W. Nicholson司令官(大将)はMOAB使用について、「アフガンISISは損害が増え守勢に立たされていることから、防御を簡易仕掛け爆弾IEDやトンネルや塹壕で固めている」「(この様な状況を踏まえ、)障害を取り除き、我が攻勢モメンタムを維持するため、最適な爆弾として選定した」と説明した
●軍事コンサルタント企業Teal GroupのSteve Zaloga上級分析官は、トマホークやJDAMとは異なり、MOABは強烈な炸薬で戦場上空に広範な爆発を発生させることで仕掛け爆弾や地雷を誘爆させ、「広範な地表面から短時間で仕掛け爆弾等の脅威を除去し、同エリアのISIS戦闘員を排除する事が出来る」と解説している
●一方で、深く強固に構築された洞窟や陣地を破壊する能力は無く、小型で弱い洞窟等にのみ有効だろうとも述べている
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2003年には完成していたMOABですから、今更アフガンで必要になったから投下したと説明されても白けますが、当然北朝鮮へのシグナルでもあるのでしょう。
実験映像や解説映像が公開されていますが、今ひとつMOABの威力がピンと来ません。週末の報道をフォロー致しましょう・・・
MOABに言及の記事
「シリア化学兵器に?巨大貫通弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-27
「イラン核施設の完全破壊は困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-02
MOPに関する過去記事
「超巨大貫通弾MOP完成か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-18
「シリア化学兵器に?巨大貫通弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-27
「対イラン?巨大貫通弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-16-1