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エスパー長官指示で夏までに新方針決定
空母削減と有事無人艦艇増加方針は規定路線か?
20日付Defense-Newsが、米国防長官室作成の文書を入手し、エスパー長官が夏までを目途に進める全国防省を巻き込んだ「new joint war plan」作成の一貫として、エスパー長官が米海軍の体制再検討を強く推進していると紹介し、空母を2隻削減し、有事には無人で運用する小型艦艇導入を積極的に推進しようとしていると紹介しています
あくまでもエスパー長官は、全国防省を含めた新たな作戦構想を検討し、ウォーゲームなどの結果を踏まえて新たな方向性を打ち出すとの考えらしいですが、長官が数ヶ月間言い続けていると脆弱な空母削減は規定路線のような雰囲気を記事は表現しています
米海軍は3月に、半年かけて新たな空母のあり方を検討すると突然打ち出していましたが、背景にはエスパー長官の頭にある「空母削減」に対抗すべく、米海軍の対案をまとめる作戦なのかもしれません。
ちなみに記事は、艦載航空部隊については現計画の再考を求めていないようで、そのあたりの「こころ」が良くわかりませんが、エスパー長官の考え方は、1月にCSBAが発表したレポートの方向に似ており、空母削減を含む米海軍艦艇議論が盛んになりそうですので、ご紹介しておきます
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
20日付Defense-News記事によれば
●Defense-Newsが入手した文書は、現在11隻体制の空母を9隻体制にすることを求め、また65隻の有事無人で平時は少数の兵士で運用可能な小型艦艇の導入を計画している。またイージス艦などの大型艦艇については、現在の90隻に近い80隻以上を目指し、小型艦艇を現在よりもかなり多い55-70隻要求すると記している
●この文書の内容に関し、国防省報道官はコメントを避け、独自に米海兵隊とのより緊密な連携を目指した戦力構造検討を行っている米海軍幹部は、「国防省内で議論段階にある文章に関してコメントはしない」としている
●元米海軍大佐で軍事アナリストのJerry Hendrix氏は、「空母2隻削減案は米海軍に戦力投射の根本的変革を求めるものだ」、「中東やアジア太平洋に常駐している現在の体制に大きな転換を求め、前方展開プレゼンスの考え方から、有事増強モデルへの転換を空母部隊に求めることになる」と見ている
●11隻体制を9隻体制にするということは、空母の定期修理や核燃料交換サイクルを考えると、平均して使用可能な空母が6-7隻のみとなる事を意味し、各地域コマンド司令官の作戦構想にも転換を迫るものとなる
●3月にエスパー長官はDefense-Newsのインタビューに答え、米海軍のあるべき態勢に強い関心を持っていると語り、国防長官室内のネットアセスメント評価部署に対し、米海軍と共にウォーゲームや分析を行い、小さな海軍に向けての道筋を検討するよう指示したと述べていた。
●ただし長官は、最終的な決断は、夏に終了する全国防省で行う「new joint war plan」検討の結果も踏まえて行うと述べ、現時点では何も決まっていないと説明していた
●エスパー長官は「将来の艦艇部隊に関するこの検討プロセスを経て、あたらな方向性や基礎的考え方を整理する」、「これは水上艦艇部隊にとって大きなgame changer検討となる」、「ただしこれはall-or-nothingの検討ではなく、私もその重要性を十分認識している空母をゼロにする検討ではない。空母は米国のパワーを象徴し、大きな抑止力であり、人々の大きな関心を集めるものだ」と表現していた
●一方で国防長官室の文書は、大型艦艇の規模について実質的に凍結を示唆しており、米海軍が進める大型艦艇数削減の動きに慎重である。なお米海軍は、沿岸戦闘艦を現有20隻プラス契約済み15隻体制、これに20隻の次世代フリゲート艦を合わせた55隻をベースとして、追加のフリゲート15隻の計70隻程度を構想している
●大きな変化は、エスパー長官がインタビューで焦点に当てていた、平時は少ない人員で運用し、有事厳しい環境下では無人で運用する小型艦艇導入である。
●同長官は「一つのオプションとして、無人でも運用可能で、普段は少人数で運用する小型艦艇の迅速な導入だ」、「状況の推移や艦艇搭載装備に応じ、普段は有人運用をしているが、情勢の変化や作戦環境の変化により、無人運用にして犠牲が大きな負担とならない使用法に転換する」、「これがあるべき方向に向かう道だ。より積極的にこれを進める。迅速に、2030年までに355隻体制に到達する道だと信じている」と表現していた
●米海軍は水上戦力の打撃力をより安価に増強するため、攻撃兵器を搭載した一連の無人艦艇導入を検討している。これにより、中国が攻撃すべき目標を増やし、中国の攻撃目標選定を複雑にする効果も狙っている
●これに関し米海軍トップのMichael Gilday大将は、「無人艦艇を編成に組み入れなければならないことはわかっている。96発のミサイルしか搭載できない艦艇を2000億円以上かけて建造し続けることは出来ないのだ。敵は猛烈なペースで攻撃能力やプラットフォーム数を増強しているからだ」と述べている。
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最後の米海軍トップの発言は、無人艦艇導入は米海軍も検討している・・・との言い訳の言葉で、根本的に空母は脆弱で、平時におけるグレーゾーンでの使用には「too mauch」だとのエスパー長官の考え方に賛同しているわけではありません
米海軍はこのほかにも、戦略原潜の更新(コロンビア急の導入)、造船・修理施設の維持問題(高価な艦艇ばかりで、毎年購入できず、操船所の人が維持できない。修理費が確保できず、修理も計画的に出来ず、修陸上が維持できない)を抱えており、これらの解決のためにも、小型無人艦艇の建造が求められているようです
コロナ関連で臨時海軍長官まで首になり、リーダーを失った形の米海軍が、コロナ対策で苦しむ中、国防長官主導の海軍改革案検討でどのような姿を見せるのかに注目です
米海軍を巡る動きと議論
「米海軍が半年で空母再検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「5年計画で新型大型艦艇設計」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-14
「最新イージス艦にレーザー兵器搭載」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-23
「米海軍トップが軍種予算シェア見直し要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16
「中国巨大艦艇が就航」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15-1
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24