えっ・・・! 軽攻撃機に空中給油任務を!?
5日付Defense-Newsが、米空軍が対テロ作戦への投入を念頭に、導入可否を含めて複数の軽攻撃機を対象に検討している件について、Wilson空軍長官へのインタビュー記事を掲載しています。
7月下旬から8月30日までに、4機種の第1弾デモフライトを企業に依頼してHolloman空軍基地で行ったようで、今後は年末までに「コストパフォーマンス」報告をまとめ、併せて「戦闘能力デモ飛行」を行うかも検討するとのことです
米空軍は、対テロ任務に最新の攻撃機を投入することは非効率だとの問題意識を持っており、A-10の退役問題が持ち上がる中で軽攻撃機導入の検討を開始しており、またアフガン空軍にハイテクプロペラ攻撃機A-29を提供し、訓練も担当している経験から、その能力に期待しているようです
Wilson空軍長官の発言からは、導入する方向は固まっているが、どの程度の任務を行わせるか、そのための装備をどこまで追求するかの「トレードオフ」議論が今後の中心になるようです。
そして最後に驚きの「空中給油任務」も検討の対象発言です・・・!
なお今回デモに参加した航空機は
・A-29 Super Tucano(Sierra Nevada Corp、Embraer)
・AT-802L Longsword(L3 Technologies、Air Tractor)
・Scorpion jet(Textron)
・AT-6 Wolverine turboprop(Textron)
5日付Defense-News記事によれば
●空軍長官は、追加で「戦闘能力デモ飛行」を実施するかどうかを、同試験への参加機種も含め、早ければ秋ごろまでに、遅くとも来年1月までには決めたい、と述べた。
●また同長官は、「米空軍が軽攻撃機を前線に投入することは恐らく間違いないだろう。しかしどのような任務で使用するかは今後細部を検討する必要があり、その際の考慮事項として、指揮統制システム等をどの程度活用するか等々、煮詰める必要がある」とも表現した
●米空軍は効率性を追求する過程で、中東での地上部隊支援や低列度任務で高性能ジェット攻撃機を効果的に保管するため、安価な軽攻撃機の導入に関心を示している
●既に米国が提供し、米空軍が訓練を行ったアフガン空軍の「A-29 Super Tucano」が、過去18か月間、無事故で任務を遂行していることも背景にある
●更に空軍長官は、「8月にイラクやアフガンを訪問した際、現地で空中給油機の需要が極めて高く、現有給油機の負担を軽減するためにも、軽攻撃機が空中給油機として使用できるかどうかも一つの視点として検討する」と述べた
●ただ今回のデモ飛行参加機は空中給油を行ったことはなく、その機能も備えていない。
●ただ企業関係者によれば、「AT-802U」と「Scorpion jet」は、改修することで外装燃料タンクを装着できる可能性があるようである
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空軍士官学校卒のWilson空軍長官が、思い付きで「軽攻撃機に空中給油任務を」と言うはずはなく、米空軍として真剣に考えているようです。驚きです。
デモを行った軽攻撃機候補はいずれも小型で、可能な燃料追加搭載量が少ないでしょうし、行動半径もジェット機よりも劣るでしょうし、それでもこれらを空中給油機にと考える現場事情がしのばれます。
米海軍が初の空母艦載無人機を、空中給油任務にと持ち出した際は大いに落胆しましたし、今も残念ですが、前線感覚というか、作戦感覚の不足を少し反省しました。
日本での空中給油機の重要性も訴えてきたつもりですが、もう少し腰を入れて考える必要がありそうです
空中給油機の話題
「米海軍の無人給油機への期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「空軍次期給油機に重大問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-02-1
軽攻撃機の話題
「米空軍が300機導入に賛成!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-21
「米空軍が検討を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-07
「有力候補:A-29映像解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-02
「泥沼化:アフガン軽攻撃機の選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-23