8月30日、米空軍のF-35操縦教育のメッカとなるアリゾナ州Luke空軍基地で、操縦者に相次いで発生した低酸素症のような症状を受けて、6月20日から飛行高度の上限を設ける等してきたF-35の飛行制限を解除すると発表がありました
この飛行制限は、5月2日から6月8日にかけ同基地離発着で行われたF-35飛行訓練で、低酸素症のような症状を訴える事象が5件連続して発生したことを受け、6月9日から19日まで飛行を停止し、その後の飛行再開に際し課せられていたもので、25000フィート(約7500m)以上の高度での飛行禁止や予備酸素搭載増加などの措置を行っていたことを指します。
「時系列記録:F-35低酸素症(疑い)事案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-11
結論的には、米空軍は外部機関の助けも借りて精力的な原因調査を行い、原因不明ながらF-35の酸素生成装置(OBOGS)を改修交換する打ち出すなどしましたが、これといった特定の原因を突き止めるには至りませんでした。
制限解除を発表した同基地の第56戦闘航空団司令官Brook Leonard准将は、原因調査の2か月間で多くを学び、潜在的な原因を相当削減できたとして「区切り」をつけると語りましたが、継続的に関係機関と協力しながらF-35の飛行をモニターしていくと説明しています
8月30日付Defense-News記事によれば
●30日、Leonard航空団司令官は、「特定の原因を究明はできなかったが、原因調査の2か月間で多くを学び、不規則な呼吸や一酸化炭素の摂取の潜在的な原因を削減でき、F-35飛行手順や訓練を改善することができた」と発表の中で述べた
●そして「我々はF-35A型と飛行訓練とその能力に大きな自信を持っている。今後も継続的にF-35A運用を細かにモニターし、国防省F-35計画室や航空医学関係機関等とも連携を維持して改善つなげ、将来の航空戦力構築に前進する」と述べた
●同航空団の報道官Rebecca Heyse少佐によれば、原因調査チームは飛行場の高温環境や一酸化炭素量の操縦者への影響調査や試験を行い、特に操縦者への影響を示唆する結果は得られなかった模様である
●更に同少佐は、飛行準備や飛行手順を見直し、予備酸素の搭載量を増やし、F-35に搭乗後速やかにマスクを装着させるなどに改めたことも一連の事案再発防止に効果があったものと評価しているとコメントしている
●また別の空軍関係者によれば、6月末から2か月以上の飛行制限期間に低酸素症のような事案が1件だけしか発生せず、その1件も操縦者の酸素マスクのバルブ不具合が原因だと特定されており、問題が生じなかったことも制限解除の背景にある
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飛行の安全にかかわる重要なことですので、今後も皆で注意していきましょう。
フィンランドが次期戦闘機選定でF-35を検討しているらしいですが、トランプ大統領が「改良型FA-18とF-35の比較検討を行う」との主旨のツイートを昨年12月と今年2月に行った決着がついていなことからもめているようです(参照、以下報道と過去記事)
→http://www.defensenews.com/air/2017/08/29/trumps-remarks-on-boeing-super-hornet-confuse-finnish-fighter-competition/
「トランプ再びFA-18大量発注を示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-18
「トランプ:F-35の代替にF-18改良型を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-23-1
その他、海外売り込みへの影響を懸念し、射出座席改修も未完なのに制限を解除したりと、外部の目を気にした「こそこそ対応」が目につきます。なんと言っても、人の命がかかっていることですので、皆で注意しておきましょう。マスごみの皆様もよろしくね!
「改修未完なのにF-35体重制限解除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-17
時系列記録:F-35低酸素症(疑い)事案
「F-22事案の教訓を生かせ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-11
「原因不明でも関連装置を交換へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-19
F-22事案を振り返る
「最終的に飛行再開・原因特定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25
「不沈F-35と低酸素F-22」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09
「F-22再度飛行停止と再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-24
「F-22操縦者に謎の症状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-31