5日、米空軍が次世代の軍事衛星打ち上げロケットの2022年使用開始を目指し、企業からの提案を募る提案要求書(RPF:request for proposal)を発出しました。
「次世代の」というと聞こえは良いですが、このEELV(進化型使い捨て打ち上げ装置:Evolved Expendable Launch Vehicle)計画の発端には、ウクライナを巡る米露関係の悪化があります。
元々米軍の大型軍事衛星は、アトラスⅤロケットで打ち上げられていましたが(デルタⅣもあるが高価格)、このアトラスⅤはロシア製RD-180ロケットエンジンを使用していました。
米国の安全保障を支える一部の大型衛星打ち上げを、ロシアに依存していたという驚きの構図になっているわけです
それが2014年、ロシアのウクライナの実質併合で米露関係が悪化したことを受け、ロシアの国防相がRD-180の米国輸出打ち切りを示唆して米国内が大騒ぎになります。
数年分の打ち上げ用RD-180の在庫はあるのですが、米国産の新ロケットエンジンとロケット開発は容易ではなく、「米国の威信をかけて短期間で完成させろ。できるはず」派と、「リスクは受け入れがたく、屈辱に耐え、ロシアにRD-180追加緊急購入を頼むべき」派の論争が続きました。
結局現時点では、「できるはず派」の議会が、「屈辱受け入れ派」の米空軍や一部企業の要求を退け、8基ほどのRD-180在庫でしのげるギリギリの2022年までに次世代ロケットEELVを開発することで進んでいるようです
6日付Defense-News記事によれば
●米空軍は今回のEELV企業選定で、最終的には2020年までに2つの打ち上げロケットを選定し、2022年には選ぼうとしている
●ただ5日に発出された提案要求書では、(初期の)ロケット開発経費を提供する上限3企業をまず選定することになっている
●EELV開発の前段階で、米空軍は既に4つの企業「SpaceX」「Orbital ATK」「ULA」「Aerojet Rocketdyne」とパートナー合意文書を交わして基本構想の提案を求めており、「SpaceX」はFalcon Heavy rocketで、「Orbital ATK」はNext Generation Launch systemで、「ULA」はBlue Originエンジンを使用したでVulcanロケット、そして 「Aerojet Rocketdyne」はAR1エンジンで取り組んでいる
●現時点では、「SpaceX」「Orbital ATK」「ULA」の3企業は提案要求書に応じ、それぞれの提案で機種選定に臨むと見られている
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何の技術的知識もありませんが、個人的には「SpaceX」社の「Falcon Heavy rocket」に期待したいと思います。
この「Falcon Heavy rocket」は、同社の基本ロケット「ファルコン1」ロケットを9本束ねた「ファルコン9」とも呼ばれるロケットで応札しようとしているようです。
米軍事衛星打ち上げ関連
「混迷の露製エンジンめぐる論争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「国産開発が間に合わない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-29-1
「露製エンジンを何基購入?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-2
「米国安堵;露製エンジン届く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22
「露副首相が禁輸示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-22