手りゅう弾投げは卒業要件から除外とか・・・
9日付Military.com記事は、米陸軍が約27000名の各級指揮官や士官への調査を基に、新兵教育コースを卒業後に初任地に配属された新人兵士の実態を把握し、新兵教育コース(BCT:Basic Combat Training)の見直しに取り組んでいると報じています
前線指揮官による新兵評価は極めて厳しく、初任地着任時から「服装がだらしない」、「基本的な生活態度や躾がなっていない」、「権利意識ばかりが高い」、「装備品や制服を大切にしない」、「時間にルーズだ」、「指示を聞いていない」、「命令指示に反論する」、「仕事がいい加減だ」・・・との声が相次いでいるようです
BCT改革を担当するMalcolm Frost陸軍少将によれば、「最も要望が高いのが基本的躾(discipline)で、他の要素の5倍」で、「基本的生活態度が身に付き、基礎体力があり、前向きに学ぶ姿勢があり、陸軍勤務に誇りを持つ若者」が望まれているとのことです
早ければこの夏開始の新兵教育コース(BCT)から新課程が採用され、しつけや部隊の団結、基本の教練、米陸軍に誇りを持てる歴史教育、基礎体力向上、前線で必要な基礎技術重視の演習、救急救命法、通信や意思疎通法などを重視する変革を行うようです
一方で、「手りゅう弾投げ」や「land navigation:地上航法?地図判読?」を、教育は継続するが基準レベル到達を「卒業要件」から外すことにするようです。つまり、物を投げられない若者が増え、厳格になるとBCTを卒業できないものが激増する実態があるようです
米陸軍の教育コース改革の方向はどうなのか、掻い摘んで記事からご紹介します。
9日付Military.com記事によれば新コースでは
●米陸軍の歴史テキストを提供→米陸軍の価値観と兵士の心意気を共有して継承するため、独立戦争からイラク戦争までの米陸軍の戦いの歴史を学ぶ書籍を新入隊者に与える
●基本教練の重視→911同時多発テロ以降、米陸軍部隊は多忙さから「drill and ceremony:基本的な教練」時間を削減する方向にあったが、部隊から「原点である基本的教練は躾(discipline)教育や陸軍の価値観を身に着けるのに極めて重要だ」との意見が多くあった
●基本を身に着け鍛える野外演習を3回計画→「the Hammer, the Anvil and the Forge:ハンマーで熱い鉄を打って鍛える」演習を3回組み込み、特に3回目の81時間連続演習では、40マイル行進と種々の状況設定で、独立戦争Valley Forgeの戦いの精神を学ぶ。夜間侵攻作戦や負傷者救助、物資補給や障害物対処等々の厳しい課題を付与して陸軍人に育てる
●基礎体力面での基準アップ→体力面でのBCT卒業基準点を、体力測定3種目すべてで60点に上げる(従来は50点)。
●基礎的戦闘技術訓練の時間増加→22時間化r33時間へ。また負傷者ケアなど基礎救命救助訓練の増加。ハンドシグナルを含む通信の基本通信訓練の増加
●科目間の重複を精査し、他の重視科目への充当時間の確保
●卒業要件から一部科目での基準到達を除外→「手りゅう弾投げ」と「land navigation」を除外。BCT期間で手りゅう弾を20~30m投げられない入隊者が急増していることが背景。ただしこれら科目の基礎訓練は引き続き実施。
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米陸軍の直面する新兵の課題は、自衛隊のみならず、日本企業の管理職が感じていることと同じではないかと思うほど「新人あるある」的な内容ですが、米陸軍が打ち出した対応にも苦しい状況が伺えます。
今時の若者に歴史のテキストブックを配布しても、多少訓練時間を増やしても、体を鍛える時間を増やしても・・・。担当するFrost陸軍少将も分かっているでしょうが・・・。
被害状況下を想定し基礎技術回帰の米軍訓練
「被害状況に備え訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-16
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「生活習慣を改善せよ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-08
「米空軍被害時の機動展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-08
「RAND:台湾は戦闘機中心を見直せ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25