米海軍が巻き返し、空軍大将が有力候補だったのに
10日、米国防省はハリス太平洋軍司令官の後任候補に、米海軍艦隊司令官のPhil Davidson海軍大将を推挙すると発表しました。代々海軍大将が就いてきた同ポストに、結果的には、次も海軍大将が就任することになりそうです
しかし、この人事方針が決まるまでの過程は単純ではありません。
一時は、昨年連続して発生した第7艦隊艦艇の衝突事故(17名の海軍兵士が死亡)を受け、有力な公認候補だった太平洋艦隊司令官が退役に追い込まれ、米海軍内に適当な候補が見当たらず、極東やアジア太平洋の経験豊富な空軍大将が有力候補と報じられていたところです。
最終的には海軍と空軍の縄張り争いが「元のさやに納まった」のかもしれませんが、この時期のこのタイミングの太平洋軍司令官に、アジア太平洋の経験がほとんどない人物が就くことが良いことなのか、大丈夫なのか・・・心配です
10日付Defense-News記事によれば
●10日、マティス国防長官はハリス太平洋軍司令官の後任に、米海軍艦隊司令官のPhil Davidson海軍大将を推挙すると発表した
●一方で、有力候補と言われてきた現在の太平洋空軍司令官でアジア太平洋経験が豊富なTerrence O’Shaughnessy空軍大将は、北米コマンド司令官に推挙された。
●なお現在の北米コマンド司令官は女性初のメジャーコマンド司令官であるLori Robinson空軍大将(前太平洋空軍)であり、2代続けて太平洋空軍司令官から北米コマンド司令官が誕生することになる
●ただ、ハリス司令官の後任に推挙されたPhil Davidson海軍大将(前職は欧州担当の第6艦隊司令官)は、キャリアの大半を大西洋地域担当で過ごしており、他の有力候補と言われてきた前太平洋艦隊司令官やO’Shaughnessy空軍大将のような豊富なアジア経験はない
●それでも最近は、米海軍艦隊司令官として、昨年連続して発生した第7艦隊艦艇の衝突事故(17名の海軍兵士が死亡)への対策を行う立場にあったことから、太平洋地域の情勢についてレビューする必要があったとみられる
●太平洋軍担当地域は北朝鮮の核問題や中国の南シナ海での領土拡張の野望に直面しており、ハリス司令官はこれらに強い姿勢で臨むべきとの考えを持ち、事態に対応してきた司令官である
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空軍人初の太平洋軍司令官が期待されたO’Shaughnessy太平洋空軍司令官は、2012-13年に統合参謀本部でアジア担当政策副部長を務め、続いて太平洋軍の作戦部長、更に在韓米軍の副司令官を2年間務めた後、現職についているアジア通です。
一方でDavidson海軍大将は、上記記事が触れているように、経歴の大部分が大西洋や中東エリアで占められアジア経験がほとんどありません。
同海軍大将は、空母アイゼンハワー戦闘群司令官や統合参謀本部で戦略計画副部長を務め、国務省でアフガンとパキスタンの特別代表補佐官を務めた人物です
ハリス司令官は夏に退役後、豪州大使に推薦されており、立ち位置が定まらない豪州で苦労されるようです
「ハリス司令官の後任は史上初の空軍幹部か!?」
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