13年ぶりに米陸軍が新兵募集目標未達

約1割不足、海空軍と海兵隊は目標達成も
Wiltsie4.jpg9月21日付Military.comは、9月末で区切りとなる2018年度の新兵採用において、米陸軍が2005年以来初めて目標数を達成できなかったと報じ、好調な米国経済を受けた民間企業との人材獲得競争の激化、適性検査通過者の減少、募集活動の困難化などの背景を紹介しています
米陸軍は2018年度の採用数目標として、当初は80000名を掲げ、その後退職者が少なかったため76500名まで目標を下げましたが、最終的には70000名しか採用できず、6500名が未達成となったようです
経済好調で兵士募集が困難になるとの予想の元、米陸軍は約250億円の追加ボーナス支給施策などを打ったようですが、それでも約10%目標に及ばなかったとのことです。
いずれの西側諸国も直面する新規採用困難の話ですので、何ら参考までご紹介しておきます
9月21日付Military.com記事によれば
airborne ope2.jpg●米陸軍の採用業務責任者であるJoe Calloway少将は、数千人の入隊希望者が適性検査や基準を満たすことができず、入隊を断念してもらったと状況を説明した。
●また背景として、米国民の17~24歳の若者でこれら基準を満たすのは約30%と言われている現実を説明し、更に軍隊に興味がある若者は8名の中の1名しかいない厳しい現実も明らかにした
●別の背景として、通常の年度であれば3-5000名程度を採用する採用活動が活発化する卒業式シーズンから9月末までの年度末3か月間に、採用基準を満たさない対象者のために基準を緩和する「waivers制度」を問題視する議会議論があり、基準緩和を控えたことで採用活動の追い込みが出来なかったことも目標未達の原因となっている
麻薬使用歴や非行歴、また健康身体的な問題の審査基準緩和はイラクやアフガン戦争が最盛期だった時期にも行われたが、結果として軍内の規律の乱れや犯罪の増加に繋がったとの見方が米議会では強く、基準緩和が批判の対象となったのである
EW2.jpg入隊希望者やその家族と、軍の募集担当者との接し方も新たな時代を迎えている。従来は軍入隊に関心を持つ若者の情報を得たら、採用担当者はまず電話で接触を図るのが通常だったが、オンライン時代の現代では、「まず電話」手法が歓迎されくなっている
●現在では、募集担当者はまずメールやwebサイト経由で対象者との初度接触を採り、対象者の信頼を得た後に電話や面談等の段階に進む流れが主流となりつつある。
若者層の3割まで減少している基準範囲の対象者に、アプローチする手法にも軍の募集担当者は知恵を絞っている。フェイスブックやツイッターなどのSNSは一般的な手段であるが、更なる手法にも取り組んでいる
最近の試みでは、スポーツ大会やオンラインゲーム大会に募集担当者チームが戦闘服姿で参加し、軍での生活や仕事をアピールするなどを試みており、著名なオンラインゲーム大会で司会役を務め、240万人に約1時間アピールする時間を確保したケースもある
US Army5.jpg陸軍のパラシュートチームを各種イベントに参加させ、陸軍の存在をアピールする手段も一つの手段である。
オンラインの手段の有効性について確たる統計的裏付けがあるわけではないが、募集担当者が若者と接触する機会を得る手段としては有効で不可欠な手段と考えている。まずは会って話をし、軍生活を紹介することが今も昔も重要なステップだからである
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「waivers制度」と言われる、麻薬使用歴や非行歴、また健康身体的な問題の審査基準緩和は、募集担当者のみならず、軍全体にとって永遠の課題でしょう。
US Army.jpg記事は、「waivers制度」の運用について米軍は繰り返し過ちを犯してきたと表現しており、実態としては、わかっちゃいるけど他に選択肢はない・・・が現状でしょう。
身近に国防に携わる人や経験者がいないと、国存立の基盤を支える仕事への認識が薄れ、国家の存在を危うくします。SNSでも、メディアでも、何でも活用する姿勢が必要でしょう
募集難関連の記事
「入れ墨規制緩和へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-12
「市民と軍の分断を埋めること」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-02
「禁じ手:幕僚勤務無しのP募集へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28-1
「サイバー人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「嘉手納整備員は若手ばかり」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03
ロバート・ゲーツ語録86
→徴兵制で冷戦時に米軍は世界最大規模となった。この規模拡大により、当時は多くの有望な若者が軍務の経験をした。1957年にはプリンストン大出身者が4万人軍務に付いており、ハーバード大にも700人規模のROTC制度が→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ロバート・ゲーツ語録87
→このため、冷戦終了時で全米の学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたが、現在ではその比率は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ロバート・ゲーツ語録88
米国の北西部、西海岸や大都市近郊は志願者が減少している。これら地域で大きな基地の閉鎖再編が進んでいることも一因であるが、同時に軍務のような国家の仕事が他人事にと考えられる風潮が背景にある→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10

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