ペナルティーや便宜供与削減が怖くて機数削減できず
選挙前は導入中止まで訴えていたが・・・
今年3月の総選挙で政権交代が起き、F-35が大嫌いな大衆迎合型で国内産業保護重視の2政党による連立政権が6月に誕生したイタリアで、新政権がF-35導入ペースをダウンする方向を明らかにしました。
イタリアは、通常型F-35Aを60機、垂直離着陸型のF-35Bを30機の計90機を購入する計画の元、今後5年間は毎年10機ペースで導入する予定でしたが、イタリア連立政権はこれを年5-6機ペースに今後5年間はペースダウンすることで米側と調整を開始したようです
イタリアでは、導入を決定した前政権の時からF-35への疑問が広まり、総選挙前にイタリア工業会の会長が、F-35部品の製造割り当てがイタリア企業に少ない決着となったことを取り上げ、「米国とロッキードに騙された」と声明を出すなど、正直な感情が噴出状態にありました
9日付Defense-News記事によれば
●イタリアの連立政権を組む2党「Five Star Movement」と「League party」は、課税削減と社会福祉予算を確保するため、今後5年間について、F-35調達ペースをダウンすると明らかにした
●しかし、調達早期数を削減した場合に課せられる罰金や便宜供与削減を避けるためか、トータルの調達機数削減については言及せず、5年後以降に判断を先延ばしする姿勢を示した
●イタリアのElisabetta Trenta国防相は、Defense-Newsに対し「イタリアには欧州諸国と約束した他の支出項目があり、負担を軽くするためにF-35調達ペースを削減することにした。罰則がある機数削減ではなく、細く長くするのだ」と語った
●イタリアは現時点で、10機のF-35Aと1機のF-35Bを受領済で、 各2機と1機の機体は米国内の基地に配備して操縦者養成用に使用されている
●イタリアの新しい連立政権はF-35以外でも、米海軍が中心となって推進している全世界をカバーする音声&データ通信網MUOS(Mobile User Objective System)の基地局を、シシリア島に建設する計画にも住民からの健康影響を懸念する声を受けて難色を示している
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予定調達数を削減せず、調達ペースを遅らせる手法は、導入決定を遅らせて時間を稼ごうとしているカナダと似たところがあり、大いに参考にしたいところではありますが、ごり押しトランプ商法の前に、財政危機のイタリアがどれだけ耐えられるか「お手並み拝見」したいところです
「since we have other spending commitments in Europe」との言い訳は、ロシアの脅威に対峙する欧州諸国の対米言い訳の常とう手段として使用可能なのか不明ですが、なかなか考えたセリフかもしれません。
イタリアの以前の国防相には、美魔女風の方もいらっしゃいましたが、Elisabetta Trenta大臣はなかなかタフな印象ですねぇ・・・
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