まず弾薬関連メーカーを対象に
化学物質で中国企業依存も深刻化
15日、米大統領の通商産業担当補佐官のPeter Navarro氏が独占インタビューに答え、大統領が命じて昨年10月に調査が行われた軍需産業の苦境を調べた「defense-industrial base study」結果に基づき、対策の一つとして、弾薬部品や化学物質関連の零細な企業のために約270億円の資金を準備し、審査を経て事業に政府資金で投資を行うと明らかにしました
昨年10月の調査結果、過去2-3年に国防省は大量の爆弾やミサイルを発注しているものの、その調達は過去約20年波が激しく、新たな開発業務もない状態に企業が置かれていることが判明しています。
しかも単一の製造元や納入先しかない極めて不安定な状態に置かれている企業が多いことから、近年事業から撤退を表明または恐れが高い中小の企業が増加し、既に中国を含む他国企業に依存しなければならない分野も急増していることが明らかになっています
なお既に、昨年10月の報告発表直後に、約70億円をガン部品製造企業に、また1億円がアブラハム戦車企業に投資することが発表されているようです
16日付Defense-News記事によれば
●同補佐官は、トランプ大統領の国家安全保障戦略に示されているように、経済安全保障自体が国家安全保障に直結すると述べ、弾薬製造企業をテコ入れすることは、軍事力だけでなく、雇用を増加して米国全体を支えることにつながると説明し
●更に、軍需産業政策の点で、トランプ大統領はアイゼンハワー大統領以来、最も軍需産業に関心を持って政策に取り組んでいる大統領であると訴えた
●また15日に大統領が署名した4つの文書で、「先行核物資、不活性物質、エネルギー物質、化学物質製造への最新技術」関連のサプライチェーン強化をホワイトハウスが打ち出したところだが、国防省幹部は昨年指摘された300の脆弱産業基盤分野の1/3に今年対応するとも語っている
●なお同補佐官は、資金投入は法律「Defense Production Act’s Title III」に基づいて行われ、決して資金を広くばらまいて企業の運用資金を手当てするのではなく、応募のあった企業やプロジェクトを審査して「ベンチャー投資や事業シードへの投資」に似た性格の資金投入を行うと説明している
●一方で、弾薬製造関連のどの企業がどの程度の政府資金を得られるかについて、同補佐官も国防省関係者も言及せず、資金投入の総額は1000億円にはならないが、数百億円の単位だと全体像を語り、調達担当次官は昨年12月、1年以内に270億円を投入すると述べていたところである
●同補佐官は、「60~80年間も同じ製造技術や設備を使用している企業に、先端製造技術導入を促進したい」と希望を語っている
●また、供給元が1企業しかない固体ロケットモーター、熱バッテリー、小型タービンエンジンの問題や、弾薬の2次3次メーカニーになるとその98%が唯一の供給企業である実態も悩ましい課題である
●海外依存も問題である。例えば、兵器の絶縁(insulation of weapons)に使用するDechlorane Plus 25は、ベルギー企業が唯一の供給元で、その原材料化学物質を製造する中国企業が事業からの撤退を表明している始末である
●更に、空対空ミサイルの推進剤に含まれるDimeryl diisocyanateも供給元が一つだが、既に国防省に製造中止を申し出ている
●同補佐官は対中貿易に関して強硬論者だが、化学物質に関して米国が中国に大きく依存していることを大きな課題と認識している
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一応「ベンチャー投資や事業シードへの投資」に似た性格の資金投入との説明ですが、零細で脆弱な軍需企業の実態を考えれば、実態としては運転資金やつなぎ資金の提供に近い資金提供になるような気がします
これは重要な施策です。米国だけでなく日本や西側各国で同様の問題が見られ、各国政府や国防関係者は対応に苦慮している中ですので、そのお手並みに注目したいと思います
この分野ではトランプ頑張れ!・・・です
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