X-37Bが少しソフトな路線に???

謎の無人宇宙実験船が5月16日打ち上げへ
宇宙滞在2800日以上の10年選手が6回目に挑戦
3年ぶりにご紹介

X-37B2.jpg6日、宇宙軍が謎に包まれた宇宙実験船X-37Bの6回目の打ち上げを5月16日に実施すると発表し、今まで打ち上げ前に明かされることのなかった任務内容について少し明らかにし、空軍・宇宙軍・軍需産業の強固なスクラムを示す事例としてアピールしています

X-37Bは「9m×4.5m×3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げ、帰還時は無人のスペースシャトルのような感じで飛行機のように滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船で、当初はNASA所管でスペースシャトルの貨物室に搭載する予定でしたが、同シャトル計画が中断されて2004年以降は国防省が引き継いでいます

X-37B4.jpg2010年4月に最初の打ち上げられた1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、そして2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月に帰還した5回目は780日で、その任務が非公開であることから、アマチュア天文家が競ってその様子を地上から観測し、中国衛星に接近しているとか、様々な憶測を呼んでいるところです

前回5回目の帰還後に、イオンエンジンの一種らしい「Hall Effect thruster」も試験の一つだと公表されましたが、頻繁に軌道を変更することから、まだまだ興味は尽きません

ただ今回は、空軍士官学校制作の小型衛星や農業関係の試験も行うと「打ち上げ前に」公表され、「その心は?」と新たな関心を集めていることろです

7日付C4ISRnet記事によれば
国防省の中では、米空軍の緊急能力造成室(Air Force Rapid Capabilities Office) が担当していることから、その目的を、軍事衛星や通信衛星が機能喪失した際の緊急代替衛星や装置の宇宙投入用とか、宇宙空間で軌道を柔軟に変更して敵衛星を無効化する任務を担うのではとか、貨物室に新素材を載せて宇宙空間で試験しているのではとか等々、様々な憶測呼んでいる

X-37B3.jpg今回の打ち上げは新設の米宇宙軍担当による初めての機会であるが、引き続きX-37B自体は米空軍の所有である。
同時期に予定されていたGPS III衛星の打ち上げはコロナの影響で延期されたが、同じ宇宙軍が打ち上げを担当するX-37Bは予定に変更なしと発表された

宇宙軍参謀総長のJohn Raymond大将は、「国家として宇宙ドメインに求められているスマートで機敏で先進的な技術開発を継続推進するため、同チームは日夜努力を続けている」、「指示や要求に迅速に対応できる開発試験展開能力の発展を表現する重要な打ち上げだ」と発表声明で表現している

6日の発表で宇宙軍は、今回のX-37Bでは、宇宙船の太陽光発電システムで生み出した電力をマイクロウェーブで地上に送信する研究「SSPIDR:Space Solar Power Incremental Demonstrations and Research」の試験を行うと発表した。
米空軍研究所はNorthrop Grummanと約110億円の宇宙実験支援契約を結んでいるが、空軍研究所のEric Felt担当部長は、「SSPIDRはgame-changingな技術追求の一つで、宇宙で生成したエネルギーを地上の好きな場所で利用する興味深いコンセプトだ」と表現し、宇宙から僻地の地上に展開する部隊への電力供給を可能にする技術試験といわれている

X-37B.jpgSSPIDRの他にも、X-37Bに付加された機体尾部の新モジュールに米空軍士官学校が教育の一環として作成した5つの実験機材を搭載した小型衛星「FalconSat-8」を搭載して軌道に投入したり、政府機関が行う食用作物の種子への放射線や宇宙空間が与える影響調査を行う実験機材の搭載などすることになっている
Goldfein空軍参謀総長は今回の打ち上げに関し、「米空軍と宇宙軍、そして軍需産業界の一体となった取り組みを象徴する事例だ」、「X-37Bは再利用可能な宇宙船の限界に挑戦し続け、将来の宇宙能力向上に資する」とコメントを寄せている
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非公開な実験だらけのX-37Bですが、今回は、新設宇宙軍による初打ち上げアピール、コロナに負けずgame-changing技術に挑戦し続けているアピール、打撃を受けている軍需産業との強固な連携をアピール、4月中旬に対衛星兵器実験を行ったロシアとの姿勢の違い&負けないぞ意識をアピール・・・などなどの観点から、数ある実験項目からソフトなものを公表したのではないか・・・と邪推しています

それにしても、機体の修理や部品の交換は当然行っているのでしょうが、第1回の打ち上げからまる10年、6回目の打ち上げで宇宙滞在3000日越えを目指すとは大したものです

X-37B関連の記事
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「X-37Bは中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「X-37BがSシャトルの代替?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「X-37B関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20
4月中旬のロシア衛星兵器試験を痛烈批判
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-17

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