中国製戦車や装甲車を保有し、潜水艦も購入
タイの軍事クーデター(2014年)で米国が冷たくするから
12日付Defense-News記事によれば、9日北京で、左写真が示す最新の中国製着上陸部隊用輸送艦(amphibious transport)購入契約の署名式が行われ、タイ海軍が25000トンの最新鋭艦艇を中国から購入することになったようです
購入が決まったのはType 071Eで、中国海軍が既に6隻保有し、更に2隻を建造中のType 071(Yuzhao LPD)の輸出バージョンで、中国軍webサイトは「輸出用E型は、Type 071に最新の能力向上を複数施したもので、総合力でType 071よりも強力で技術的にも進んでいる」と紹介しているようです
米国からすれば、タイは常にアジアの重要な同盟国として名前が挙がる国で、シャングリラダイアログの米国防長官演説でも必ずタイに言及する習わしとなっていますが、冒頭でご紹介したように中国との地理的近接性や経済関係からタイも中国を無視できず、既に中国製の戦車や装甲車を導入し、潜水艦まで購入することになっています
またタイ軍と中国軍は定期的に「Falcon Strike exercises」演習を行っており、最近も中国空軍のJ-10戦闘機とAWACSがタイ北部の空軍基地に展開し、タイ海空軍との演習を行ったところです
12日付Defense-News記事によれば
●タイ海軍がいつ同艦艇を入手できるのか等についてタイ海軍は明らかにしていないが、タイの地元紙は以前、建造には3年を要すると報じていた。価格については1500億円から2400億円との数字が報道されているが、明らかになっていない
●Type 071Eの原型であるType 071は、全長約200m、排水量2500トンで、ボバークラフト式の兵員輸送艇を4隻と、2隻の強襲揚陸艇を装備し、ヘリ4機を格納輸送でき、着上陸兵士6-800名を輸送できる性能を持っているので、 Type 071Eは少なくとも同等以上の能力を持つと考えられる
●タイは、同艦艇の2つのヘリパッド等を活用し、同艦艇をHADR(人道支援と災害救援)に使用し、有事には着上陸作戦に使用すると説明している
●タイが現在保有する同種の輸送艦艇は、全長約140mのシンガポール製艦艇で、2012年から運用を開始している。ちなみに同海軍はヘリ空母HTMS Chakri Naruebetも保有して運用している
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背景には、2014年のタイ軍事クーデター以降、オバマ政権下の米国がタイに冷たくしたことも潮目となり、2015年7月に中国製潜水艦3隻(2000トン級のType 039A Yuan級攻撃潜水艦)購入の発表(最終決定は2016年末)し、タイが全方位外交(米国離れ)に向かっている現実があります。
タイ北部のウタパオ海軍飛行場に米軍が、災害対処用の物資を事前集積したいと申し出たら、タイ側が断ったとの話が数年前ありました。兵器の集積ではなく、災害対処資材でもこの塩対応です・・・
また、日本企業の進出が盛んなタイですが、日本の外食産業が進出しても、華僑のコミュニティー力に押され、中華系の外食チェーンに負けが続いているとの報道も見た覚えがあります
防衛大学校には早くからタイの留学生が入港しており、確かタイ海軍司令官になった人材も出ているのですが、今の留学生当たりの話を聞くと、中国と米国の比重は「50対50」とはっきり答えるようで、「日本ほど単純ではない」と説明してくれるようです。
トランプ政権の姿勢は把握していませんが、ちょっと巻き返さないと・・・南シナ海に面するタイですらこの状況ですから・・・
米タイ関係を考える記事
「タイ軍が中国製潜水艦に続き戦車を追加購入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-05
「2015年7月の中国潜水艦導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
「米タイ軍事関係50年ぶりの仕切り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-16
南シナ海関連記事
「初のASEAN海軍との共同訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-03
「F-35搭載艦が初の南シナ海航行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-07
「2020年米陸軍が南シナ海機動展開演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-30
「中国空母で夜間離発着訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-01