全職域まとめて評価から6つの区分別に評価へ
2020年3月の中佐昇任者選抜から適用へ
21日付各種軍事メディアは、米空軍が72年ぶりに昇任審査制度を見直し、2020年3月の中佐昇任者選抜から、全職域まとめて評価から6つの区分別に評価する方式に変更すると報じました
72年ぶりということは、1947年に米空軍が創設されて以来初めての大きな改革ということですが、これまでパイロット、サイバー、情報、広報、調達など様々な職域の士官をまとめて比較して昇任者を選抜していたものを、6つのカテゴリーに分け、各カテゴリーごとに選抜する方式に変更するとのことです
各カテゴリーへの昇任者数の割り振りをどうするのか、差をつけるのか、各カテゴリーごとの昇任者選抜における評価要素がどの様に異なるのか、などは現時点で明らかにされていませんし、変更の背景についても担当高官から細部は語られていませんが、徐々に漏れ聞こえてくるのでしょう・・・
米空軍司令部の人事管理部長が「100%確実なのは、新たな方式が100%完璧な方法とは言い切れないことだ」と述べ、新方式導入後も各種の意見やフィードバックを参考に見直しを進めていくことを明らかにしており、一つの挑戦と言えるでしょう・・
兵器システムの複雑化、任務の複雑化細分化に伴い、米軍兵士の一体感を維持するのが難しい環境になりつつある中、カテゴリーごとの昇任評価の扱いを巡って、様々な噂が乱れ飛び、職域間の対立や気持ちの乖離を生みそうな改革ですが「お手並み拝見」とまいりましょう
21日付米空軍協会web記事によれば
評価単位となる6つのカテゴリー()内は職域番号AFSC
●Air operations and special warfare:
all conventional (11X) and remotely piloted aircraft pilots (18X), along with combat systems (12X), air battle manager (13B), special tactics (13C), combat rescue (13D), and tactical air control party (13L) officers
●Nuclear and missile operations:
nuclear and missile operations (13N) officers
●Space:
Space operations (13S) and astronaut (13A) officers
●Information warfare:
cyber operations (17X), intelligence (14N), operations research analyst (61A), weather (15W), special investigations (71S), information operations (14F), and public affairs (35X) officers
●Combat support:
airfield operations (13M), aircraft maintenance (21A), munitions and missile maintenance (21M), logistics readiness (21R), security forces (31P), civil engineering (32E), force support (38F), contracting (64P), and financial management (65X)
●Force modernization:
chemists (61C), physicist/nuclear engineers (61D), developmental engineers (62E), and acquisition management (63A) officers
新たな評価方式に関する関係高官の説明
●このような細分化したグループでの評価は、これまで医者など医療関係者、法務関係者、十軍牧師などでそれぞれ行われていたが、これを一般士官にも適用したもの
●新たな方式は今年5月に概案がまとめられ、概案を各部隊に提示して意見を求めるとともに、米空軍司令部の Brian Kelly人事管理部長が米国内外の14か所を訪問して様々な意見を聴取した
●Kelly中将は現場訪問で得た意見について、様々な観点からの意見があり、それぞれに重要なポイントを突いてはいたが、一つの側面しか見ていないものや逆の立場からの意見が同レベル存在するなどの状況であったと振り返り、結果として5月にまとめた案を変更していないと説明した
●一つ付け加えた施策として、昇任審査会での議論の参考や準拠となる、高く評価すべき教育・訓練・経験などをまとめた「Career Field Briefs」なるガイドブックのようなものを、1今年2月か来年1月に発行することにした、と同中将は述べた
●また空軍省の人事制度担当次官補代理のManasco氏とKelly中将は、今回の制度改正の背景として、リーダーシップ能力を求めるにしても、操縦者や戦闘管理担当士官に求めるものや経歴の中で養われるのは、兵たんや施設担当士官が身につけるものとは必然的に異なり、同じ土俵で評価するのは難しいからだと説明した
●そしてその職域にあった独自のスキルを身につける事を評価し、より似通ったカテゴリーのグループ内で比較評価することで、各カテゴリーに求められる士官が育っていくとの考え方に基づくものだと両高官は説明した
●更に選考プロセスの透明化を図るため、空軍長官名で毎年発行する「Memorandum of Instruction:評価選考の指針」を作製し、職域に拘わらず各階級に求める、能力や性格などについて明らかにするとも同中将は説明した
●もちろん、例えば広報担当士官(public affairs)と、サイバーや情報担当士官を同グループで評価することが最適化であるとは言えないが、従来の全員を横並びに評価する方式よりは改善されると両高官は説明した
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まだまだ表面的な説明で、評価される側、昇任時期を迎える士官たちの立場からすると、「?」が3つ4つ頭に浮かぶ内容ですが、部隊の士気に大いに影響する変化ですのでとりあえずご紹介しました
同じ調達担当士官でも、また同じ整備担当士官でも、戦闘機部隊所属とミサイル部隊所属を同列に評価可能なのか、「air battle manager」と「Space operations」は違うカテゴリーなのか・・・などなど、いくらでも突っ込みどころがあり、評価される方は議論百出なのでしょうが・・・・
直接的な背景には、例えば民間企業との奪い合いになるサイバー専門家を高い処遇で採用確保するためにこの方式を考えたのであれば、同じカテゴリーの気象や特別捜査官などは昇任率が極めて困難になるような気がしますが・・・