米国オープンスカイズ条約脱退の噂にざわめく

互いに相手国上空の飛行して監視し合う枠組み
1992年に24か国署名で2002年から開始
現在は30数か国が参加の条約
OC-135B.jpg8日付各種軍事メディアは、トランプ政権がオープンスカイ条約からの脱退を検討しているとの情報を受け民主党の主要議員らが国務長官と国防長官に対し、「政権内部でこそこそ検討するな。重要な条約だからオープンに議論すべきだ。噂されている脱退には断固反対だ」との主旨のレターを送ったと報じています
この条約(Treaty of Open Skies)の経緯は古く1955年にアイゼンハワーが基本理念を提唱しましたが冷戦激化で実らず、1989年に父ブッシュが再び持ち出し、1992年3月にNATOと旧 WTOの 25ヵ国が調印して条約が成立しましたが、実際の相互査察飛行は2002年になって実現した代物です。
条約に基づく査察飛行は条約調印国の全領土上空からの査察を対象とし、年間の査察回数は査察を受けた回数は認められ、査察用航空機やセンサーは相互に協議して合意の上実施、査察結果は共有データとする、などの原則に沿って行われることになっています
Treaty of Open Skies.jpg西側の査察は実質的に米空軍の2機の老朽機体OC-135Bが担い、ロシア側はTu-214が行っていますが、運行開始から60年以上経過したOC-135Bは故障が頻発し、2018年は一度も査察飛行が出来なかった「情けない」状況にあり、後継機や維持経費検討を巡ってオープンスカイ条約が最近話題に上ることが増えていました
最近米国が離脱した「INF全廃条約」については、ホワイトハウス、国防省、国務省間である程度のコンセンサスがあったようですが、このオープンスカイズ条約からの脱退については意見が割れている状況で、共和党内でも賛否両論あるようです
離脱派は衛星等の手段がある中、またロシアが特定地域の上空査察を拒否したりしている中、条約維持に意味はないと主張し、継続派はウクライナ上空飛行など周辺同盟国等に対する情報提供データが得られ、同盟国へのコミットメントを示すうえで重要で、また問題はあってもショートノーティスの上空飛行で得られる情報は有用と主張しています
知識不足で正確にお伝えできるか疑問ですが、話題になりそうなのでとりあえず取り上げます
8日付米空軍協会web記事によれば
Treaty of Open Skies2.jpg下院外交委員長のEliot Engel下院議員(民主党)等はレターの中で、ロシアが条約を十分に履行していないとの長年の懸念はあるものの、「ウクライナ上空での査察飛行から得られる情報は、ロシアのウクライナでの活動を把握する上で有用で、更なるロシアに侵略行為を防止するために役立っている」
●また「条約からの撤退は、大西洋をまたぐ西側同盟を弱体化させ、欧州同盟国に対して米国が安定した予測可能な同盟国だとの信頼を失うことにつながる」と訴え、条約撤退を思いとどまるよう求め、「政府機関横断的な同条約の重要性レビューと、米議会との協議を通じ、透明性ある議論」を求めると主張している
●8日、査察飛行を担当する米戦略コマンドは、査察飛行を支持する米空軍OBのDon Bacon下院議員の発言「OC-135Bによる非武装で平和的な査察飛行は、30か国以上の条約加盟国の軍事力や軍事活動を観察して貢献している」をツイートし、同条約が信頼醸成や透明性確保に貢献していると間接的に主張している
OC-135B2.jpg条約離脱派はロシアがカリーニングラード(バルト3国に隣接の飛び地)、南オセチア、グルジア周辺地域上空の査察を認めないことや、米軍査察機の乗員のロシア国内宿泊を拒否するなどの行為を条約違反と非難しているが、Engel下院軍事委員長ら条約継続派はロシアの違反行為を問題視しすぎて条約離脱の理由にしてはならないと主張している
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台風19号接近で「東京の郊外」でもちょっと緊張してきましたが、今後オープンスカイ条約も、ノーベル賞とラグビーW杯等の隙間でニュースになると思われるので取り上げました
シリア北部からの米軍撤退と言い、色々なトランプ政権の動き・・・台風19号と同様に、波風が大きそうです
米空軍の老朽情報収集機がピンチ
「OC-135Bらは後継機無しの方向?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-28-1
「OC-135Bらの維持がピンチ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-1

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