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RAND研究所が約150ページ提言レポート
中国の急速な核第2撃能力強化を背景に
軍事的有効性と核戦争への拡大防止のトレードオフ甘受要求
もう少しリスクを採るべきと外部専門家は批判
11月15日RAND研究所が、台湾をめぐる米中紛争が勃発した場合に核戦争へのエスカレーションを防止するための米空軍向け考慮事項をレポート「Denial Without Disaster—Keeping a U.S.-China Conflict over Taiwan Under the Nuclear Threshold」として発表し、中国が2020年以降に急速に核兵器の第2撃能力を強化する中、中国の「敷居」をどう理解し、米空軍爆撃機部隊や長射程ミサイルをどのように使用するか改めて慎重に吟味すべきと提言しています
報告書はまず中国の急速な核増強に目を向け、
●2020年以前の中国核攻撃能力は限定的で、(第2撃能力が低かったことで、)エスカレーションのリスクは低かったと分析。しかしそれ以降、「すべてが変わった」と主張。
●具体的には、「中国の劇的な核増強開始により、移動式のDF-41大陸間弾道ミサイル(ICBM)や、ほぼ継続的な潜水哨戒待機で生存性を高めた弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)、更に核搭載可能な部分軌道爆撃システム(FOBS:fractional orbital bombardment system)で米国のミサイル防衛網を突破する能力を向上させた」と分析
●そして、厳密な評価には機密情報を活用した分析が必要も、米国は中国が2030年までに確実な第2撃能力を保有することを前提に、中国との戦いを検討する必要がある、と分析している
米軍の現状と米軍作戦への影響に関し
●米空軍は対中国作戦用として、次期ステルス爆撃機B-21や空対地ミサイルや地対地ミサイルなどの長射程スタンドオフ兵器を開発準備し、作戦立案者は中国による台湾上陸を阻止する机上演習や訓練等で使用を想定しているが、高コストのそれら兵器は、(中国の第2撃能力を破砕するに)十分な数量や増産能力を確保した場合にのみ効果的である。(→現実的には不可能に近い)
●この現状を踏まえ、仮に米軍が準備している上記兵器を「中国本土の目標」に使用した場合、核戦争へのエスカレートリスクが固まると考え、中国による米軍拠点等への限定的な核攻撃の犠牲とならないために、米軍は長射程スタンドオフ攻撃の対象を慎重に選定し、同時に米軍保有の長射程攻撃アセットを隠す(shroud)必要が生じる
●米空軍による攻撃対象選定をエスカレーション防止を念頭に慎重かつ一元的に統制するため、空軍Global Strike Command内に「Escalation Management Center」を設置し、平時から標的の選定や訓練演習への取り込み、更に兵器調達にも関与するべき
●上記のような慎重な標的選定により、結果として、「軍事作戦の有用有効性」と「部隊の生存性、エスカレーション管理」の間でトレードオフが生じる可能性が高い。また、エスカレーション防止のため、より遅い作戦テンポや理想的でない標的の選定、望ましくない距離からの作戦を迫られる可能性がある
11月16日付米空軍協会web記事は専門家意見として
●(同協会のミッチェル研究所Mark Gunzinger研究員は、)中国本土攻撃は緊張を導くが、米国が台湾防衛に本気ならある程度のリスクは不可避で、米国は北京にその意思を明確に示しておく必要もある
●中国本土に所在する中国軍の爆撃機や戦闘機や弾道ミサイル部隊を攻撃することがエスカレーションを招くと懸念する人々は、一方で、中国軍が米国領であるグアム島の米軍拠点や台湾周辺の米国同盟国軍事施設を攻撃することを当然のこととして受け入れていることが多い。これは中国の「思うつぼ」で、中国にはグアム島を攻撃すれば、米軍による中国本土攻撃を招く恐れがあることを植え付けて、中国の攻撃を抑止する必要がある
●また、中国に「作戦上の聖域」を与えないことが重要で、そのために米軍は中国本土への攻撃を作戦計画に組み込み訓練することが必要だ
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非常に難しい、しかし非常に重要で、作戦実施間は常に念頭に置く必要がある「核保有国同士の戦い」における「エスカレーション防止」の議論です。
上記の記事は、同レポートを紹介する11月16日付米空軍協会web記事を引用してRANDレポートの概要を紹介したものであり、まんぐーすはRANDの同レポートを1ページも読んでありませんのでご注意を!
RANDの同レポート紹介webページには、「研究の趣旨」「Key Finding」「Recommendation」が簡明に掲載され、「One Page Summary」へのリンクもありますので、ご興味のある方は是非のぞいてみてください
RAND研究所の同レポート紹介webページ
→https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA2312-4.html
(レポート現物約150ページへのリンクも)
中国核戦力の増強関連
「中国軍事力レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2024/12/20/10484/
「核兵器増強を否定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/11/2597/
「部分軌道爆撃システム(FOBS)」→https://holylandtokyo.com/2021/10/29/2383/
「Kendall長官がFOBS懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21
「中国が核兵器管理拒絶」→https://holylandtokyo.com/2020/07/13/570/