無人艦艇を大波から守り長距離移動させる手法
DARPAが約3年かけで開発実証へ
1日付C4isrnetが、DARPAが募集をかけて具体的な企業選定に入っている「Sea Train」構想について取り上げ、来年度から約3年をかけて開発&試験をおこなうコンセプトの概要を紹介しています
米海軍と海兵隊は、従来の高価多機能少数の大型艦艇重視から、低価格機能絞り多数の小中(無人含む)艦艇体制へと変革を目指す方向にあり、それら損耗しても全体にダメージが少ない小中艦艇に偵察や電子戦や攻撃を担わせて、強固な防衛網を築く中国に対処しようと考えています
例えばCSBAの提案には、平時のグレーゾーン任務遂行時には少数の人員を搭載し、微妙な任務を大型艦艇より費用対効果良く遂行し、有事には無人で運用し、有人艦艇の前方で前述のリスクの高い任務を遂行するイメージが描かれています。エスパー長官もインタビューでこの考えを語ったことがあります
そこで課題となるのが、このような小中小型無人艦艇の遠方移動で、考え出されたのが無人艦艇を列車のように連ねて一列で大洋を移動するコンセプトです。
イメージは、米本土沿岸の別々の港を出港した無人艦艇4隻が、沖合4マイルほどの海上で自動的に一列に並ぶ体形に集合し、事前プログラム通りに自動で一列に連結され、約6500マイル先の東南アジアへの航海に出発する。アジア方面に到達したら、連結が解除され、各艦艇はそれぞれに異なる任務遂行地まで無人で移動し、任務終了後、再び連結して帰還する・・・といった感じです
連結してつながっていると攻撃されやすいのでは・・・と心配になりますが、防御は別として、小中艦艇は太平洋の荒波に弱く、連結により大波にも耐えることができ、また「列車」に燃料補給艦を含めることで限定された燃料搭載能力を補完できるメリットがあるようです
1日付C4isrnet記事によれば
●DARPAの同プログラム責任者であるAndrew Nuss氏は、2月に「Sea Train」構想への挑戦企業を募集したところ、具体的な数は言えないが大きな反響を得て募集が集まり、年度末(9月末)までには選定結果を発表したいと述べた
●選定後は、前半の18か月を開発段階、後半の18か月を技術試験段階とし、最終的には、大洋の環境下でデモ試験(model testing)を行うことを目指しており、DARPAとしてはその後、米海軍が採用してくれることを期待している
●DARPAはこのプログラムで、中型の無人艦艇(全長12~50m)に焦点を絞って開発&試験を行うが、プログラム全体を通じて得られた教訓は、大型または小型艦艇の場合にも活用される
●Nuss氏は、「このユニークなプログラムを通して、開発リスクの低減に着意していく。海軍や海兵隊に一連の提案ができるように仕上げ、これら艦艇の遠方展開に際し、より遠方に、給油寄港なしで可能な手法を確立したい」と抱負を語っている
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対象となる艦艇の「連接」は、「connecting the vessels — physically or in a formation」との表現になっており、列車のように連結器でガッチリ組み合わせる方法だけでなく、物理的につながらず、接近して隊形を組んで・・・のパターンもありそうです
記事が紹介する「想定シナリオ」では、艦艇列車の目的方面は「Southeast Asia」となっており、色々突っ込みどころがありそうですが、「輸送機からパレタイズした弾薬&ミサイルを投下」と同様に、対中国を想定し、あらゆる可能性や方法を模索するたくましい努力の一環です
無人艦艇導入は待ったなしの雰囲気です。以下の過去記事でご確認ください
米海軍と海兵隊を巡る動き
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「無人潜水艦を多数導入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「米海軍が半年で空母再検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「5年計画で新型大型艦艇設計」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-14
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13