米国防省が航空輸送可能なミニ原発配備へ

僻地基地での使用を想定し、数か月で企業選定
2025年にデモ運用開始を目指し
C-17輸送機に搭載可能で1-5メガワット発電目指す
1960-70年代の失敗を教訓に
敵攻撃への脆弱性懸念の反対予期も

Portable nuclear3.jpg4月13日米国防省戦略能力開発室(SCO:Strategic Capabilities Office)が、人里離れた僻地基地で使用するC-17輸送機で空輸可能なミニ原発を開発し、2025年にはデモ運用を開始すると発表しました。

ミニ原発は重量40トンで、輸送機の貨物室に搭載可能なコンテナに収まるサイズに設計され、1-5メガワットの発電が可能ながら3年間は燃料補給が不要なものを想定しているとのことです。

portable nuclear2.jpg今後数か月以内に2つの候補企業「BWXT Advanced Technologies」と「X-energy」から一つを選び、SCOによる環境影響評価を行い、2024年にテスト評価、2025年にデモ運用開始を計画しています

4月15日付Defense-Newsからは、具体的な初号機の配備場所が決まっているのか、ミニ原発用の新型核燃料開発が行われている「Idaho国立研究所」でデモするのか、環境影響評価の結果によってアラスカやグアムやDiego Garciなど11の候補地から選ぶのか不明確ですが、過去の構想にあった「展開先の前線基地」での使用ではなく、「不便な僻地基地」で使用する説明ぶりになっています

microreactors.jpg米軍のミニ原発への取り組みは、以下のように冷戦時に一度ピークを迎えていますが、「信頼性が低く高コスト」であったことや、敵から攻撃を受けた際の放射能汚染が懸念され、計画は頓挫しています

Army Nuclear Power Program(1954 ~ 1977)
●8つの右原発が製造され、5基がワイオミング州、グリーンランド、南極、パナマ運河地域で4-12年運用(1962-1977年)された。
●上記場所に設置運用される前の1961年に、「Idaho国立研究所」で3名が死亡するメルトダウン事故を起こしている

以下では4月15日付Defense-News記事から、「Project Pele」担当責任者と反対派研究者の主張を簡単にご紹介しておきます

「Project Pele」担当責任者Jeff Waksman博士
waksman.jpg●「Project Pele」で使用される技術は、軍用だけでなく商用利用にも活用できる画期的な技術である。1970年代当時より安全性が向上した「3構造低濃縮ウラン」燃料を使用した「高温ガス炉」方式で計画している
●核燃料は直径1㎜以下の小さなカプセル梱包された形状に準備され、小さな単位で防御された形で使用される

●従来の重油仕様の発電機は、燃料輸送や発電施設維持補修に多くの兵站支援が必要だったが、ミニ原発は3年間燃料補給が不要である
●冷戦期の経験、2010年頃からの基礎研究、更に2019年年度からの関連投資で必要な要素技術は格段に成熟しており、2025年のデモ運用開始は十分に可能である

反対論者のテキサス大学Alan J. Kuperman教授らは
Kuperman.jpg●敵攻撃に脆弱なミニ原発への反発を避けるため、「展開先の前線基地」配備構想を引っ込め、「不便な僻地基地」での使用を打ち出しているが、技術的ハードルが高く高コストの航空機輸送可能な設計を行うなど、有事に「展開先の前線基地」配備を狙ったものであることは明らかで、敵攻撃を受ける危険なプロジェクトだ
●小型カプセル化した核燃料は、攻撃を受けた場合周辺に飛散し、放射能汚染を拡散させることになる

●2019年度に約50億円、2020年度の85億円規模の投資を国防省は行っているが、未だにしっかりした設計は完成しておらず、実際の部品準備も未着手な中、2025年に運用開始とは極めてリスクが高い無謀な計画だ

ちなみに、2018年米陸軍研究レポートで配備候補11か所とは
• Thule, Greenland
• Kwajalein Atoll
• Guantanamo Bay, Cuba
• Diego Garcia
• Guam
• Ascension Island
• Fort Buchanan, Puerto Rico
• Bagram Air Base, Afghanistan
• Camp Buehring, Kuwait
• Fort Greely, Alaska
• Lajes Field, Azores
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microreactors2.jpg米国防省と反対派の主張のどちらに分があるのか判断できませんが、大型の原子力発電所とは異なり、ミニ原発は敵の攻撃の目標になりそうな気がするので懸念の声があるのは理解できます

一方で、米軍が進める気候変動対策や陸軍の電動戦闘車両導入、前線への兵站輸送の負担軽減などなどを考えると、ミニ原発の魅力は捨てがたく、研究は止められないのでしょう

展開候補地に日本は入っていませんが、グアムが含まれるぐらいですから、硫黄島や第2列島線上には可能性がありそうですのでフォローしておきましょう。ちなみに「Project Pele」の「Pele」は、ハワイの火山や炎の神様からとった名前だそうです

ミニ原発関連の記事
「ミニ原発反対論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-16
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-13
「国防省の気候変動対策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-08
「電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-10
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23-1

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