脅威切迫にロッキードが独自資金開発をアピール
今春試験では地上設置垂直発射VLSから試射
更なる試験等に国防省や海軍からの資金提供を期待
1月18日付Defense-Newsは、ロッキード社が脅威の変化に迅速に対処するため、既存ミサイル防衛システムの改良&融合により防御能力を改善する自社独自の取り組みとして、2024年末までに自己資金約150億円を投じて、PAC-3最新型ミサイル(PAC-3 MSE)をイージス垂直発射管(VLS)から発射する開発に取り組んでおり、今春に地上設置の垂直発射管VLSからのPAC-3 MSE試射を計画していると報じています
同社は、現在運用されている各種ミサイル防衛システムの隙間「ギャップ」を迅速に埋めるには、高コストと長期間が必要な新規システム開発でなく、従来システムの改良や融合で対処すべきと2017年に決断し、それ以降、主に自己資金でシステム融合に取り組み、例えば2022年初頭には、アジア太平洋戦域の切迫する脅威対処への提案として、THAADシステムからPAC-3ミサイルを発射する試験をWhite Sands試験発射場で成功させているとのことです
今春の地上設置VLSからのPAC-3 MSE試射に向けては、米ミサイル防衛庁MDAから限定的な資金提供を受け、太平洋上の発射試験場で実射を伴わないPAC-3 MSEとイージスシステムの連接融合試験「hardware-in-the-loop test」が行われた様ですが、その後同社は独自資金を投入し、2023年夏には米海軍が約艦艇100隻に搭載しているイージスSPY-1レーダーシステムとPAC-3 MSEとの融合が可能なことを確認したとアピールしています
ロッキード社は2024年春に予定している地上設置イージス艦垂直発射管VLSからの試射試験予定発表に際し、仮に試射に成功した場合には、実際のイージス艦VLSからの発射試験等の実現に向けた国防省や米海軍からの予算配分や艦艇利用協力をお願いしたいと訴えています
なお、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻を受け、重要が急増しているPAC-3ミサイルに関し同社は、現在同社アーカンソー州Camdenの製造ラインで年間550発ペースでフル稼働生産されているが、更なる増産に向け設備強化に取り組んでいるとのことです
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弾道ミサイル対処を念頭に始まったミサイル防衛は、巡航ミサイルの拡散に伴い対処脅威の拡大を迫られ、現在は極超音速兵器への対応を検討する段階に至っています。同時に大小各種無人機の急速な普及に伴い、これらへの対処兵器との接細部の扱いも議論の俎上に上がり始めています
様々に防御システム開発が進む中で、軍側の防御兵器開発における要求性能の「ふらつき」「混迷」や投資予算の限界もあり、「PAC-3ミサイルのVLS発射」についても、今となっては「なんで今までやってこなかったの?」的な印象を持ちますが、これが現実かもしれませんし、軍と企業の両方に色々と教訓がありそうな気も致します
PAC-3やミサイル防衛関連の記事
「米陸軍がPAC-3部隊増強へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/04/4932/
「THAADにPAC-3連接迎撃に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/03/18/2820/
「グアム防衛をMDA長官が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「THAADが初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/