VR訓練機材を充実し多忙な中で人員要請強化中との報道あり
これを機会にE-4B:国家危機空中指揮機NEACPをお勉強
1月11日付米空軍協会web記事が、米空軍が4機保有するE-4B:国家危機空中指揮機 (NEACP:通称NightWatch)に関し、常に緊急事態用に大統領に寄り添って緊急発進態勢にあるほか、大規模災害対処にも出動する忙しさの中で要員養成を計画的に実施するため、機体運用要員と整備要員を対象としたバーチャルリアリティーVR訓練機材導入に、空軍Global Strike Commandと連携して、機体運用&管理を担う第55航空団が取り組む様子を報じています
本日は、VR訓練機材の積極導入に関してご紹介するとともに、今まで本ブログで取り上げたことのないE-4B:国家危機空中指揮機 (NEACP)について、ネット情報をかき集めてご紹介いたします
先ず同機部隊へのVR訓練機材の積極導入に関して
●機体への需要が極めて高い中、4機しか保有機が無いため、機体の定期修理や部品交換なども考慮すると、搭乗員や整備員が技量維持や能力向上のために機体を使用する機会が限定されるため、2021年からVR訓練機材の導入に取り組み、現在は初期型4台で、操縦者、搭乗員、整備員が訓練を行っている
●このVR訓練環境をさらに充実させるため、3次元機体スキャン機能を活用し、E-4B機体の内部と外部を仮想空間上で再現可能なシステムを現在開発中で、7台導入予定の初号機が2月に納入予定である他、整備員用に特化した別のVR訓練装置14台開発予算も確保済で、3月から開発が本格化する
●また整備員用VR機材の開発本格開始に先立ち、Global Strike Comman主導の開発プログラムから生まれたプロトタイプの「Weapon System Maintenance Trainer」が既に導入されており、実機体を使用しないで、機体トラブル時の故障個所探求や対処訓練が実施でき、要員の整備資格維持や技量向上に活用されており、更なる改良への部隊意見の聴取にも活用されている
●これらVR機材は、仮想空間利用の中でもレベルの一段高い「XR:extended reality」で作成されており、より現実の運用や整備環境に近い環境が仮想空間内で再現可能な設計となっている
以下では、このE-4Bについて概要をご紹介
E-4B・NightWatchについて
●同機は、Boeing製B747-200Bを改造し、米国の国家空中作戦センター(NAOC:National Airborne Operations Center)として使用されている航空機で、4機保有し、第55航空団に所属する
●冷戦後の戦略環境の変化を受け、核戦争だけでなく、大規模災害対応のため、FEMA長官の要請で被災地域支援にも活用されるようになっている。そのため、現在の国家緊急空中指揮所 (NEACP National Emergency Airborne Command Post) との呼称へ名称が変更された
●核戦争・大規模災害などに際し、大統領や国防長官などの国家指揮権限(NCA)保持者および指揮幕僚が、地上で指揮が取れない場合に搭乗し、米軍を空中から指揮する。特に搭載通信機器を介し、米軍ICBM部隊・SLBM部隊・戦略爆撃部隊の指揮任務が重視される。
●米大統領の近くには必ず1機以上のE-4Bが待機し、大統領がエアフォースワン(VC-25)で外遊する場合などでも必ず随行。現在では国防長官の外国訪問にも使用され、飛行中に同行した記者団との会見も行われている
●当初はEC-135を同任務に宛てていたが、より機体の大きいB747-200Bベースの機体にEC-135と同様の装備を搭載してE-4A型機とし、1973年6月に初飛行して4機が調達された
●その後、空中指揮センターとしての機能充実が求められ、EC-135より搭載容量が大きいE-4Aの特徴を生かし、空中給油機能や核戦争に備えたEMP対策強化等々を含む搭載装備の充実が図られ、改修型E-4Bとして1979年12月から導入が始まり、4機体制で現在に至る
●第55航空団が運用や維持整備を担っている模様だが、普段の所在地や動静は公開されていない。しかしネブラスカ州オファット空軍基地が2017年6月23日に竜巻被害を受けた際に、軍用機10機も被害を受けたが、その中の2機がE-4Bであったことが明らかになり、注目を集めた
E-4Bの特徴
●キャビン内には国家指揮権限作業区画、会議室、ブリーフィングルーム、戦闘幕僚作業室、通信管制センター、休憩室、記者会見室などが設けられている。
●空中給油受油装置の付与→任務から長時間在空が求められることからE-4B導入時に空中受油装備を備える。しかし、エンジンオイルは空中で補充出来ない為、連続航続時間はエンジンオイルがなくなるまでの72時間に限られる。受油口は機首に設置された。なお、無給油では12時間の航続能力を持つ。
●各種電子機器の追加→機体搭載の電子機器は核爆発によるEMP対処のシールド措置済。EHF(ミリ波)通信による衛星通信能力、VLF(超長波)通信による対潜水艦通信能力なども備える。機体上部の出っ張りはSHF/EHFアンテナ。LF/VLFアンテナは長さ6kmで、機体尾部から曳航する。
E-4B後継機の検討開始
●大統領専用機(VC-25 その後継機も検討中)の充実を受け、2000年頃からE-4Bの廃止が検討されたこともあったが、2030年代初期に機体寿命からE-4Bが退役することから、2020年に「SACO:Survivable Airborne Operations Center」計画としてE-4B後継機計画が本格スタート
●「E-4Bと同等の機体サイズを持つ、民間機ベースの機体を最高で4機調達する。中古機体も検討対象(up to four potentially used)」との前提で、2020年に関連企業に提案を要請。ボーイングとSierra Nevada Corpが手を上げたが、2020年12月にボーイングが撤退(Boeing confirmed that it has been excluded from the competition)したことを認め、現在は1社のみが残っているが、正式決定発表には至っていない
●同計画用予算として、2023年度予算には約140億円だったが、2024年度には約1300億円が盛り込まれている
米空軍のE-4B公式解説webページ
→https://www.af.mil/About-Us/Fact-Sheets/Display/Article/104503/e-4b/
大統領専用機(VC-25)の後継機問題
ボーイングのいい加減さが再び露呈
バイデン政権が方向転換した可能性もありますが・・・
「2024年予定から2-3年遅」→https://holylandtokyo.com/2022/05/31/3291/