「JetZero社のZ-5」が2027年までに飛行試験
官民両用で燃料効率・輸送効率大幅向上目指す
8月16日、米空軍はBWB(blended wing body)形状機体のプロトタイプ機作成と2027年までのデモ飛行実施を、ベンチャー企業「JetZero」社に委託すると発表し、発表の場でKendall空軍長官が「BWB機は燃料消費を大幅に削減するとともに、航空作戦に変革をもたらし、我々の勝利に必要な戦略的優位をもたらしてくれるだろう」とアピールしました
Kendall長官はBWB機に関し、大幅に検討開始を前倒し(当初2030年代に検討開始予定を、2022年末から検討開始に)している「KC-Z」こと将来空中給油機NGAS(Next-Generation Air-Refueling System)への適用を念頭にこれまで語ることが多かったのですが、今回米空軍はNGAS用だとは説明せず、「燃料消費減で気候変動対処」、「民航機との技術共有でWin-Win」とのBWB機の側面を積極的に打ち出しており、
米空軍の本件発表声明は「BWB技術成熟を目指すデモ機作成は、国防省と民間航空業界の両方に、将来航空プラットフォームの選択肢を提供することを狙いとしている」、「BWB形状は従来機体から空気抵抗を30%削減して飛行効率を向上させ、航続距離、在空時間、搭載輸送の効率の向上と、兵站輸送のリスク低減に大きく貢献する」とアピールしています
米空軍のBWB機体開発には歴史があり、1940年代後半のNG社「YB-35」や2007-13年にボーイングとNASAがデモ開発した「X-48」で培った技術が、B-2やB-21で実用化され実戦配備に結び付いているところです
このBWB技術を更に旅客機や輸送機や給油機に展開を試みる背景には、「最近の機体構造設計技術、材料技術、製造技術などなどの進歩によって、機体の大量生産に目途が立ちつつある」点があると米空軍声明は説明しています
今回選ばれた「JetZero」社は、既に「Z-5」とのBWB機のイメージ図を2023年春に発表しており、従来型機に比較して燃料消費量を5割削減できる可能性があるとしており、NGAS候補にも挑戦したいと明らかにしている企業です
一般的にBWB機は、エンジンが機体上部に搭載されることから地上への騒音が軽減できると考えられており、現状の民航機と同様のルートを飛行可能と想定され、エンジンへの異物混入リスクも低減できると見られています
このプロジェクトには米空軍の他、NASA、国防省のDIUとOffice of Strategic Capitalも関与していますが、民航機への技術転用が想定されることから民間資本の導入も期待されています
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もちろん米空軍として、燃料消費量の6割を占める輸送機と空中給油機の燃料消費効率を高めることは、2022年10月発表の気候変動対処計画「Climate Action Plan」に完全に沿ったものであり、今回の発表姿勢に違和感はありませんが、
「KC-Z」である「NGASへの搭載」を明確に打ち出さなかった背景には、空中給油機「KC-Y」もそうですが、多くの候補企業が名乗りを上げていることがあり、機種選定段階でのゴタゴタにつながらないよう、慎重に技術開発を進めたいとの思惑があるようにまんぐーすは考えています
BWB機開発関連の記事
「ステルス給油機検討開始」→https://holylandtokyo.com/2023/02/13/4281/
「長官が積極発言」→https://holylandtokyo.com/2023/01/25/4156/
「KC-Yと-Zの予定に言及」→https://holylandtokyo.com/2022/08/26/3558/
「BWB機の技術動向調査」→https://holylandtokyo.com/2022/08/05/3508/