2021年9月発足の第5艦隊「Task Force 59」が推進
米海軍が20隻、地域同盟国海軍が80隻提供で
1月3日付Defense-Newsが、中東を管轄する米海軍第5艦隊内に2021年9月に創設された「Task Force 59」が中心となり、2023年秋までの立ち上げを目指している無人艦艇と人工知能AI技術を最大限に活用した「多国籍無人艦艇部隊」の準備状況について紹介しています
正式な名称は報じられていませんが、無人艇合計100隻規模で、うち20隻のみを米海軍が軍需産業からリースするなどして提供し、残りの80隻をバーレーンやクウェートなど地域海軍が準備する構想となっているようです
過去の関連報道をさかのぼってみると、ウインドサーフィン形状の「Saildrone Explorer」との太陽光発電で運航する「セール(帆)で進む無人水上艇」が継続的監視を担い、無人の小型ボート「MARTAC Devil Ray T38」が緊急対処を担当したり、有人艦艇から離発着する無人機などもネットワーク化して「海洋状況把握:maritime domain awareness」を向上させるイメージの訓練や試験が紹介されています
2022年2月には、世界60か国から計約6000名、有人艦艇50隻、無人艇60隻が参加する「International Maritime Exercise 2022」&「Cutlass Express 2022」合同演習を米海軍主導で実施したり、海洋情報共有ネットワーク試験を米とサウジ、米とヨルダン、米とイスラエル、米とNATO間で実施して「多国籍無人艦艇部隊」立ち上げ準備を進めてきたようです
ネットワークについては、SpaceX社がサービスを提供し始めている「Starlink」をポルトガルでの米NATO訓練では使用し、将来同サービスが中東に提供されることを期待して準備が進んでいる模様です
「Task Force 59」指揮官のMichael Brasseur米海軍大佐によると、2021年9月以降、バーレーンやヨルダン(アカバ)を主要な拠点として無人艦艇の活動実績は2万5千時間に及び、ウインドサーフィン形状の「Saildrone Explorer」に至っては、燃料補給や維持整備無しで連続220日活動を継続するなど着実に実績を積み上げているとのことです
同大佐は「技術革新は驚くべき速度で進んでいる。中東の厳しい自然環境の中にあっても、軍需産業関係者に我々が投げかける課題は、迅速にかつ新たな能力開発で克服されている」と述べ驚きを表現しています
「Task Force 59」を配下に置く第5艦隊司令官Brad Cooper中将も、「新たな無人艇技術と人工知能を融合することで、我々は地域の海洋安全保障能力と抑止力を向上させている。地域の関係諸国全てが恩恵を受ける取り組みだ」と成果を語っています
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なぜ中東海域が最初の無人艇艦隊創設場所に選ばれたのか説明がありませんが、「太陽光が利用しやすい」「スエズ運河、紅海、アラビア海、ペルシャ湾との広大な海域を監視する人的&艦艇戦力資源が不足」「比較的脅威度が低い」などなどの背景が想像されます
ウインドサーフィン形状の「Saildrone Explorer」は、既に2回イランに拿捕されているとのことですが、その対応も気になるところです
2023年に注目される米軍の動向の一つとしてご紹介いたしました
第5艦隊「Task Force 59」関連の記事
「中東海域で60か国がAI活用海洋演習実施中」→https://holylandtokyo.com/2022/02/14/2685/
「セール(帆)で進む無人水上艇を吟味中」→https://holylandtokyo.com/2021/12/22/2531/
米海軍の無人システム関連
「無人システム構想が酷評される」→https://holylandtokyo.com/2021/03/30/173/
「21年初に本格無人システム演習を太平洋で」→https://holylandtokyo.com/2020/09/18/483/
「潜水艦も無人化を強力推進」→https://holylandtokyo.com/2020/06/04/614/
「米海軍改革のさわり」→https://holylandtokyo.com/2020/10/01/423/
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holylandtokyo.com/2020/04/23/733/
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holylandtokyo.com/2020/01/14/865/