元国防長官2名を含む民間研究チームが対策検討へ
退役軍人以外も1/5以下程度が刑務所経験との米国社会だが
戦場でのストレス、除隊後の社会復帰支援等の問題を分析へ
8月23日、犯罪に関する社会問題を研究する米シンクタンクCCJ(Council on Criminal Justice)が、退役軍人の約1/3が生涯に一度以上逮捕されたり刑務所行になるとの衝撃的な統計データを明らかにし、元国防長官2名を含む15名のチームを編成して原因分析と対策検討研究を行うと発表しました
「退役軍人の約1/3が生涯に一度以上逮捕されたり刑務所行になる」との統計に加え、「退役軍人以外の人が生涯に一度以上逮捕されたり刑務所行になる比率は2割以下程度」との同シンクタンクの発表データも衝撃的で、米国社会のゆがんだ側面を突き付けられた気がしますが、本日の話題は「退役軍人の犯罪率が、それ以外の人より高い」ことへの分析と対策検討が民間シンクタンクで始まるとのニュースです
米司法省公表のデータによると、退役軍人の刑務所収監者は、2016年に10万7400名だったところ、2021年には18万1500名に増加しており、98%が男性で半数が陸軍出身とのことですが、米退役軍人省や国防省や米軍だけでなく、米国社会全体にとって大きな問題となっているようです
15名の検討チームは、ヘーゲル元国防長官(Chuck Hagel)が取りまとめ役となり、パネッタ元国防長官(Leon Panetta)、元海兵隊先任軍曹、ジョージア州最高裁判所裁判長、逮捕歴のある退役軍人2名などで構成され、ヘーゲル氏は「退役軍人が法を犯す原因となるリスク要因の分析だけでなく、除隊した兵士が一般社会に円滑に移行するにはどうしたらよいかや、犯罪を犯した退役軍人を司法制度がどのように扱うべきかについても検討したい」とコメントを出しています
シンクタンクCCJによれば、退役軍人が犯罪を犯す背景は多様多岐にわたり、前線での戦闘経験から来る脳へのダメージやストレスからくる後遺症、軍内での規律違反が原因で除隊の場合に社会復帰への支援がないこと、また退役後の社会復帰支援メカニズムに一貫性が無い点などなどが存在し、
米陸軍や海軍が、軍勤務により生じた脳ダメージやメンタル障害を抱える退役軍人による犯罪行為に関する分析や対策検討に近年着手しているものの、包括的な分析や対応は不十分だとの問題認識をCCJは持っているようです
米国社会全体で取り組む必要がある根の深い問題で、退役軍人犯罪者が激増している点からも喫緊の課題だと思いますが、格差拡大が著しく、経済見通しも明るくない中、大変重い問題です。ヘーゲル&パネッタ両国防長官経験者が検討メンバーを引き受けた心意気と、米国社会の復元力に期待したいと思います
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