最初の派遣国は英国が有力、独仏伊豪カナダが続くか?
人員不足で当初は空軍武官兼務も
日本・メキシコ・韓国・印・デンマークも可能性?
8月1日付米空軍協会web記事が、米宇宙軍が同盟国等との宇宙ドメイン協力関係や能力&人的戦力強化するためのRSA(Regional Space Advisor)計画を検討中で、その一環として在外米国大使館に従来の陸海空軍武官(attaches)に加えて宇宙軍武官派遣を検討していると報じ、最初の派遣国として世界3位の衛星保有国である英国の可能性が高いと紹介しています
RSA計画全体がまだ固まったものではなく、在外米国大使館を外交一元化の観点から統括する「国務省」や派遣先国との調整も今後の予定とのことですが、宇宙軍が陸海空軍&海兵隊の「引き立て役(enabler)」ではなく、陸海空ドメインと並立する重要分野であることを示す象徴的な人事として注目を集めているようです。
どの国に宇宙軍武官を派遣するかについては、宇宙軍報道官は「宇宙ドメインでestablished と emerging space powersの両方から選定中」だとしていますが、在ロンドン米空軍武官のMetrolis大佐は「英国が最初の米宇宙軍武官を派遣する国になるだろう」と語っています
記事は英国が派遣先の一番になりそうな背景として、軌道上の衛星数が米国と中国に次いで世界第3位で更に増える方向にあること、軍内に宇宙コマンドを持つ数少ない国であること、今年2月に米英宇宙コマンドが協力強化覚書に署名していることを理由に挙げています。
また、英国に次いで武官派遣可能性が高い国として、宇宙コマンドや宇宙師団を持ち、軍用衛星を保有している独仏伊カナダをあげ、軍用衛星を運用している日本、韓国、インド、メキシコ、デンマークも将来の検討対象だろうと記事は言及しています
ただし、米宇宙軍が創設されて間もなく人的戦力が不足している現状を踏まえると、宇宙軍独自に武官を派遣できる国は限定せざるを得ないと考えられ、空軍武官との兼任も現実的なオプションとなろう・・・とも記事は説明しています
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上の記述では、宇宙軍の地位向上を示すための「象徴的な人事」と表現してしまいましたが、米宇宙軍武官派遣との捉え方よりも、宇宙に関する軍事専門知識を持つ人材を海外に派遣して、同盟国等との連携を図る必要性が急激に高まっているということでしょう。
ロシアによるウクライナ侵略において、ロシア地上部隊侵攻直前に、いわゆる「第1撃」が行われた対象が民間衛星通信会社のネットワークであったことや、ウクライナの海外との意思疎通や情報発信を支えたインターネットサービスを全力で支え続けたのがSpaceX社であり同社の「Starlink」であったように、宇宙アセットに関する話ができる人材を同盟国等に常駐させる重要性が認識されつつあるということでしょう
とりあえずのコンタクト先が確保できれば、業務の流れはずいぶん違うと思います
ウクライナ侵略が示した民間宇宙能力の重要性
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
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