7月6日からの中国外相訪比を前に前向き姿勢を
地域専門家も米軍もMarcos Jr新大統領に不安隠せず
ソロモン諸島に続く中国の西太平洋外交攻勢
7月5日、フィリピンの新大統領に就任したばかりのFerdinand Marcos Jr氏が、6日からの中国外相フィリピン訪問を前に、「中国との関係は一次元ではなく、もしそれが役立つのなら、文化交流や教育交流、更には軍事交流にも広げていこう」と語った模様で、米国の対中国戦略の重要ピースであるはずのフィリピンの動静が注目を集めています
折しも中国は、米国や西側諸国がウクライナ問題で足を取られている隙に乗じ、西太平洋の島国国家に外交攻勢をかけており、今年に入りソロモン諸島と、ソロモン側の要請があれば中国警察や中国軍を同島に派遣可能となる「安保協定」を結ぶことに成功するなど、着実に侵食を続けています
2022年6月末まで比大統領を6年間務めたドゥテルテ前大統領時代も、米国とフィリピンの同盟関係は不安定で、例えば2020年6月、ドゥテルテ前大統領は米軍の比訪問協定(visiting forces agreement)を破棄すると宣言し、約1年後に破棄宣言を撤回して継続意思を明確にするまで米国は大騒ぎだったと記憶しています
6月9日に米空軍協会が行ったインタビューでWilsbach太平洋空軍司令官は、マルコス新大統領の下でフィリピンとの関係強化を望むと述べつつも、「これまでは極めて限定的な訓練しかフィリピンでは行っていない」と吐露し、「ACE構想に向けた訓練を幾らか実施したが、もっと訓練ができればと考えていたところだ」と期待を示していたようです
しかしAEIのZack Cooper研究員は今後の米比関係について、「Bongbong(マルコス新大統領の通称)の就任で、フィリピンはtricky(狡猾で、扱いにくく、油断ならない)国になるだろう。それでも比は極めて重要な国である」、「他の東南アジア諸国と共にできることもあるだろうが、恐らく極めて限定的だ」、「西太平洋の島々を利用するオプションは極めて重要だが、中国が猛烈な勢いで同地域に進出する様子を我々は目撃しているところだ」と懸念を示しています
太平洋空軍司令官は「政権移行期にあり、これからどのような方向にフィリピンが向かっていくか、変化があるかどうかを見極めていく事になる」とも述べていますが、米国関係者で明るい見通しを持っている人は少ない模様です
米空軍のACE構想も、米海兵隊の「飛び石作戦」も、少しでも多くの西太平洋の拠点を確保することが大前提ですが、「そうは問屋が卸さない」と中国が猛烈な勢いで経済・外交・軍事攻勢をかけており、その最前線フィリピンの動向から目を離せません
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