現有給油機とKC-Y、そしてKC-Zを見据え技術情報収集
自己防御能力や整備性や迅速再発進能力向上の他
電子戦やSA把握能力や連接性や自動給油能力等々を期待
6月29日付米空軍協会web記事が、米空軍が今後の空中給油機体制構築に資するため、関連技術成熟レベルを企業に問い合わせるRFI(request for information)を発出し、7月8日までに提供を依頼する形で、現有KC-46や135の能力向上をはじめ、つなぎ給油機KC-Y、更にステルス機に随伴し敵空域に進入する可能性まで検討されている小型のKC-Zまでイメージした技術動向調査を行っていると報じています
米空軍の空中給油機に関しては、40年近くの使用で老朽化&部品調達困難で維持費が爆発しているKC-135や、既に調達総機数の3割以上を受領しながら要求性能を満たすための改修完了が2024年以降にずれ込むKC-46A、つなぎ給油機KC-Yを機種選定なしでKC-46にしようと空軍が動く中、対抗馬に名乗りを上げたロッキードが推すLMXT側から疑念の声が上がるなど、良い話題がありません
しかし対中国作戦を考えると、根拠飛行場が少ない中、広い西太平洋地域をカバーするには空中給油機は極めて重要であり、米空軍として真正面から検討すべき重要課題ですので、米空軍の空中給油機への取り組みの一環としてご紹介します
6月29日付米空軍協会web記事によれば
●現有のKC-135、導入途中のKC-46をKC-X、つなぎ給油機をKC-Y、そして5世代機や5世代機と行動を共にする無人ウイングマン機に同行するイメージまである次世代給油機をKC-Zとして、これら全体を米空軍はAAR FoS(Advanced Aerial Refueling Family of Systems program)と呼び、将来の戦いに備えた能力向上や要求性能を検討しようとしているが、そのための革新的なアプローチとしてのRFIだと米空軍担当部署は説明している
●米空軍は企業に対し、関連技術を成熟度に併せて段階評価して教えてほしいと依頼しており、コンセプトや実験段階をTRL(technology readiness level)1-2、製造可能段階TRL6-7、実用化済みで能力証明済TRL-10とするよう企業にお願いしている
●先進ファミリー空中給油機(AAR FoS)に求める事項として米空軍は、効率的かつ全世界をカバーするC3、被害状況下でも精密航法が可能な装備、厳しい環境下でも高い稼働率を維持することを基礎に挙げ、
●更に、JADC2(統合全ドメイン指揮統制)環境との連接性、オープンアーキテクチャー設計、PNT(positioning, navigation and timing)能力の代替機能、自動給油機能、より迅速な再発進能力、燃費の向上、より多くの飛行場を利用可能な能力、維持整備費と支援負担の低減も求めている
●また、給油機の生存性を高めるための自己防御装置、状況認識SAを高めるための装備、搭載電子戦装備、無人機ウイングマンとの連携運用能力も求めている。
●電子戦装備については、過去B-52を電子戦機にする構想が何度も持ち上がっては中止されているが、より前線近くで運用する空中給油機に期待が集まっている
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どれとどの関連技術が、どの機体に関係するものなのか明確ではありませんが、なんとなくご想像いただければと思います
これら要素技術動向の情報収集が円滑に進み、米空軍の様々な検討や構想推進に役立てばよいのですが、記事によれば、つなぎ給油機KC-Yについてボーイング製KC-46を改良して進めようとの考えを示唆している米空軍に対し、KC-Y機種選定への名乗りを上げていたロッキード推薦LMXTの工場誘致をもくろんでいたアラバマ州選出議員が騒ぎ始めているようで、胸騒ぎの予感です
米空軍空中給油機の整備方針を大転換
「給油機のミニマム必要機数を削減」→https://holylandtokyo.com/2022/06/13/3319/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「KC-Yにロッキードが名乗り」→https://holylandtokyo.com/2021/10/05/2260/
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holylandtokyo.com/2020/12/01/333/
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22