Kendall空軍長官が2024年度予算案検討過程で決定すると
米空軍レベルではなく国防省レベルの決定が必要と語る
現F135エンジン改修か、次世代AETP搭載か
NGAD用に開発の高価なAETPには他軍種も同盟国もしり込み
5月17日、Kendall空軍長官が上院予算関連委員会で証言し、エンジンブレードの早期劣化が発覚して故障が頻発しているF-35戦闘機のF135エンジン(Pratt & Whitney製)対策に関し、F135改修型導入か、次世代制空機NGAD用に開発中のAETP(Adaptive Engine Transition Program :GE AviationとP&W社が競いが開発中)を導入するか、他オプションを追求するか等の決定を、国防省レベルで2024年度予算案を取りまとめる今後数か月で決定する必要があると述べました
「問題は相当に複雑な状況にある」と慎重な表現を用いた同空軍長官は、具体的なコスト等には言及しませんでしたが、いかなる手段を選択しようとも、「従来と異なるものを求めるなら、そのコストは使用者が負担する必要がる」と国防省は明言しており、開発中のAETPなら「開発経費を含むコスト」を導入者が負担することになります
F135改修型導入、次世代制空機NGAD用に開発中のAETP導入、他オプションの特徴やコストについて、関連報道は触れていませんが、少なくとも最も高価と言われる開発中AETPについては、垂直離着陸B型には搭載できず、空母用C型用には更なる改修(+αの費用発生)が必要で、意向確認は行っていないようですが、米海軍や米海兵隊はもちろん、他のF-35導入国でも、現時点でAETP導入に同意した国はないと空軍長官は証言しています
最近数か月間、関係議員、空軍幹部、エンジン製造企業及び国防省F-35計画室はF-35エンジン問題と改修案について精力的に協議か行われていると記事は伝えていますが、細部はよくわかりません
記事はKendall長官が「空軍単独で進むことは考えない」と示唆したと紹介しつつも、現状について「米空軍と議会は興味を示している」、「一部議員が2027年からAETPを導入する法案を準備した」とも紹介しており、空軍の「腹の中」もよくわかりません
以下では「2024年度予算の国防省案を固める今後数か月で検討する必要がある」、「国防省レベルで判断してもらう必要がある」との意味深な発言をしているKendall長官の議会証言ぶりをご紹介します
17日付米空軍協会web記事によれば同長官は上院で
●F-35用エンジンのパフォーマンスを改善するオプションがいくつか存在するが、相当に複雑な状況にある
●(Susan Collins上院議員の質問に応え、)米軍の他軍種からも、他のF-35購入国からも、AETPエンジン導入の必要性については同意を得ていない
●米軍の他軍種も、他のF-35購入国も、それぞれの懐事情があり、要求性能も異なっている。米空軍は他の運用者や国と比較して、圧倒的に多くの機体を保有しており、本件に関する関心が高い
●一方で新型エンジン導入は、開発費を含めて大きなコスト負担を伴う。現在使用しているF135エンジン改修案は、より安価にエンジン性能を改善できる手段である。また中間的な他のオプションも存在している
●考慮・検討して判断すべき多くの要素があり、判断には広い視点からの熟慮が必要であり、いかなる現有F135エンジンからの変更も国防長官室が最終判断すべきと考えているが、我々が2024年度国防省予算案をまとめる今後数か月で判断が行われると予期している
●米空軍は次期制空機NGAD用にAETP技術開発に取り組んでおり、必要な予算を確保しているが、F-35エンジンの更新や改修判断は、極めて複雑な状況を踏まえより高いレベルでの判断が求められる
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記事は、Kendall長官が「空軍単独で進むことは考えない」と示唆した(seemingly hinting that the Air Force won’t look to “go it alone” with their own separate effort)と描いていますが、米空軍の本音はどのあたりにあるのでしょうか?
AETPを米海軍や他国も含めて導入してくれれば、AETP開発費負担が分散でき、次期制空機NGADの価格(1機数百億になると同長官が)を少しでも抑えられるから、何とかF-35にAETPを搭載するオプションを追求出来ればと、米空軍は考えているかもしれません。
または、F-35にこれ以上資金投入は望まず、NGADや無人随伴機やB-21ステルス爆撃機や核抑止分野に資金を投入したいので、AETP派にも配慮してよいエンジンだと表現しつつも、国防省側で不採用決定してほしい・・との考えかもしれません
F-35のエンジン問題
「上院でエンジンとODIN議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「民間監視団体が酷評」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/