MPF:Mobile Protected Firepowerとの歩兵用軽戦車
General DynamicsがBAEに勝利との報道あり
3月11日付Defense-Newsは、3月のJanes Defense誌が報じた米陸軍軽戦車(正確にはMPF:Mobile Protected Firepower)機種選定で「General DynamicsがBAEに勝利した」との情報をフォローする記事を掲載し、関連米陸軍幹部の「機種選定に満足している」との言葉を紹介しつつ、7月予定の正式発表にサプライズは無いとの感触を伝えています
この米陸軍軽戦車MPFは、歩兵部隊に「防護プラットフォーム」、「圧倒的な精密火力」、「様々な地形条件での高い機動力」提供を目的とするもので、「現在の欠落能力を補完」するため2026年夏に最初の部隊への配備を予定しています
2018年12月に最終候補をBAE Systems社(緑色)とGeneral Dynamics Land Systems(GDLS:茶色)社の2社に絞り、各社に12両のプロトタイプを製造させ、まず米陸軍で全ての基本性能が要求値を満たしているかを試験し、
その後、MPFの基本運用コンセプトを作成した第82空挺師団の選抜兵士による「ユーザー確認試験」が行われ、現場の様々な角度からの意見が聴取され、製造企業側にもフィードバックされ、現在最終結果取りまとめが行われている段階にあるようです
2つの提案は、同じ提案要求書から作成されたものですが、2社の提案は大きく異なっており、GD社は軽量車体に高性能装甲装置と先進サスペンションを搭載し、火器管制装置やタレットにはM1A!戦車の最新型バージョンのシステムを搭載している模様です
一方でBAE社は、コロナの影響でプロトタイプ提供がGD社より1か月遅れたようですが、M8 Buford装甲ガンシステムに新たな能力やサブシステムを搭載したデザインで選定に臨み、2021年8月にはおおむね終了した模様です。「ユーザー確認試験」を経た第82空挺師団兵士からのフィードバックには、両社とも「非常に貴重な現場意見が得られた」と感謝の意を表しています
機種選定と並行し、米陸軍内では量産に向けた「Requirements Oversight Council による審査」も行われ、具体的な配備先部隊を調達数にまで踏み込んだ議論が複数回行われ、煮詰まってきているようです
正式には今年7月(2022年度第4四半期)と言われる選定結果発表後は、勝者が26両を製造(オプションで26両追加製造)し、更に米陸軍内の様々な意見を踏まえ、量産用最終改良型を8両製造して量産形態を確定する予定となっています
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2018年に2企業に絞られた際、米陸軍担当幹部はMPFについて、「歩兵が徒歩や簡易装甲車両ハンヴィーで移動していた際に、敵の拠点や車両に出くわした場合、今は全て停止を余儀なくされている」、「しかしもしMPFがあれば、米陸軍部隊はそれらを突破することができるだろう」とその必要性を語っています。
要求性能でMPFは105mm砲と7.62mm同軸機銃で武装し、重量はM1AI戦車より軽量な40トン以下、そして機動力もM!A!戦車を超えることを目指しており、この点で「欠落能力の補完」と言うことなのでしょう
中東での対テロ戦では用途がありそうですし、ウクライナ軍に提供してあげたい装備ですが、対中国で活躍の場があるとは考えにくく、どの程度の数量が調達されるのか気になるところです
米陸軍の話題
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/