「敵地深く・昼間・大規模」な異例の捜索救助大作戦
軍内ではリスク大で反対意見大も政治・軍上層の決断で実行へ
CIAによる組織的情報欺瞞作戦も展開
特殊部隊200人規模、有人機155機(Fを64機、Bも4機、救難13機、KC48機)+ドローン投入
2000ポンド爆弾を100発以上投下→道路や拠点破壊+イランへの欺瞞作戦
前進拠点(簡易滑走路)をイラン領内に設置
MC-130が2機離陸不能のトラブルで約100人が「置き去り寸前」
小型機を追加投入して「波状撤収」の綱渡り
イラン内で回収困難となった2機MC-130Jやヘリを秘密保全のため自爆破壊
またトランプ大統領は5日SNS上で、「WE GOT HIM!」、「米軍史上最も大胆な救出作戦の一つ」と発信し、作戦成功をアピールし、6日の記者会見(約90分間:国防長官、CIA長官、統合参謀本部議長列席)では「one of the largest, most complex, most harrowing combat … search and rescue missions ever attempted by the military」と困難な作戦を表現しています。
また大統領は、「もう1人が行方不明」との米メディア報道が、イランに情報を与え捜索を激化させたとして、米メディアに情報源開示を求め「拒否なら刑務所行き」と警告もしています。
一方6日の会見で、国防長官・議長・CIA長官は「極めて危険だった」「成功はギリギリだった」
というニュアンスを繰り返しており、以下で紹介する報道が示唆していた「ハイリスク作戦」であったことが伺えます。
以下、日本時間7日午前6時時点までの各種メディア情報と6日の大統領等による90分の会見(上の映像)から、今回の救出作戦についてご紹介します。ご紹介する内容は「あくまで速報情報」であり、それなりに吟味したつもりですが、この種の事案の速報報道にありがちな「推測」「誤報」「デマ」も含まれている可能性がありますので、ご注意ください。
情報源は、Air & Space Forces Magazine, Forbes, NBC News, CBS News, Guardian, New York Post, WSJ, Axios, APなど
【行方不明者の状況】
●被撃墜機のコールサインは「DUDE 44」 イランの携行式SAMで攻撃を受けた。
●当初米軍は、要救助者からの信号をイラン側が仕掛けた「罠の可能性」を疑っていた。特に通信内容が不自然と疑われ、一時は救出に慎重姿勢。それでも救出を強行
●F-15E後席搭乗のWSO(兵器システム士官:大佐)で、重症(足負傷で出血)を負いながら48時間にわたり逃走&隠遁していたが「回復可能」な状態でクウェートへ搬送治療中(生存ぎりぎりのタイミングで救出の模様)
●イランのイスファハン近郊上空で撃墜され、脱出後、ザグロス山脈の山岳地帯の尾根(標高2000m以上)の岩の裂け目(crevice)に潜伏
●イラン国境から200nm(約360㎞)イラン領内に入り込んだ地点に潜伏
●拳銃のみ保有し、緊急手順に沿って、暗号通信・地点情報ビーコンで位置を断続的に米軍に送信
【CIAによる捜索と誤情報拡散作戦】
●撃墜直後からCIAは、「当該搭乗員を米軍が既に無事救出して輸送中」との誤情報を、イラン軍や地元部族グループ等に流布し、イラン側捜索の士気低下や捜索隊戦力の分散を図ると共に、当該搭乗員潜伏先の特定を妨害
●CIAは軍情報に基づき、65㎞離れた場所から監視カメラで要救助者の位置を特定し、国防省とホワイトハウスに通報(CIA長官が会見で説明)
●このCIA作戦が米側の作戦準備時間を稼ぎ、イラン側の動きを鈍らせた、CSAR作戦成功の中核的要因と評価されている
●CIA長官は会見で「欺瞞作戦の成功が決定的だった」と明言し、「7つの偽位置情報を流布しイラン側を混乱させた」「米軍機9機を要救助者とは別地点(25マイル離れた場所)で飛行させ、誤認させた」と説明
【イラン領内での前線展開拠点の飛行場設置】
●前進拠点(即席前進基地&簡易滑走路運用:場所不明)をイラン領内に設置し、特殊作戦機MC-130Jや戦闘ヘリMH-6や無人機等を展開
●作戦実施中に前進拠点にイラン勢力が接近したことで、2機の特殊作戦機MC-130JやMH-6攻撃ヘリが帰投基地変更を余儀なくされ、機体の故障・被弾等も重なり回収不能となる。結果として2機MC-130Jと4機のMH-6ヘリが機密保護のため自爆処分措置実施。
【無人偵察攻撃機MQ‑9による「イラン勢力排除」作戦】
●当該搭乗員潜伏地点の上空でMQ-9が継続的に偵察及び対処行動
●潜伏地点の3km周辺に接近拒否エリアを設定し、近づくイラン軍の人員と車両を複数回攻撃した模様。
●人&車だけでなく、道路・接近ルートを爆撃で遮断。
通信妨害も実施
●米空軍A-10攻撃機も被撃墜直後から一人目の要救助者(操縦者)対応の近接支援を実施。被弾してエンジン一つが停止し、1機クウェート沖でベイルアウト。その後も現場付近で別の機体が援護攻撃
【救出のための突入作戦】
●軍内ではリスク大で反対意見が相当数も、政治・軍上層の決断で実行へ
●200人規模の特殊部隊が投入された2日間にわたる作戦
●有人機155機+ドローンも投入する大規模作戦
(戦闘機58機、爆撃機4機(B-1)、空中給油機48機、救難機13機・ヘリ十数機、KC48機)
(2000ポンド爆弾を100発以上投下→大統領明言「規模そのものが欺瞞だった」
●この種の作戦では極めて異例の「昼間の大規模強行救出」作戦
●イラン側(民兵や部族勢力との対峙含む)と激しい戦闘が行われたと報道されており、「隠密救出」ではなく「強行突入型作戦」だった報道
●(SEAL Team 6とされる)米特殊部隊を投入
●特殊作戦機MC-130が2機が「湿った砂地」で離陸不能トラブルで、約100人が「置き去り寸前」も、小型機を追加投入して「なんとか撤収」の綱渡り。一時は大失敗の危機状態・・・
●(繰り返しになるが、)2機MC-130Jと4機のMH-6が機密保護のため自爆処分
【報道機関による救出作戦評価】
●接近者の排除”を含む、極めて攻勢的なCSAR作戦
●大規模な「戦域航空作戦+統合欺瞞+強行救出」の統合型作戦
●「成功だが高コスト(MC‑130J現地破壊など)」な典型的CSAR
●総コスト約450~500億円との試算
●大規模航空戦力投入は、イラン側に他の大規模作戦をイメージさせる狙い?との推測も
●当初は「成功した英雄的救出」 → その後「ほぼ失敗寸前の高リスク作戦」へ評価が変化
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この様な緊急事態対処の作戦を見るにつけ、米国の「底力」を感じます。発生から36時間との短時間に、CIAを巻き込み、これだけの戦力を敵地深くに送り込み、投入アセットに被害は出たものの、死者無く、対象者を存命のまま救出できたことは快挙です。
この様な捜索&救命救助作戦の遂行能力は、前線兵士の「士気」に直結するものであり、日本も是非学びたいものです。あえて言うなら、日本の戦闘機命派が
「冷遇」してきた救難救助部隊の処遇や投資を、根本的に見直す契機とすべきです
ちなみに「まんぐーす」は、台湾有事の際の周辺地域でのCSAR(Combat Search & Rescue)体制は、米軍を含め「不十分なまま放置されている」と見ています
CSAR救難救助体制の再検討
「今頃救難ヘリの対電子戦能力テスト」→https://holylandtokyo.com/2025/09/19/12718/
「対中国救難検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
患者空輸部隊の苦闘
「アジア太平洋大演習で部隊が苦闘」→https://holylandtokyo.com/2025/08/29/12516/
「対中国に備えた取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/


4月3日にイラン上空で撃墜されたF-15E戦闘爆撃機の乗員1名が行方不明となり、米軍とイラン側双方が大規模な「救出」「捕獲」作戦を競って実施していた件に関し、米国は現地時間4月5日の未明までの2日間にわたる期間で、当該搭乗員を存命&負傷回復可能な状態で救出してクウェートへ治療のため搬送し、このCSAR(Combat Search & Rescue:戦闘捜索救難)作戦参加の200人規模の特殊部隊を含む米軍兵士に死者は出ていないと発表しました。