謎?:米空軍と宇宙軍が募集目標を3か月前に達成

米軍全体でも今年の目標達成確実
空軍は2年連続、宇宙軍は6年連続募集目標達成
空軍特殊部隊希望者が史上最高の750名も
目標控えめ、入隊基準緩和、入隊検査前の訓練とか裏もあるが
国防省は、新大統領の姿勢、軍 250周年、募集努力等の成果と

6月30日、米空軍と宇宙軍の募集業務を担当する空軍募集局が、「予定より3か月早く年間募集目標を達成した」と発表し、米空軍(25年正規兵募集日標3.0万名)は2年連続で、宇宙軍に至っては、創設以来6年連続で募集目標(25年目標800名)を達成したことが明らかになりました。

なお、宇宙軍は他軍種に比し優秀な人材確保
●宇宙軍新兵の約94%が、全軍種の入隊希望者が共通受験する軍事職業適性検査(ASVAB)で平均以上の成績
●5人に1人は何らかの大学の学位を保有し、約13%は学士号以上を取得済

また6月20日付米空軍協会 web 記事によれば、空軍と宇宙軍以外の軍種も募集目標達成又は達成見込みで、前年2024年も新兵受け入れ態勢が追い付かなかった海軍を除く全ての軍種が募集目標を達成しており、コロナ感染収束後の激しい民間企業との人材確保争いで苦労していた米軍が、新兵募集で「V字」回復を見せている模様です。

ヘグゼス国防長官は、トランプ大統領による選挙運動期間中からの「強いアメリカ」「アメリカ第一主義」姿勢が影響して国民感情を刺激したと主張し、6月に設置した「募集タスクフォース」でこの勢いを持続&拡大したいと意気込み、6月14日の陸軍250周年バレードに続き、秋の海軍と海兵隊の創立250周年記念行事、そして2026年7月のアメリカ建国250周年記念行事を、新兵募集イベントとして活用したいと考えているようです。

一方で細かく見ると、以下のような「目標達成」のための「下駄をはかせる」施策を行った現実もあります。
●過去の薬物使用歴、肥満、入れ墨、健康状態等々により、17歳から24歳までの米国人募集対象者の 10人中8人近くが入隊条件を満たさない惨憺たる現実を踏まえ、各軍種が様々な形で、基準の緩和(体脂肪率、過去の薬物使用歴、首や手への入れ墨基準緩和等)や学科試験への電卓の持ち込み許容など、「下駄をはかせる」施策導入(→未尾の過去記事参照)

●米空軍は関連予算の成立遅れで、募集目標を約8%(2500名)下げざるを得なかったと6月に説明。
●米海軍は採用者の「高卒」資格にこだわらない採用を開始。ただし国防省から釘を刺された、新兵の少なくとも90%が高校卒業資格を持ち、少なくとも60%が資格試験で平均点以上を獲得することを条件として。
●米陸軍は、基礎体力や基礎学力が低い入隊希望者を対象に、入隊検査前の事前トレーニングキャンプを開催し、入隊希望者の確実な合格を支援する体制準備

その他「下駄をはかせる」施策とは性格が異なるが・・・
●合法移民の入隊応募者がスムーズな「帰化」プロセスを享受できる特典制度
●学生時代の学費ローン肩代わり制度再導入
●スマホアプリによる現役兵士からの募集候補者情報収集、募集担当者増員のほか成功報酬や表彰制度などなどの施策導入

しかし、6月20日付及び同26日付記事からすると、以下の事実や高官発言の表現ぶりから、根拠はないものの、「下駄をはかせる」施策だけで募集目標を達成したわけではなく、応募者が確実に増えていることが背景にあるような気がしています

●米国全体での人材獲得競争で若者の奪い合いが激化する中、昨年2024年度の米国全体での米軍採用者数は、前年2023年度の20万人から22万5000人に12.5%増加
●ヘグゼス国防長官(下院で)→「歴史的な人数の米国の若者が、入隊宣書を行っている。彼らが目にするリーダーを信じているからだ」
●Allvin 空軍参謀総長(6月30日の早期目標達成発表で)→「軍が兵士に投資していることに米国人が気づき、列をなして志願している。入隊を待つ特殊作戦軍希望者が過去最高数に達し、通常兵士用の基礎訓練に意欲ある若者が多数いることから、そのことが分かる」

6月20日付記事は以下のように分析も・・・
●大統領の姿勢が新兵の注目を引いた可能性もあるが、2024年の大統領選挙前からすでに募集は回復傾向にあったことが判明しており、調査結果は、給与と福利厚生が最大の応募理由だと示している。
●これには、無料医療サービスや住宅費の補助、そして退役軍人用の高等教育支援や退役軍人向け住宅ローン制度等の福利厚生が含まれる。
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未尾の過去記事が示すように、米軍は志願者減に苦しんできました。この傾向は米国に留まらず、全ての西側諸国が共通に抱える大きな問題で、昨年からの米軍「新兵募集 V字回復」は、にわかに信じ難い現象です

本日ご紹介した2本の記事は、事象の表面を「サラッと」紹介したもので、結局のところ「なぜV字回復」なのか良く分かりません。

まんぐーすが唯一思いつくのが、米国社会全体を覆う「衰退感」や「将来への不安感」からくる、「公務の安定性」人気説です。つまりは米国経済の減速感からくる、安定志向が背景にあるのでは・・・との仮説です。

新兵募集難&離職者への対応
「海が高卒条件緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2024/02/07/5522/
「空が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空が24年ぶりに10%未達」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「合法移民へ猛烈接近」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「空が体脂肪率緩和」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/

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