2024年8月に試作機2機の製造契約締結済も
実質的な稼働率2~3割と噂のE-3後継に26機導入予定が
衛星情報等の融合でのE-3代替案は技術未成熟と主張してきたのに
本件については、今年5月中旬記事で「新政権が前政権から引き継いだ2026年度予算案を再精査し、昨年締結したデモ機開発と製造の大幅な遅延とコスト増や、E-7の脆弱性等が再び問題視され、米空軍や国防省に導入中止を迫っている。ただし、米空軍や国防省は、E-3の機能を衛星や他アセットからの情報で代替することは、近未来で不可能だと抵抗している」とご紹介しましたが、
6月26日付の上記記事では、E-7導入に代わって、米海軍が空母艦載の早期警戒機として使用している「E-2D早期警戒機を5機」導入することで当座をしのぎ、匿名の米軍高官の表現を借りれば「E-7よりも早く実現できると現時点で見積もっている、宇宙アセット活用に期待している。地球全体を網羅できるようにしたかった」との姿勢に、「手のひら返し」した模様です
また別の国防高官は2026年度予算案に関する背景説明会見で、「大幅な遅延とコスト増加、更に将来戦で直面すると予期される高度な敵の防空兵器にE-7が耐えられないだろうとの懸念」から、E-7導入中止の判断に至ったと語った模様です。
確かに、「大幅な遅延とコスト増加」に関しては、最近の米会計検査院GAOが、E-7デモ機2機の開発費が3割強増の5400億円にまで膨張していると指摘し、更に豪空軍が使用中で英空軍も発注しているE-7を米空軍用にアップグレードする開発が9カ月遅れ、初飛行が2027年5月にずれ込み、最終的な完成初号機の部隊納入2032年予定も大きく遅延する可能性が高いと指摘していますが、米空軍の様々な問題プロジェクトと比較すれば「誤差」程度のズレで、
ほんの2カ月前には、米空軍トップのAllvin参謀総長が下院で「E-7は現時点でE-3代替を高いレベルで実施可能な唯一のアセットであり、他ドメインのアセットでE-3の代替が確実に実施可能と判断するには、まだまだ時間と技術的成熟が必要だ」と説明し、宇宙軍トップのSaltzman大将も別の議会公聴会で、「衛星センサーは様々な利点を持つ有用なアセットだが、米軍の任務全てをカバーできるよう最適化されたアセットは一つもない。(E-3やE-7のような他ドメインの)複数システムと組み合わせる必要あり」と証言したばかりであり、米軍幹部の変わり身の早さに米議会も「開いた口が塞がらない」状態だと記事は報じています
恐らく国防省や米空軍上層部で判断したであろう「E-7中止」に、空軍前線部隊も振り回されているのが実態らしく、同記事は、老朽化するE-3を何とか部品共食い等々で使用し、前線での航空戦力戦闘管理を行ってきた部隊を茫然自失にさせている(leaves the service’s battle management community in limbo)と報じています
///////////////////////////////////////////////////
グダグダ理由説明があるのでしょうが、前政権下で予算枠外のはずだった「次期制空機F-47」を、無理やり2026年度予算案にぶち込んだため、E-7が弾き飛ばされたと考えるべきでしょう。ほかにも「被害者」が出そうですが・・
「26機のE-7(大型旅客機改造のジェット機:搭乗する監視管制運用要員10名)」を、「一時期のつなぎ」アセットとはいえ、「5機のE-2D(プロペラ機で同要員3名)」で代替可能とする理屈は、どんな天才でも案出不可能だと思いますが、「一時期のつなぎ」の後は米海軍に寄贈する等の根回しがあるのかもしれません
ボーイング社との2機のデモ機開発製造契約を破棄する問題、E-3の後継でE-7が配属されると喜んでいたオクラホマ州とアラスカ州の議員団の動き、E-7を導入済の豪州や韓国、発注済の英国、更にE-3の後継として同じE-7を挙げているNATO軍との関係などを、記事は注目点として挙げていますが、手のひら返しの国防省や空軍幹部への信頼性低下も大きな隠れた課題になりそうです
突然のE-7導入中止の動き
「E-7導入中止を米政権が検討中」→https://holylandtokyo.com/2025/05/15/11591/
米空軍のE-7導入決定までの経緯
「試作2機のみ価格合意」→https://holylandtokyo.com/2024/08/30/6218/
「ボーイングとの価格交渉難航」→https://halylandtokyo.com/2024/03/11/5621/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/

