次のCCAはより安価&低性能で数量を

現在開発中の「第1弾 Increment 1」の後の「第2弾」の件
KendalI前長官は退任前「より高性能に」と示唆も
「金をかけずに数で敵を混乱させ圧倒」を狙うと

4月24日、米空軍司令部の「戦力編成部長(Director of Force Design. Integration, and Wargaming)」である Jospeh D. Kunkel少将が米空軍協会のイベントで講演し、無人ウイングマン機(CCA: Collaborative Comat Aircraft)として現在2機製造中で今夏に飛行試験開始予定の「第1弾(Increment 1)」機体に続く「第2弾(Increment 2)」CCAは、

「ローエンドのものから、より高度な自律型無人 CCAまで、幅広い選択肢が当然検討対象ではあるが、第2弾(Increment 2)機体の役割を様々な側面から検討すると、第1弾機体より恐らく低性能(low-end thing)に落ち着くであるうと考え始めている」と語り、今年1月の政権交代で退任した KendaII前長官が「より精緻な第2弾(Increment 2)」を繰り返し示唆していた点は認めつつも、「質より量」を追及する方向転換を事実上表明しました

KunkeI少将の発言概要は、・・
●前空軍長官は「より高度な機体」を考えていたかもしれないが、それほど緻密でない安価で量を確保可能なタイプにも将来的な必要性がある。CCA開発の原点は「手頃に量を確保」、つまり大金を使わず敵を混乱させ圧倒するため、多くの航空機を飛ばす能力獲得にある。
●我々は戦闘力をどう生み出すべきか検討中であり、基地からの戦闘力創出は重要だが、基地に依存しない他の方法も検討すべきかもしれないし、これは将来の CCAを考える際に大きな部分を占める。

●無人ウイングマンCCA部隊は、高密度の脅威環境を創出し、より複雑で困難な戦いを敵に強いるアセットで、我を有利に導く役割を担う
●CCAは、F-35やF-22、そしてF-47と融合一体化して敵の対応を困難にし、我を優位に導く。将来は次期爆撃機B-21や次期早期警戒管制機E-7、そして恐らくCCA単体でも、敵に負担を強いる複雑な環境を創出するだろう

●米空軍は、戦いの緒戦で高性能兵器を使い果たし、2週間後から中級性能の兵器に移行し、1か月後には旧式兵器を持ち出さざるをえないような戦いに陥ってはならない。戦い初日から20か月後まで、同様の戦いが継続可能な強固な体制を構築しなければならない。このためには、兵器を製造する堅実な産業基盤も求められる

●1年前から作成に着手している米空軍戦力設計(future Air Force force design)は議論がまとまりつつあり、まもなく完成する。これは、継続的な改訂を必要とするものではなく、持続性を備えたものとなろう。しかし、実行には時間がかかり。その完成には約10年かかるだろう。
●また、この計画は統合運用を前提とし、長距離攻撃効果の達成を念頭に置いている。空軍と他軍種は「統合長距離キルチェーン組織」を結成し、デジタル接続を用い標的の迅速な引き継ぎを実現し、攻撃実施に最適な位置に攻撃アセットを配備することを目指す。

●3月21日、次期制空機にボーイング製F-47が選定されたことは、空軍にとって素晴らしいことだった。何カ月もかけて次期制空機NGAD 計画を再評価したが、結局国防省は1周して元に戻った。再評価は必要なかった。我々は正しかったのだ。

上記発言に対する記事のコメントや分析
●外部専門家たちは、CCA第1弾が、滑走路から通常方式で離陸し、空対空戦闘、つまり有人戦闘機の護衛・防御を支援する空中兵器弾薬庫としての任務を担うことを予期し、第2弾が電子戦や地上攻撃といった他の任務を担うだろうと想定してきた
●同少将発言が意味する空中発射型の第2弾 CCAは、第1弾より大幅に小型・軽量化の必要があるが、それがコスト削減に結びつくかは不透明だ

●空軍は輸送機の貨物庫から巡航ミサイル搭載パレットを投下してミサイル発射する「Rapid Dragon構想」試験を続けてきたが、同少将はこのイメージも持っている可能性もある
●結局のところ、同少将の第2弾「低価格&低性能&量重視」追及は、巡航ミサイルやMALD(無人の在空型電子デコイ)の有用性と重複する。ある専門家は「片道飛行の使い捨てミサイルやデコイは既に存在しており、同様の使用法を想定する CCA に、あえて何百時間も使用可能な性能を求める意味が分からない」と厳しい評価を下している。
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KendalI前空軍長官は将来脅威環境や予算状況を総合的に勘案し、次期制空機NGAD やF-47の事業優先度は低いと判断し、次年度予算枠からF-47を除外する方針でしたから、将来の本格紛争環境に適したCCA第2弾には「より高性能」を求める意向でした。

その方向性がなぜ変更されたのか不明ながら、トランプ政権がF-47を承認したため、予算がなくなって「安価で低性能」な第2弾とせざるを得なかったのでしょう。それと、米空軍を支配する戦闘機パイロット族の支持が得やすかったからでしょう

Kunkel少将の発言ぶりを見て、「ロバート・ゲーツ国防長官語録 100選
https://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/)」の中の一つを思い出しました。

ロバート・ゲーツ語録 21
(15年前の発言です→)国防省で制服幹部をたしなめている。陸軍は未だフルダ・ギャップでの戦いを望むのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度なのか? 空軍は単に飛んでいたいだけなのか?→https://holylandtokyo.com/2010/10/03/9781/

米空軍の将来態勢を考える要職にあるはずのKunkel少将は結局、高性能の戦闘機を自分の体の一部のようにして、空を「単に飛んでいたい」だけなのではないか・・・と思います。

米海軍が2013年頃に空母での飛行試験に成功した「無人艦載攻撃機X-47B」を闇に葬り、米空軍がB-21次期爆整機要求性能をまとめる際、頑なに理屈なく「無人機化」を拒否し、「Optionally Manned」との意味不明の言葉で胡麻化したように、「単に飛んでいたい戦闘機命派」の思い上がりは、いつか大きなしっぺ返しを食らうことになるのでしょう

次期戦闘機より基地防空や宇宙対処が優先だったはず
「F-47は優先度低く予算枠外だった」→https://holylandtokyo.com/2025/04/03/11185/

米空軍のCCA 計画関連
「米海軍も空軍CCAの兄弟版を」→https://holylandtokyo.com/2025/04/16/11286/
「CCA補完の安価な」→https://holylandtokyo.com/2024/06/21/5988/
「2029年までにまず 100機」→https://holylandtokyo.com/2024/05/21/5863/
「大手3社案が選考漏れ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/17/5851/
「あと6年で実用化に試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/

葬られた無人艦載攻撃機X-47B
「X-47の夢終焉」→https://holylandtokyo.com/2016/02/03/7736/
「組織防衛でX-47妨害」→https://holylandtokyo.com/2015/02/07/8123/
「要求抑制は組織防衛だ」→https://holylandtokyo.com/2014/08/04/8327/
「夢しぼむ・・無念」→https://holylandtokyo.com/2013/09/25/8697/

次期爆撃機の無人化を阻止した闇
『米空軍の誰一人として、私に爆撃機が有人である必要性を教えてくれない。核任務に有人型が必要だと言うなら、ICBMに有人型があるのか?』
「統合参謀副議長の怒り」→https://holylandtokyo.com/2011/07/17/9520/

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