中国軍事力レポート2024は腐敗捜査の影響に注目

匿名高官「台湾侵攻能力造成に影響が出ている」
3代連続で中国国防相が捜査対象の可能性も
防衛研究所「グローバルサウス」レポートがはぐらかす中

12月18日、米国防省が米議会に提出を義務付けられている通称「中国軍事力レポート2024」(Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China)を公表し、ここ最近の同レポートと同様に、核弾頭の急激な増加や遠方への戦力投射能力の向上(弾道&巡行ミサイル射程、艦艇や航空機活動など)に注目する一方で、

習近平による厳しい汚職撲滅方針からくる国防相をはじめとする大量の高級幹部更迭が、能力向上にマイナスの影響が出ているとの「負の側面」を第一に取り上げるなど、従来とは異なるアプローチに注目が集まっています

特にまんぐーすが対照的だと指摘したいのは、同日防衛省防衛研究所が発表した毎年恒例の「中国安全保障レポート2025」が、「台頭するグローバルサウスと中国」とのテーマを掲げ、本来最重要点として同レポートが注目すべき「中国経済崩壊の中国軍への影響」や上記「習近平の厳しい腐敗撲滅捜査と高官更迭の影響」に関し、全く触れようとしない防衛研究所の「中国に配慮したような」編集&研究姿勢です。

この点は、昨年の同2024レポートが「中国、ロシア、米国が織りなす新たな戦略環境」をテーマにして発表された際も厳しく指摘いたしましたが、中国に毒された現在の自公連立政権の実態を映し出す鏡のようで、本当に情けない限りです。防衛省の研究機関でさえこの凋落ぶり・・・。偏向報道が著しい日本の「マスごみ」と腐った現状だけでも胸糞悪いですが、ため息も出ません・・

「2024レポート:中国経済崩壊に言及ゼロ」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/

本題に戻り、米国防省「中国軍事力レポート2024」は
12月18日付Defense-News記事によれば
●同レポートによれば、中国軍に蔓延する汚職が、台湾侵攻を行う中国軍の能力を鈍らせている可能性がある。中国軍は、艦船を海岸からより遠くに配備し、より長距離のミサイルを披露するなど、全体には引き続き前進しているが、数年に及ぶ汚職捜査により、中国軍にとり重要な節目となる2027年に関連する目標の一部達成が遅れる可能性がある。
●同レポートは、2023年7月から12月の間に、中国軍の高級幹部15人以上が汚職疑惑で解雇され、11月には中国軍事を統治する軍事委員会7人の中の一人が解任され捜査対象となっており、また米情報機関は確証を得ていないが、現職の董軍国防相も汚職容疑で捜査を受けている可能性があり、起訴されれば、国防相が3代連続で汚職逮捕されることになる

●記者団に同レポートの発表説明会を行った匿名の国防省高官は、習近平は中国軍に対し、 2027年までに台湾侵攻能力を備えるべきと過去に指示しており、最近その目標を再確認した模様だが、汚職捜査がその能力獲得を妨げている可能性があると述べ、「すでにある程度の影響が出ている」と表現している。
●記者団は「ある程度の影響」との表現に関し、様々な角度から同匿名高官に問いただしたが、部隊訓練の進捗や装備品の部隊での受け入れ状況など、台湾作戦への具体的影響に関する点については一切語らず、「未解決の汚職という重大な問題が、2027年の能力開発目標やそれ以降の道のりを遅らせることは間違いない」との表現にとどまっている

●同レポートは上記汚職問題の影響以外に、40年以上も戦争を行っていない中国軍の全体的な「質の把握」は容易ではないと前置きしつつも、中国軍の重要な弱点には、指揮官の質、市街戦、兵站などがあり、これらの要素は、海により約180㎞離れた台湾への侵攻作戦の成否のカギだと指摘している

●中国軍装備の急速な拡充ぶりについて今回の同レポートは、昨年だけで実用可能な核弾頭を約100個追加し、2024年半ばまでに600個、2030年までに1000個に達すると警戒を強め、中国側が一貫して主張している「国家安全保障上必要な水準で核戦力を維持」との表現における、「必要な水準」が変化したと考えざるを得ないとしている
●また中国軍の陸海空軍の通常戦力増強について同レポートは、「1930年代以来最大の平時軍備増強」と表現して危機感を訴えている
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米国の政府機関は一貫して中国の脅威を訴えてきており、その流れは米国防省「中国軍事力レポート2024」でも変わりませんが、中国内で起こっている「右肩上がりではない」変化を、同レポートの一番の注目点として発表したのは、米国政府の対中国認識や姿勢の変化の「第一歩」だと思います

11月中旬に太平洋軍司令官も、「2027年が中国による台湾侵攻の期限だとは考えていない」、「挑発的な中国軍行動や演習が増加の中でも、米国との偶発的な衝突が大きな紛争に発展する懸念は低い」と語っており、米軍や米国防省の中国認識の変化は明確になりつつあります。

中国に毒された「石破政権」に、そのような中国の変化を国民に示し、政策の変更につなげることは100%期待できないと思いますが、防衛研究所の中国問題担当者の皆様には、ぜひ「研究者の矜持」として真実を語っていただきたいと思います。

アジア太平洋軍司令官の11月講演
「2027年が期限ではない」https://holylandtokyo.com/2024/11/22/6572/

台湾の前総統はより端的に
「中国は台湾侵攻を考える状態にない」https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/

現物「中国軍事力レポート2024」約180ページ
https://www.defense.gov/Spotlights/2024-China-Military-Power-Report/

米国防省の同レポート解説webページ
https://www.defense.gov/News/News-Stories/Article/Article/4011541/report-despite-corruption-problems-china-progresses-toward-modernization/

米国防省:中国の軍事力レポートの記事
「2023年版」→https://holylandtokyo.com/2023/10/23/5162/
「2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/
「2020年版」→https://holylandtokyo.com/2020/09/03/472/
「2019年版」→https://holylandtokyo.com/2019/05/10/6733/
「2018年版」→https://holylandtokyo.com/2018/08/20/6934/
「2016年版」→https://holylandtokyo.com/2016/05/16/7654/
「2015年版」→https://holylandtokyo.com/2015/06/19/8009/

防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→https://holylandtokyo.com/2011/05/20/9590/
2回:中国海軍→https://holylandtokyo.com/2012/02/24/9307/
3回:軍は党の統制下か?→https://holylandtokyo.com/2012/12/25/8992/
4回:中国の危機管理→https://holylandtokyo.com/2014/02/02/8517/
5回:非伝統的軍事分野→https://holylandtokyo.com/2015/04/24/8077/
6回:PLA活動範囲拡大→https://holylandtokyo.com/2016/03/12/7713/
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holylandtokyo.com/2018/03/06/7039/
9回:一帯一路→https://holylandtokyo.com/2019/02/12/6799/
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません
11回:サイバー宇宙情報軍民→ https://holylandtokyo.com/2020/11/16/388/
12回:統合作戦能力の深化→ https://holylandtokyo.com/2021/11/30/2481/
13回:認知領域とグレーゾーン事態掌握→サボって取り上げてません
14回:中露米が織りなす新戦略環境→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/

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