米国防省が2023年「中国の軍事力」レポート

核弾頭が毎年100発急増ペース維持
通常弾頭ICBM開発が物議
空対空ミサイルやJ-20やH-20爆撃機など

2023ChineReport90.jpg10月19日、米国防省が毎年恒例の「中国の軍事力」レポート(China Military Power Report)を発表し様々なメディアが取り上げていますが、本日は19日付米空軍協会webとDefense-News記事から、核戦力やロケット軍や空軍の動向を中心にご紹介します

中国はGDPの3割を占める不動産取引市場のバブル崩壊を契機とし、汚職と腐敗に満ちた国家及び地方行政の問題点が一気に噴出し、各方面でデタラメな財政運営が次々と明らかになっていますが、これに対する習近平の毛沢東的とも言える共産党イデオロギーニーによる前時代的な思想に基づく指導や、習近平に「こびへつらう」イエスマンだけが残った党指導部の機能不全から生じるバブル崩壊への「無策」等々が重なり、

今後20-30年は「お先真っ暗」な経済状態が継続しそうですが、現時点で米国防省が中国経済崩壊の中国軍事力への影響を評価するのは困難でしょうから、2023年前半までの状況をまとめた内容からご紹介します

核弾頭の継続増強
ICBM conv.jpg●中国の核戦力増強が猛烈な勢いで続いている。2020年レポートでは「200発台前半(low 200)」と見積もられていた数量が、2022年には「約400発」、そして今年2023年レポートでは「500発」に増えており、以前から米国防省が推計していた2030年までに「1000発」、2035年までに「1500発」に向かって毎年100発ペースで急増している
●2022年には、3か所で固体燃料型ICBMサイトが完成して計300発が格納できる態勢が整い、同サイロへの核ミサイル配備が始まっており、迅速な発射態勢(launch on warning posture)作りが強化されている。またこれら急増する核弾頭を維持整備するための施設にも投資が拡大している

(以下は19日付Defense-News記事から)
ICBM conv4.jpg●2023年9月、米国防省は「大量破壊兵器対処戦略」を2014年以来初めて改訂した。改定前戦略はテロ組織やならず者国家(NKやイラン等)が核兵器を入手したケースに備える対策を重視していたが、改訂版戦略は中国やロシアの猛烈な核戦力増強を一番の脅威として捉えたものとなっている
●また、核軍備管理枠組みとして存在していたINF全廃条約やオープンスカイズ条約が無効となり、ロシアがウクライナ侵略で「核使用をチラつかせる恫喝」を行っていることから、核抑止の枠組みが変化しつつある点にも留意している

●国防省関係高官は、露が5900発、米が5200発と合計で世界の9割を占める核弾頭保有国である現状から、比較して少数の核弾頭しか保有しない中国は、核戦力の透明性確保に消極的であるが、その保有数が増えるにつれて議論の場に姿を見せる可能性に言及している

ロケット軍の通常弾頭ICBM開発
ICBM conv3.jpg●中国のロケット軍はこれまで、短・中・長距離弾道ミサイルの開発&大量配備に注力してきたが、ハワイやアラスカや米本土を通常弾頭で攻撃可能なミサイルを開発中である。これはロケット軍の発展最終形とも考えられ、中国軍として初めて通常兵器での米本土攻撃力保有を意味し、戦略的安定性の観点から疑念を生むことになる
(as we see them maybe exploring the development of those conventionally-armed ICBMs, it raises some questions about risks to strategic stability)

中国空軍関連
PL-21.jpg●戦闘機が搭載する空対空ミサイルに関し、2021年レポートでは中国のPL-15が米空軍のAIM-120 AMRAAMと同等の性能を持つと紹介され注目を集めたが、2023年レポートでは追加情報はなく、会見でも担当高官は細部への言及を避けた
●一方、会見で高官は、中国が赤外線誘導とレーダー誘導の両方の能力を備えた次世代ミサイルを開発している可能性に言及し、報道で「PL-XXまたはPL-21と言及される次世代空対空ミサイル開発を行っている」と未確認情報が紹介された事との関連が噂されている

●ステルス戦闘機とか重要目標要撃機とも評されるJ-20戦闘機の能力向上開発が行われている
●核と通常兵器両用のH-20爆撃機開発が行われており、別に中距離用と長距離用のステルス爆撃機開発も進められている

y-20u tanker4.jpg●Y-20輸送機の改良派生型としてY-20U空中給油機が配備された。また同派生型として早期警戒管制機型も開発されている模様
●中国空軍の運用面での変化として、米軍機や米同盟国機に対する中国軍機の過激な接近飛行が過去2年間で激増しており、米国防省は10月16日の週に、中国機による危険で威嚇的な飛行を記録した画像や映像を数十点を公開した
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現物2023年版レポート(約210ページ)
https://www.airandspaceforces.com/app/uploads/2023/10/2023-MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA.pdf

習近平 愛される国.jpg中国軍関連では、習近平によってロケット軍幹部がトップを含め大量に更迭され、中国海軍出身の「ロケット軍門外漢」がトップに就任するなど異様な人事が断行され、最近では国防相が消息不明から更迭されるなど、これまでとは明らかに異なる事態が発生しています

また英国発の「黄海での原潜沈没・搭乗員全員死亡事故」情報など、水面下で中国軍を巡る情報の駆け引きも行われているようでもあり、その辺りの2023年レポートでの扱いも気になります

過去の中国の軍事力レポート
(2022年はサボって取り上げていません)

「2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/
「2020年版」→https://holylandtokyo.com/2020/09/03/472/
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17

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