18日、バイデン副大統領が米国防大学で核政策について講演し、大幅な核兵器削減(deep nuclear reductions)に言及しました。会場にはゲーツ国防長官やジョーンズ安全保障担当大統領補佐官も陪席し、核態勢見直し(NPR:Nuclera Posture Review)発表の予行のような状況になっています。
NPRは、ホワイトハウスと国防省の意見の対立から、これまで昨年12月と今年1月末の2回にわたって国防省がだめだしを食らった状況にあり、最終的に3月1日発表予定になっています。
ホワイトハウス側はバイデン副大統領を中心に、オバマ大統領の核廃絶政策やイラン対応等を念頭に、米国の核弾頭を大幅に削減して国際的な支持を固めたいと考えている模様です。間近なテーマとして、4月と5月にオバマ大統領主催で開催する予定の核廃棄物処理と不拡散条約見直し関連会議で議論をリードしたいとの思惑等もある模様です。
一方国防省側は、不安定な国際情勢や核拡散の状況、及び同盟国の「核の傘」への信頼感を維持するために、大幅な削減は避けたい意向を持っているようで、これまで両者間でせめぎ合いの調整がなされてきました。
講演の中でバイデン副大統領は・・・
●我々は我々の核兵器とその信頼性を保つため、その開発施設も含め、軍と共に全力を尽くさねばならない。そのため減少してきたこの分野に今後5年間に約6300億円の予算案を提案している。
●(一方で)通常兵器や装備を強化する計画と現有装備があることから、抑止力を維持しつつ、米国は核兵器を大幅に削減することが許される。
●潜在敵国の攻撃を抑止するため、長年核兵器に依存してきたが、技術の向上に伴い、非核手段で同じ目的を達成できるようになりつつある。ミサイル防衛などにより、核兵器への依存を減らすことが可能。
●条約締結後42年が経過した核兵器不拡散条約の強化を目指し、核保有国の核廃絶と非保有国の獲得防止を図る。
●北朝鮮やイランなどの国への制裁強化と核分裂物質生産の禁止を呼びかける。
●核兵器の拡散を防ぐために包括的核実験禁止に取り組む。条約批准を議会に働きかける
ゲーツ国防長官は「他国が核爆弾やその運搬手段を持つ限り、米国は戦略核抑止力を維持しなければならない」との考えで、大幅な削減には反対のようです。予算が厳しい中、ある程度の削減は同長官も進めるべきとの考えでしょうが、同性愛兵士の問題と共に、大統領と副大統領にはチョットついていけない・・・とのつぶやきが聞こえてきそうです。
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
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