米空軍輸送コマンド司令官と担当企業幹部が語る
まずKC-135と同サイズのC-130に自律飛行ソフト搭載する方向
戦闘機タイプ(CCAなど)開発は進むも、大型機が遅い理由は?
米空軍幹部や有力OB、専門家や企業関係者が一堂に会する米空軍協会Air, Space, & Cyber会議に、空軍輸送コマンド司令官が参加しているのは当然ですが、米海軍のMQ-25A関連発表直後に、米軍ともタッグを組んでいる関連企業Merlin Labs社トップまで呼んで「議論の場」を整えているのですが、
予算面では、2026年度予算に「新型空中給油機の検討費用」が僅か20億円程度しか積まれておらず、2027年度予算案でも「先進的な給油システムの検討」との名称で同程度の予算要求がされているのみで、その代わりと言っては何ですが、「現有大型機の自己防御システム」開発に今後5年間で7~800億円投入する計画が2027年度予算案の添付資料に示されている状況で、将来「ステルス機」を追求する意図の有無も含め「モヤモヤ」状態です
ただし、CEOのMatthew George氏(若干36歳!)が2017年に設立した Merlin Labs社は、航空機の「離陸から着陸まで(Takeoff to Touchdown)の完全自律飛行システム」を開発する、世界最先端の航空ハイテク企業で、新しい機体開発ではなく、既存の全ての航空機(軍用・民間用問わず)に搭載可能な自動化「AIシステム」 開発中な点が「売り」ですので、これを機にご紹介いたします。
まずDaniel Tulley空軍輸送コマンド司令官(中将)は
●米海軍は無人艦載給油機MQ-25Aの初度3機の製造契約を発表したが、海軍はいずれ有人空中給油機を必要としなくなる可能性がある。私も、将来の空中給油は必ずしも有人機による必要はないと考えている。ただその場合、米空軍はどのようなscope, scale, and rangeで無人給油機を導入すべきか?
●(空軍のKC-46給油機は航続距離7400nmで約100トンの燃料給油が可能だが、MQ-25Aは500nmで8トン以下である点を踏まえ、)米空軍が必要な給油機は、航続距離と相当の給油量確保が可能な大型航空機だ。そして現実として、我々はまだ完全自律型の大型航空機を運用可能な段階に至っていない
●代表的な例として、ボーイング製の大型旅客機等は現在、ほぼすべての機種で、ほとんど人間も補助なしで離陸し、設定ルートを飛行し、ほぼ自動着陸して滑走路上で停止することが可能だ。しかし、私たちはその能力を広範に活用していないのが現実。
Merlin Labs社CEOのMatthew George氏は
●大型機の自立化は、技術的には完全可能な段階には至っていないが進歩は見られ、ビジョンは明確になりつつある。我社はその実現に向け、世界の最先端にあると考えている
●目的達成のため、KC-135空中給油機と同サイズのC-130J型機に、自律飛行能力を搭載したいと考えている。成功すれば、知る限りで、米空軍が運用中の航空機を自律システムで制御する初ケースとなろう
●C-130の利点は、現有機体に搭乗員を乗せた状態で、自律飛行AIソフトの導入試行を開始可能なことで、自律ソフトで乗員を支援する形としても活用可能なことである。一足飛びに完全な無人給油機に移行するのではなく、徐々に自律飛行実現に取り組むことが可能な点が良い。
●目標としているのは、無人給油機が実現されると同時に、自律飛行ソフトが実用化段階に至るこ
と(The goal is that the unmanned tanker is ready, and the autonomy ends up being ready at the same time.)
●Tulley司令官から指摘があったように、多くの航空機はある程度自動操縦が可能だが、緊急事態など、人間が判断を下す必要がある場合がある。真に難しいのは、例外的なケースや緊急事態、つまり決断を迫られる状況だ。例えば、飛行途中で天候が悪い場所に遭遇した場合、どうその場所を回避すべきか? との判断場面だ
●技術的な課題だけでなく、政策面にも課題がある。(大型機の自律運航が)現在の法制下で、安全だと認証されるかの問題だ。我々は今、米空軍と連携して、如何に認証取得するかについて取り組んでいる。
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Merlin Labs社について補足説明します
●2017年創設(CEOは当時27歳!)の同社の自律飛行AI「Merlin Pilot」は、最先端技術で人間の管制官からの音声指示をシステムが聞き取り、コンピューター合成音声を使って無線で応答・交信することが可能。管制官指示を理解したAIが、機体の旋回等操作を実施可能
●米連邦航空局FAAからの資金で2023年7月にアラスカで「Merlin Pilot」搭載セスナ機(Cessna Caravan)による基礎的な技術実証試験に成功し、更に本格的なFAA認証開始のための自律着陸実験に2024年9月成功。2026年7月には航空ショー「Oshkosh 2026」で管制官と交信しながら完全自動着陸を披露し、歴史的偉業との評価獲得
●世界中で深刻化するパイロット不足の解消と、運航コストの削減を目指し、民間貨物・航空業界
へのアプローチ中
●米軍との関係では、2022年7月に、米空軍との「C-130Jの自動航行化への着手」を発表し、研究開発ベースの協力関係開始。
●成果が認められ、2024年6月に米特殊作戦コマンドと、搭乗操縦者数を減らして完全自動での離着陸&飛行を可能にする約140億円の5年契約を締結。危険な任務における人的リスクの軽減を軍側は期待
●Merlin Labsは2026年3月にNasdaq新規上場を果たし、元海軍長官やAmazonの初代最高会計責任者(CAO)を取締役会に迎えるなど、ガバナンス体制強化も並行して急発展を継続中
●ちなみにCEOのGeorge氏は、生物学の学士号を取得後、別の大学で救急医療を学び、ホワイトハウスで医療データ分析の仕事を行った経験あり。その後、スマートシャトルサービスを提供する。この地上輸送配車サービスのベンチャー企業「Bridj」を創業し、ここでの自動化・最適化の経験が、今の自律飛行に着目する契機となった模様
米国には、とびぬけた若者がおります・・・(唖然)
大型機(給油機や輸送機)関連の記事
「給油機予算は雀の涙」→https://holylandtokyo.com/2026/08/10/14600/
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「次期Cは13年後から50年かけ」→https://holylandtokyo.com/2025/11/25/13270/
「KC-46 追加へ」→https://holylandtokyo.com/2025/07/24/12283/
「ステルス給油機失速」→https://holylandtokyo.com/2024/10/16/6370/
米海軍の初の空母艦載無人機
「海軍がMQ-25製造契約」→https://holylandtokyo.com/2026/09/XX/15673/


9月17日付DefenseOneが、米海軍が初めての空母艦載無人機となる「MQ-25A空中給油機の初期製造契約」を発表(9月14日)した事を契機に行われたと推測される、「(推定テーマ)米空軍は空中給油機を無人化するのか」に関する、空中給油機の運用を担う米空軍輸送コマンド司令官と、大型機(輸送機や空中給油機)を含むすべての既存航空機の無人自律飛行技術開発に取り組むMerlin Labs社CEO(推定36歳!)による、パネル討議の様子を報じています。
