対中国での戦時捜索救助任務CSAR遂行に疑問符

米空軍協会web記事がイラン救出作戦に絡め言及
1995年と1999年のCSAR救助者証言や過去事例も踏まえ
対中国を想定し、日本は自身の問題であることを再認識すべき

4月25日付米空軍協会webサイトが、4月初旬にイラン領内で撃墜されたF-15E操縦者救出作戦を契機として、1990年代後半にセルビア上空で撃墜されたF-16戦闘機操縦者の救出作戦2例や、1993年のソマリアで米軍兵士19名が死亡した「モガディシュの戦闘」等を振り返りつつ、

「必ず連れて帰る:米空軍と全ての搭乗員との暗黙の契約」とのタイトルの記事を掲載し、戦時捜索救助任務CSAR(Combat Search & Rescue)の重要性や「将来のCSAR」(対中国作戦における同任務の実行可能性に関する論点や課題)を取り上げていますので、記事後半の「将来のCSAR」に関する部分を中心にご紹介します。  

同記事の前半部分は過去の米軍CSAR作戦を振り返り、
【1970年代のベトナム戦】
・多数の米軍機がベトナム軍に撃墜され、頻繁にCSAR作戦が実施されたが、数百名の米兵が北ベトナムの悪名高いハノイ・ヒルトン刑務所に収容され捕虜となった。米兵捕虜の大半がベトナム軍の追跡から逃れる余裕のなかった空軍兵士だった。

【1993年10月のBattle of Mogadishu】
・クリントン政権時に内戦激化のソマリアで、ソマリア民兵組織指導者の捕獲作戦を米陸軍特殊部隊が中心に敢行も、米軍Black Hawkへり2機が撃墜され、地上に残された米軍部隊が15時間にわたりソマリア民兵と戦闘状態に入り、米軍兵士19名死亡
・この戦闘で死亡した米軍兵士の遺体が、裸にされてロープで引きずり回される映像がTV上で流布され、米国民に大きな衝撃を与えた。1994年に米国はソマリアでの平和維持活動から撤退することとなった。

【1990年代後半にセルビア上空で撃墜されたF-16戦闘機操縦者の救出作戦2例】
・1995年6月、セルビア軍のSAMで撃墜されたO’Grady大尉が、被撃墜6日後に救助。撃墜時に僚機が同大尉の脱出を確認できず、同大尉の生存を疑う声が軍内に広まる中での救出
・1999年5月、同じくSAMで被撃墜のGoldfein中佐(後に空軍参謀総長2016-2020年)が、被撃墜後数時間で救助。この事案以降27年間、4月初旬のF-15E撃墜まで、空軍兵士へのCSAR作戦は無かった。

そして記事後半では「将来のCSAR」と題し
【対中国作戦における同任務の論点や課題】に言及し、
●近年、中国のような相手と本格紛争を迎えた場合の、CSAR任務の実行可能性に対する疑問が持ち上がっている。太平洋戦域では戦域が広大となることから、CSARヘリの航続距離や生存性が不足し、作戦機から脱出した搭乗員を救出不可能なのではないか・・・との疑問で、公然と能力を疑問視する声が上がっている
●実際この問題は、米空軍がCSAR任務に使用してきたHH-60 Pave Hawkへりの後継であるHH-60W Jolly Green IIヘリの調達計画機数を、上記の不安から、当初計画の113機から導入途中の2023年に85機に削減した際に噴出し、現在に至っている

●米空軍幹部は、強固な防空網を持つ敵との戦いを想定すれば、CSAR任務のため、無人機、自律型機、その他の代替機を検討する必要があると説明し、HH-60W調達数の削減を主張した。その後議会はCSAR能力に穴が開くことを懸念し、91機までの必要予算を議会権限で追加して現在に至っている
●ただ米空軍が2023年に再検討の必要性を主張展開した、より厳しい脅威下でのHH-60Wの代替能力検討については、現在に至るまで結論らしきものが定まっていない。

●1999年のCSAR経験者であるGoldfein元空軍参謀総長は、本件に関し直接的な言及を避けつつ、「より厳しい脅威下でのCSAR任務に備え、空軍はより大規模で強力な戦力を要とする可能性がある。空軍は、無人救助機など、選択肢を幅広く備えておく必要がある」と取材にコメントしている。
●また元参謀総長はイランCSAR作戦事案で、「SNS上に拡散されたF-15E撃墜関連データ、つまり写真、動画、偽画像、名前、場所などの情報を活用し、イラン当局がイラン国民に対し、F-15E搭乗員を早期に発見するよう賞金付きで促したように、新たな技術が生み出した能力と課題を、どのように生かしつつ対処するかが重要になる」と指摘し、「ベトナム戦時には米軍兵士が3週間も敵の捜索から逃げたケースがあったが、今後はそんな時間的余裕は期待不可能になろう」とコメントしている
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4月25日付米空軍協会web記事では、セルビア事案で救出された操縦者2名に取材し、当時の状況やイランCSAR作戦への思い等も取り上げられていますので、ご興味のある方は記事原文をご確認ください。

イランでの大規模なCSAR作戦の結果や教訓が、台湾周辺海上が主戦場となるであろう、対中国戦における将来CSAR作戦の再検討やテコ入れにつながるのか気になるところではありますが、台湾が日本の最西端「与那国島」から僅か100㎞ほどの距離に位置することを忘れてはなりません

戦闘により米軍機から米軍兵士が脱出し、台湾近海の東シナ海や西太平洋に着水して漂流する米軍搭乗員が出た場合、日本が何もせず傍観することを前線の米軍兵士が許すでしょうか? 米国の一般国民はどのような反応を示すでしょうか? 対中国作戦におけるCSAR任務が、決して米軍だけの問題ではないことを改めて申しあげておきます。

2026年4月のF-15E搭乗員の大救出作戦@イラン
「150機以上を投入」→https://holylandtokyo.com/2026/04/07/14427/

対中国でCSAR体制の再検討
「今頃救難ヘリの対電子戦能力テスト」→https://holylandtokyo.com/2025/09/19/12718/
「対中国救難検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

患者空輸部隊の苦闘
「アジア太平洋大演習で部隊が苦闘」→https://holylandtokyo.com/2025/08/29/12516/
「対中国に備えた取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/

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