ベネズエラ大統領逮捕後も石油や金の資源管理は難航

腐敗した政府や武装勢力支配の国家の管理は極めて困難
金は武装勢力と犯罪組織による非合法取引9割で対処困難
石油は設備難で増産厳しく、義務的な中国輸出は削減困難

4月10日付Military.com記事が、1月3日の米軍作戦「Operation Absolute Resolve:絶対的な決意作戦」のベネズエラ前大統領が逮捕され、ベネズエラの豊富な「金」資源に対して米国企業の関心が高まっているが、その採掘・供給網は犯罪組織や武装勢力等に支配された「非合法ルート」経由が9割を占め、米国企業が意識せず違法ネットワークに関与するリスクがあるとの要旨の記事を掲載していますので、「まんぐーす」調べの「ベネズエラの石油」資源に関する現状と併せ、ご紹介したいと思います。

特に石油に関しては、「イラン原油と併せれば、中国の息の根を止めた」とのYouTubeやSNS解説が流布していますが、既存の契約(特にベネズエラから中国への債務返済契約に基づく原油供給や合法的契約に基づく中国権益)は、政治的変化によっても白紙に戻せないのが現状です。

【需要が高まる金について】
●世界的な安全保障情勢不安(ウクライナやイランや中南米情勢等々)や、世界的な半導体需要の拡大を受け、金の需要と価格が急上昇しており、米政府や企業は、特にハイテク産業に必要な「重要鉱物」としてベネズエラの莫大な金・鉱物資源に関心を強めている
●米国は、経済安定化の一環として、ベネズエラの金や鉱物に関する交渉・取引許可のライセンス発行制度を導入し、米企業が参入可能になった

●しかし、同国の金鉱山や採掘現場の多くは、武装勢力・ギャング・一部の腐敗した軍関係者により支配されている実態があり、暴力・強制労働(児童労働)・環境破壊が横行する違法採掘現場となっている
●この様な現場採掘の金は「非合法」で国際的取引禁止だが、同国の金の90%が「非合法」と言われ、製品からは合法・違法の区別がほぼ不可能。また「非合法な金」は複雑な「密輸」流通経路を通じて国際市場に合法品として流入しており、参入米国企業が「非合法な金」に関与させられるリスクが高い

●米国はベネズエラとの関係改善や資源確保を模索しているが、政府機関や軍の一部に違法採掘関与の疑念があり、問題は深く構造的で短期での解決が困難。米国政府は関係企業に、「非合法な金」取引で「犯罪組織との関与」
「人権侵害への加担」「制裁違反」にならないよう注意喚起中

【中国の息の根を止めたとSNSで騒ぎの石油資源】
●石油資源は金と異なり、大規模インフラ(パイプライン・大型タンカー・精製施設)が必要で、流通は比較的追跡しやすく、国家や国際市場の管理が効きやすく、制裁も比較的機能しやすい
●米国は前大統領逮捕後、ロドリゲス暫定大統領(元副大統領兼エネルギー相)の「暫定政府」と協力し石油部門近代化を進める方針を発表も、統治安定性はまだ不透明で、長期的な投資や契約リスクが高い

●米国作戦前の段階で、同国の原油生産は、1998年の約350万b/dから、2025年末には80万b/d程度まで落ち込んでいるが、制裁緩和が進めば数カ月で10〜15万b/dの増産可能との見方もある。しかし、資金不足の中で、生産設備老朽化や制裁による維持整備不足な状態で、短期的な急回復は困難。「国営石油企業PDVSAの腐敗」も大きな課題
●また現状で、米国・西側企業では、唯一Chevron(米)社がベネズエラ国営企業PDVSAとの合弁を維持し、米国向け10〜15万b/dを輸入しているのみ。

●様々な推計によれば、ベネズエラ原油の6~7割が中国向けと見られるが、第三国経由・ブレンド・船籍変更 などの「間接ルート」が多く、公式統計では中国向けが過小に見える特徴あり
●従来中国向けが多い理由は、「ベネズエラ産重質原油の処理能力を中国が保有」「中国大型融資(2~9兆円規模)の返済が原油建て」「中国企業が産油地域で権益保有」「制裁回避のため」

●以上のように、中国向け原油輸出は「既存契約の債務返済」との性格を持ち、「重質原油の処理能力」との関係から他に選択肢が限定されるため、急激に中国向けを削減することは容易ではない
●実際には、現在の6~7割中国向けを、4~5割に「管理削減」を目指すのが現実的との専門家見解。「管理削減(見えない制裁)」とは、「船舶保険(ロイズ系)への圧力」「船籍国への圧力」「決済ルートの監視」「迂回輸出国への)への制裁警告」などの手段によるもの
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中南米の国は多かれ少なかれ、「政府の腐敗」「社会インフラの荒廃」「武装組織による非合法統治」の問題を抱え、海外資本が嫌う「投資リスクが高い」地域です。米国の「西半球重視」がどの程度のものか実態が不明確ですが、容易ではない政策であることは確かです。

それから、YouTubeやSNS上には、日本人が好み、アクセス数が稼げそうにアレンジした解説動画やメッセージがあふれていますので、皆で注意してまいりましょう

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