誰がA-10の戦闘救難任務CSARを引き継ぐのか?

追加情報がありました!!!

4月20日(米国時間)にMeink空軍長官がXで、「国防長官と相談し、A-10を2030年まで使用することとした」と発表しました。

以下の報道紹介記事でご紹介している様に、従来A-10攻撃機は2028年で完全引退することが決定していましたが、イランでの活躍等もあり、延命が決定されたものと解釈しております。
Meink長官は「2030年まで使用する」こと以外、具体的な維持する機数等については、言及していません。 とりあえず、追記しておきます。
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2029年完全退役予定もイランCSAR作戦で大注目の後継機未定
米空軍が将来への投資のためと退役を急ぐ中、議会やOBから疑問再び
戦闘機や爆撃機優先思考の陰で、顧みられなかったCSARを考える
F-35Aが後継有力な模様も、「誰も真剣に考えていない」とOB苦言

4月16日付Defense-Newsが「戦闘救難任務CSARの不透明な将来」との長文記事を掲載し、4月3日にイラン上空で撃墜された米空軍F-15E搭乗員2名の戦闘救難作戦CSAR(combat search-and-rescue operations)で注目されたA-10攻撃機に関し、2029年度の完全退役が決定済にもかかわらず、同機が担う「生存者のもとに迅速に到達し、HH-60ヘリ等の救助機の接近を援護し、生存者への敵の接近を阻止する」役割の後継機種が未定な状況等を取り上げていますので「概要の概要」を以下ご紹介します。

A-10攻撃機は、任務に適した滞空性能、優れた防弾性と生存性、地上攻撃火力を具備することから、ベトナム戦争等で同任務を担ってきた「A-1 Skyraider」や「A-7D Corsair II」の跡を継ぐ形で、1970年代後半から現在まで約50年に渡り、同任務を「Sandy」というコールサインで担ってきました。

「戦闘救難作戦CSAR」でのA-10基本運用は4機編成で行われ、1番機が全般指揮を執り、同時に生存者の識別確認と全般脅威判断と対処を担当、2番機は1番機のサポートと緊急時の代替任務を担当することとされています。残る3番機と4番機は、HH-60WやHC-130J等の救助機の直接防護任務を担う編成とされ、湾岸戦争、イラク、アフガニスタン、コソボと言った数々の実戦で、米軍各軍種の信頼を得てきました。

そんなA-10攻撃機ですが、米空軍は2010年頃から「F-35用整備員の確保」や「装備近代化経費の捻出」を理由に、耐用年数が残っているA-10の「早期退役」を検討し始め、2015年頃から「A-10全廃に向けた前倒し削減」を正式要求開始も、対テロ戦争の中で米議会の承認を得られず、2020年代に入りやっと段階的削減が始まりました。

しかしその後も毎年、削減計画や任務引き継ぎ計画で議会と揉めており、最新2026年度予算を巡っても、米議会から「2026年9月30日まで最低103機を保持」を付帯決議で義務付けられる等、「A-10保有機がなくなって本当に大丈夫なのか?」との疑念が根強くささやかれる状態が続く中、イランでのCSAR作戦での「片エンジン被弾の中でも、危険を顧みず残燃料ギリギリまで要救出者防御に当たり、帰路クウェート上空で脱出を余儀なくされた激闘」が発生し、A-10が再び注目を浴びることとなっています

A-10後継機を巡る議論に関し同記事は、
●A-10部隊保有の空軍戦闘コマンドACC報道官は、「CSAR作戦でA-10の役割を果たす後継機種は現在も検討中で、任務移管計画も未定」、「後継機の性能検証基準は現在策定中」、「米空軍は、A-10操縦者の豊富なCSAR経験を、他機種に円滑移行することを目指す」とのみ回答している

●ただし、ACCの任務移行関連の過去発言等からすると、F-35A型機が有力候補だと思料される。また任務移行では、操縦者の専門知識の引継ぎが重視されている。例えば、2016年にネリス空軍基地で後継機種評価試験を実施した当時の第422試験評価飛行隊長(当時中佐)は、F-35へ機種転換した元A-10のCSAR資格保有者に、F-35でCSAR訓練を実施させたところ、大きな問題なく訓練を完了したと証言し、「F-35機体性能の問題ではなく、操縦者にCSAR任務能力があるかどうかで75%は決まる」と主張している

●またCSAR作戦におけるA-10の1番機操縦者養成を担当していた退役中佐も、(後継機候補である)F-35A、F-15E、F-16の機体性能だけでなく、操縦者がCSAR任務に適した訓練を積んでいるかが大きな問題だとし、A-10操縦者のみが、必要な近接航空支援、前方航空管制(空中)、戦闘捜索救助の訓練を徹底的に受けている現状を指摘している

●2019年に行われたA-10任務のF-35Aによる代替可能性評価試験結果は、試験実施から3年も経過した2022年にやっと報告書が作成されたが、報告書は「F-35操縦者がF-35でのA-10任務の遂行に対し、著しい負荷で困難だと報告し、F-35単独での引継ぎより、A-10とF-35の併用がより効果的だ」と指摘している。
●ちなみに同試験報告書は、米議会がA-10退役を承認した数年後、つまり2019年の試験実施後6年以上が経過後(報告書作成から3年以上経過後)になってやっと公開されており、A-10任務をF-35に引き継がせる予定だった空軍の思惑に反した結果であったため、意図的に発表を空軍が遅らせたと噂されている。

●前述のCSAR操縦者教官だった退役中佐は、空軍戦闘コマンドや戦闘機操縦者コミュニィティーのCSAR任務への関心の低さが障害となっていると示唆し、CSAR任務におけるA-10後継機種未定を受け、A-10が担ってきたノウハウを継承する時間は残されておらず、イランでのCSAR作戦が課題の重要性を気づかせる契機となることを期待している、と語っている

●ただ、4月15日の下院軍事委員会で「A-10退役に備えたCSAR作戦への準備」に関し質問されたLamontagne空軍副参謀総長は、「これまでも場面に応じ、A-10の任務を様々な機体が担ってきたように、いろいろな機種が担っていくだろう」と曖昧に回答し、議員がA-10の特別な役割を指摘して再追求したが、満足な回答は得られなかった。

●イランでF-15Eが撃墜された同日、第357戦闘飛行隊は「最後のA-10パイロット養成コース」を修了し、米空軍は卒業式の写真を「A-10操縦者養成の最後のクラス」として公式発表している
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ご紹介したDefense-News記事が、A-10関連の退役操縦者2名のみの証言を頼りに構成されている点には留意すべきですが、米空軍がA-10任務の後継機選定を「うやむやにするかのように引き延ばしている」点は指摘されるべきと考えます。

対中国でA-10が活躍する場面は想定しにくいでしょうが、ホルムズ海峡「封鎖」を含めたイラン関連を含め、「西半球」でもA-10需要が減少しているとは言い難い現状で、「(米議会に早期退役をやっと理解してもらった)A-10を話題にしたくない」のが空軍の本音だと思いますが、単にA-10操縦者を機種転換させて「ノウハウ温存」との安易な手段に落ち着かないことを願っております。

根本には、戦闘機操縦者コミュニィティーが、このような「泥臭いが重要で不可欠な任務」を毛嫌いする悲しい現実があることを、うやむやにしないでほしいと思います。それと、中台紛争ぼっ発時の脅威下で、最新の救助ヘリHH-60Wが耐えられないことを理由に調達機数が大幅削減された後、なんら対策検討が進まず「放置」されていることにも、留意すべきと考えます。

4月3日~5日:F-15E搭乗員救出の大作戦
「A-10が決死の生存者防御」→https://holylandtokyo.com/2026/04/07/14427/

CSAR救難救助体制の再検討
「今頃救難ヘリの対電子戦能力テスト」→https://holylandtokyo.com/2025/09/19/12718/
「対中国救難検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

患者空輸部隊の苦闘
「アジア太平洋大演習で部隊が苦闘」→https://holylandtokyo.com/2025/08/29/12516/
「対中国に備えた取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/

A-10攻撃機の全廃議論
「CAS対決をF-35対A-10で」→https://holylandtokyo.com/2017/02/03/7389/
「全廃延期へ」→https://holylandtokyo.com/2016/01/24/7788/
「先が見えない全廃議論」→https://holylandtokyo.com/2015/05/13/8034/
「ACCボスが語る」→https://holylandtokyo.com/2015/02/20/8138/
「空軍トップ全廃主張」→https://holylandtokyo.com/2014/09/17/8309/
「全廃検討」→https://holylandtokyo.com/2013/06/22/8789/

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