中国が急速整備中の対潜水艦の海洋センサーネットワーク

中国の「海洋透明化戦略:Transparent Ocean strategy」紹介
西側優位と言われてきた潜水艦戦での立場逆転を中国が狙う
潜水艦位置を可視化するセンサーとネットワーク構築

10月16日付DefenseOneが研究者2名の投稿記事「中国が急速整備する海洋透視センサー網」を掲載し、西側優位とされてきた潜水艦戦分野での巻き返しのため、中国が西側潜水艦の位置を把握して必要時に攻撃可能なkillチェーン確立を目指し、宇宙から海底に至る強靭性のある5層のネットワーク基盤を構築する「海洋透視戦略:Transparent Ocean strategy」を過去10年以上に渡り着々と進めており、

センサー、中継装置、無人水中艇、電池改良と各機器の信頼性向上等に取り組んできた結果の一部が、8月の中露合同対潜水艦演習「海上2025」での両国情報リアルタイム共有で明らかになったと紹介し、今後特に南シナ海、台湾周辺海域、ルソン海峡、マラッカ海峡、グアムへの接近路などの要衝において、西側潜水艦の優位が脅かされる懸念が顕在化しつつあると分析し、米国は地域同盟国等と協力して対応を検討すべきと警鐘を鳴らしています。

多くの関連情報が専門用語を交えて短い記事に詰め込まれているため、まんぐーすの理解を超えている記事なのですが、東シナ海や日本の南方海洋域で、「中国がブイを設置している」とか「海洋調査船が勝手に観測ケーブルを垂らして活動している」との情報に接することが増えていますので、概要把握のため誤解のリスクを恐れず概要を取り上げたいと思います

潜水艦探知に5層のネットワーク基盤構築
●Ocean Star Cluster (space)との衛星群からのセンサー情報を基に、広大な海域のどの部分を、海上や海中センサーで重点監視させるかを絞り込む

●Air-Sea Interface (surface/near-surface)は、重要海峡や大陸棚に配置された高性能ブイや水上無人艇で構成され、海洋上層部のデータを収集し提供

●Starry Deep Sea (water column)では、海中配備フロートや数週間回遊する自律型水中艇で、海洋環境情報や音響情報を収集

●Undersea Perspective (seabed)は5層からなるセンサー網の背骨となる部分で、海底ケーブルで接続された観測所やハブで構成され、海洋観測船や無人艇の補給拠点やデータダウンロード場所ともなる

●Deep Blue Brain (data fusion)では、各種ネットワーク基盤から得られた宇宙、空中、地上、海底からのデータを統合し、センシングを調整し、killチェーンに標的を即座に乗せるタスク管理および意思決定支援を担う

上記5層のネットワーク基盤は、一部ノードが敵攻撃で被害を受けても、ネットワークを自動再構築する機能が内蔵され、弾力性のある「メッシュ型ネットワーク」となっていると記事は説明し、過去10年間で「海洋透視戦略:Transparent Ocean strategy」全体の構成要素が、研究室レベルから海の現場で実現され始めていると危機感を訴えています

センサーネットワークの側面では、中国電子情報技術研究院が宇宙、空中、陸上、海面、海底アセットを網羅する海洋ネットワークを運用して状況認識と環境情報監視を支援し、中国海洋大学は西太平洋で最も交通量の多い水路の一つを監視するアンカー係留施設と中継局のチェーンである初の黒潮観測システムを構築

超大型無人潜水艇(XLUUV)開発面では、政府の「深海主要技術および設備」イニシアチブの支援を受け、中国科学院の瀋陽研究所がオルカ級XLUUV建造の「プロジェクト912」を2018年に開始し、天津大学の「deep-sea gliders」は数週間にわたり海底から地上にデータ送信することに成功しており、静音化、バッテリー、音響アレイ技術は人民解放軍での試験に移行している

データ中継技術も進化し、衛星リンク、携帯電話ネットワーク、音響モデム間の切り替えでUUV、海底センサー、沿岸指揮所間のギャップを埋め、例えば海上配備のブイが最適なリンクをリアルタイムで選択して情報伝送可能なアルゴリズム構築に向かっている

無人水上及び水中艇の能力を左右する電池開発面では、西側の研究を参考に、優先開発項目として「higher-specific-energy batteries」「seawater metal-air cells」「seabed docks and cabled hubsでの桟橋無し充電法」が挙げられている。また装置が必要時まで最低限の電力消費で待機する「ウェイクアップ」方式が重視され、数ヶ月間スリープ状態で、指示時のみセット接続する方式の特許が出願されている

米国と同盟国への提言
●変化の激しい海洋環境と敵攻撃による被害に対応するため、中国が「メッシュ型ネットワーク」構築を目指している様に、西側も同盟国を交え強靭さを追求すべき
●潜水艦を完全に「隠す」ことが困難になりつつある中で、敵センサー妨害作戦や敵無人艇作戦を2本柱としてアプローチすべき。同時に敵妨害に備え、同盟国間で相互運用性の高い通信手段を構築すべき

●短期的な要対処事項としては、共同敵センサー欺瞞妨害訓練(joint deception drills)、長期運用型の無人水中艇への補給支援を無人化省力化する「seabed docking trials」、中国の観測ブイやセンサーが配置されている場所近傍への対無人装置ボックスの事前配備(pre-position counter-UUV patrol boxes)
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自分でもいい加減な記事紹介だと確信しておりますので、ご興味のある方は記事原文の用語や説明ぶりから、深堀していただきますようお願いいたします。

中国だって、「西側が潜水艦作戦では有利」と言われる状況を放置するはずがありませんから・・・。

「建造中の中国最新潜水艦沈没を確認」→https://holylandtokyo.com/2024/10/02/6388/

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