米空軍は老朽ICBM(Minuteman III)の更なる延命が可能と判断!?

米会計検査院GAOが報告書で米空軍が判断と記述
更に米空軍は多弾頭化(MIRV化)でミサイル部品枯渇に対応検討とも
GAOは実行可能性とリスク関連の報告を米空軍に要求

9月10日に米会計検査院GAOが発表した米空軍の次期ICBM計画(LGM-35A Sentinel計画GBSD)に関する報告書「ICBM Modernization: Air Force Actions Needed to Expeditiously Address Critical Risks to Sentinel Transition」の中で、甘い見積もりと杜撰な計画から、莫大な予算超過見積り(当初計画11兆円が、現在では“少なくとも”21兆円との推計)と計画遅延が予期されている同計画に関し、米空軍が当初2036年退役予定としていた現ICBM(Minuteman III)を、2050年頃まで使用せざるを得なくなるだろうとの見積もりを示すとともに、

米空軍も現ICBM(Minuteman III)維持検討チームの内部検討の結果、「更に25年間運用を続けることは可能だと既に結論付け」、更に「(部品枯渇で運用可能なICBM数減少に対応するため、)現在は各ICBMに1発のみ搭載している単弾頭運用を、早期に政府の許可を得て、維持管理が複雑になることを承知の上で、多弾頭化(MIRV化)の準備を開始したいと考えている」と明らかにしています

そしてGAOは上記実態を踏まえ報告書で、米空軍に対し、現ICBM(Minuteman III)から次期ICBMへの移行に伴う様々なリスク評価報告書を作成し、50年以上使用して内部のダイオード、コンデンサーや抵抗といった基礎的電子部品レベルの枯渇にまで及ぶ深刻な状態の中で、Minuteman IIIを計画より10年以上長く運用することによる維持リスク対処法を説明するよう勧告し、併せてMinuteman III をMIRV化するに必要な「人・物・資金」等の内容を明らかにすべきと要求しています。

なおGAOからの勧告を受けた米空軍は、勧告に同意する旨をGAOに返答しているとのことです
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米空軍が「Minuteman IIIを更に25年間運用を続けることは可能と判断」とか、「(使用可能なICBM減少に対応すべく、)早期に政府の許可を得て、多弾頭化(MIRV化)の準備を開始したいと考えている」といった内容が、米空軍による公式発表でなく、GAO報告書で明らかになること自体が異常で、既に米空軍年間予算(約5兆円)の2倍以上の経費超過が予期されている本プロジェクトの「ゾンビ化」程度を象徴しています

米空軍は、絶対に必要だと言い続けてきた核抑止3本柱の一つICBMの維持継続を、自ら「できない」と言い出せないことから、政治レベルで判断してほしいのではないでしょうか??? そんな雰囲気さえ漂う、デタラメな次期ICBM計画の現状でした

【復習:次期ICBM計画の昏迷】
●ICBM施設の老朽化やMinuteman Ⅲを含む維持部品枯渇に現場から悲鳴が上がり、部隊士気の低下から規律違反が激増する深刻な部隊状況も踏まえ、何回もの先送りを経て2020年にようやくNorthrop Grumman社と契約した次期ICBM計画は、50年以上実質的に関連施設を放置してきた結果、契約後に細部検討が開始されると、現施設の図面や細部設計に関する知見が既に散逸&喪失していたことが判明。

●結果として、契約時には施設再利用を前提としていた地下&地上施設や指揮統制通信インフラや、サイロの大半が再利用困難と判明。ICBM(LGM-35A)開発自体に大きな問題は発生しておらず、必要経費の大幅超過と後期の遅延は、この関連施設整備から生まれている。

●また、ICBM配備基地と関連施設が、交通の便が悪い米本土北部の辺鄙な場所に広く分散配置(5州にわたり分散し、日本の中国&四国地域を合わせた地理的範囲)され、更にICBMとの「秘密度の高い」施設建設には、高度なセキュリティー審査を通過した要員しか作業に関与できないことから、人材確保面からも高コストと工期遅延が生じている。

そのほか、でたらめな計画と経費&工期肥大を受けての、米国防省や米空軍の動きの「問題先送り」対応模様については、以下の過去記事でフォローしておりますので、「重要だと言いながら、誰も現場を顧みない、哀愁あふれる核兵器」の実態とともに、ご確認いただければ幸いです

超巨大次期ICBMシステム整備の苦悩
「サイロ再利用不可判明」→https://holylandtokyo.com/2025/05/14/11544/
「ずさんすぎる再承認」→https://holylandtokyo.com/2024/07/10/6109/
「国防次官あきらめムード」→https://holylandtokyo.com/2024/06/05/5929/
「米空軍だけでは対応不能」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

米軍核兵器の惨状
「初のオーバーホール」→https://holylandtokyo.com/2017/05/17/7308/
「移動式ICBMは高価で除外」→https://holylandtokyo.com/2016/06/17/7624/
「米空軍ICBMの寿命」→https://holylandtokyo.com/2012/09/24/9086/
「米国核兵器の状況」→https://holylandtokyo.com/2011/03/06/9644/

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