航空機用の防空システムでは対処困難と見切り
関連装備導入が毎年5割増で急ピッチ
中国軍需産業全体(約3000社が)が全力で多層防衛開発
ウクライナやイスラエル、更にはアゼルバイジャンやスーダンでの対ドローン最新戦況を中国軍と中国軍需産業が精力的に分析し、大型で高速飛行する航空機を標的に設計された従来の防空システムが対ドローンに不適で、同時に従来システムが費用対効果面でドローン対処で非効率である点を踏まえ、機敏に低空飛行して複数機の協調行動も得意なドローン対処に、
各種センサー(パッシブとアクティブ両面、電波、光学、音響等)情報をAI利用で融合し、これまたAI利用で対処オプションの選択を支援する指揮統制システムを介してセンサー情報を最大活用し、電子戦、指向性エネルギー兵器(レーザーや高周波パルス等)、AI支援型自律型迎撃機等の新たな迎撃アセットと従来ミサイルや機関砲を融合し、中国全体で 3000社もの企業を巻き込んだ大きな動きで取り組んでいると紹介しています
実際に関連対処兵器の契約件数が最近毎年5割増で伸び続けており、2022年に87件だったものが、2024年には205件に至っていると記事は紹介しており、以下に概要をご紹介するような主要国営企業がシステム統合を担いながら、様々な中小新興企業や民間需要も取り込んで、新しい産業分野を構築しつつあることを伺わせます。中国の公開情報の正確さを差し引いても、ご紹介する価値ありと考えましたので取り上げます
各種センサー開発
●アクティブレーダーでは、例えば、YLC-48「UAVターミネーター」は、ドローン探知専用に設計された 360度対応の携帯型フェーズドアレイレーダー
●DWL002 などのパッシブレーダーは、ドローンが発情する固有の電磁波を収集分析してドローンを探知するもので、自ら通信電波を発しない自立型ドローンや低視認性ドローン探知を狙う。これらパッシブレーダーは敵から発見させる可能性が低い。
●聯創光電(Lianchuang Optoelectronics)などの軍需企業は、AI活用の画像による目標捕捉技術開発に取り組んでいる。
センサーと対処兵器の融合システム
●国営電子軍需企業 CETC が開発の「天瓊Tianqiong(Sky Dome)」システムは、上記各種しーダーと光学センサー情報を、電子戦システムの妨害電波やエネルギー兵器(レーザーや高周波パルス等)と連接し、リアルタイムで自動威分析可能なネットワークを構築する
●更に CETCは、「Tianqiong」システムと指揮統制システムを融合する包括的な統合指揮統制システム「元模(Yuanmo)」開発にも取り組み、脅威評価と対抗措置選択を自動化して迅速な対処を目指している
迎撃兵器の開発
●高出カマイクロ波兵器開発では、国有企業と民間企業の連携も活発で、民生技術やイノベーションの軍事への応用も加速している。
●例えば、最近の珠海 Zhuhai航空ショーで公開されたNORINCO 社製の高出力マイクロ波兵器「ハリケーン 3000」は、3km以内のドローンを無効化する性能を持ち、これを補完する小型で車両搭載型「ハリケーン 2000」との組み合わせ運用が注目を集めている
●中国が多額の投資を行っているとされるレーザー兵器では、イエメンのフーシ派ドローン攻撃対処に効果を発揮してサウジが導入を決定した、中国保利科技(China Poly Technologies)開発の Silent Hunter が成果の一つ。30KWの光ファイバーレーザーは、最大射程 4kmで低空飛行ドローンに対処し、その有効性は中国内の治安作戦で実証済。
●巨大航空産業であるAVIC(中国航天科技集団)や CASIC (中国航天科技集団)等の主要企業も、独自レーザー兵器開発を進め、AVICのLight Arrowシリーズや Sky Shield シリーズ、CASICのLW-30およびLW-60 等のシステムは車両搭載型レーザー兵器で、AIによる自動化とマルチ波長帯目標照準機能により多様なUAVに対抗可能と言われている。これらのレーザ一兵器は、高価なミサイル迎撃兵器よりも連続射撃可能で、運用コストも圧倒的に低い。
●レーザー兵器には小規模企業や非伝統的な企業の参入も盛んで、精密な照準性能、ビーム集東技術、放熱技術が日進月歩で進んでおり、人民解放軍による多額の投資効果が表れ始めている
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中国軍事を「公開情報」でフォローすることは、中国の「政治」や「経済」でフォローするより難しいと思いますが、こうやって情報をまとめて紹介するDefenseOneの取り組みに感謝したいと思います。
高出力マイクロ波兵器「ハリケーン 3000」が「3km以内のドローンを無効化」できるなら、先日英国軍が同種兵器で「1km以内の無効化」に成功した装備が劣って見えますが、この兵器は周囲や友軍への付随的影響を抑えることとのバランスが重要な兵器で、単純な比較は困難だと思います
また「30Kwのレーザー兵器で最大射程 4km」も、30Kwでは本当の小型ドローン対処に用途は限定され、「精密な照準性能、ビーム集技術、放熱技術が日進月歩」な点は気になりますが、欧米企業と比較して驚くほどの性能ではありません。
ただ、レーザー兵器関連で記事が言及している「その有効性は中国内の治安作戦で実証済」や「フーシ派ドローン対処に効果を発揮してサウジが導入を決定」との部分は、「実戦経験不足」が大きな不安要素である中国軍にとって大きな力になると言えます。
また初めて耳にした「AI 支援自律型ドローン迎撃機:Al-assisted autonomous interceptors」を兵器化する柔軟な発想は、これが本当に使い物なっていれば「真に革新的」だと思いますし、米軍や西側同盟国にとっての大きな脅威となりましょう
中国軍関連の記事
「中国軍はウクライナから何を学ぶ」→https://halylandtokyo.com/2024/12/19/10475/
「腐敗に注目:中国軍事カレポート」→https://halylandtokyo.com/2024/12/20/10484/
「中国は台湾侵攻を考える状態にない」→https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
「RAND は中国軍に懐疑的」→https://holylandtokyo.com/2025/02/05/10745/
ドローン対処の苦闘
「F-16がロケット弾でドローン撃墜訓練」→https://holylandtokyo.com/2025/04/28/11366/
「英陸軍が高周波でドローン群れ撃退試験」→https://holylandtokyo.com/2025/04/21/11359/
「湾岸諸国はイスラエル製兵器に関心」→https://holylandtokyo.com/2025/03/10/10859/

