米国防長官が陸軍に大胆な組織&装備&将官削減指示

鳴り物入りだった「Futures Command」が・・・
「有人攻撃へリ」から「安価な無人機の群れ」へ
地上&海上移動目標の遠方攻撃力重視
Humveesのような数過剰な車両削減

4月30日、ヘグゼス国防長官がDan Driscoll陸軍長官に指示した米陸軍改革メモが公開され、「包括的改革戦略に基づき、陸軍構造を合理化し、無駄支出をなくし、調達を改革し、非効率的な防衛契約を近代化し、偏狭な組織防衛を克服して陸軍を再建し、戦士スピリットを取り戻し、抑止力を再確立」するため、「兵器開発計画の削減、不要装備品の退役、特官数の削減し、4つ星コマンドの削減や統合」を迅速に進めるよう指示している模様です

国防長官はメモの中で、「スリムで強力な部隊編成のため、陸軍は時代遅れで、冗長で、非効率的な装備や仕組み等を破棄し、司令部や調達システムを再構築する迅速に改革が必要」と述べ、「長距離精密射撃と、ゴールデンドーム構想に沿った防空・ミサイル防衛、サイバー・電子戦、対宇宙能力を優先すべき」と方向性を示しています

同メモを受け、5月1日にはDriscoll陸軍長官が米陸軍内に文書を出し、既に取り組みを開始している事項を含め、各項目の迅速な遂行を働きかけ、例えば「主要コマンドの廃止や司令部統合」を通じて、「1000以上の幕僚ポスト」を削減すると宣言しています。

以下では、5月1日付Defense-News記事から、ヘグゼス長官が指示した「よりスリムで強力な部隊構築に向けた米陸軍改革」の具体的実施事項の概要を、理解不足から来る「誤解釈」や「誤訳」を恐れず、ご紹介いたします

●主要コマンドを統廃合し、将官数を削減
・ U.S. Army North と U.S. Army South を統合し、「西半球コマンド:Western Hemisphere Command』を新編
・2018 年の前トランプ政権時に編成された、米陸軍の将来装備体系や装備要求性能や部隊編成検討を担う「Amy Futures Command」を、「Training and Doctrine Command」と統合合理化する。
「Futures Command」は、後にトランプ氏により更迭された Mark Milley 統参議長が、陸軍参謀総長時に強力に推進して創設されたコマンド

・装備品の維持整備を担う「Army Materiel Command」内の各種部隊や本部を「統合&再編」し、更に「Joint Munitions Command」と「Amy Sustainment Command」を「統合&再編」することで、組織効率を上げ、部隊支援能力を高める
・上記のコマンドや司令部の「統合&再編」で、将官含めスタッフ約 1000名を削減

●部隊装備の削減と再編による部隊編成の改革
・「kineticとnon-kinetic射撃、宇宙配備能力、無人システムをシンクロさせることで生まれる戦闘能力を生かすため、各種司令部再編を実行」との大方針を設定
・上記大方針の元、有人攻撃へリ部隊の削減と再編(例えば、戦闘航空旅団ごとに1個航空騎兵中隊を削減)。そして「安価なドローンの群れ」による敵の圧倒を狙った部隊新編成
・旧型AH-65Dの生産中止とAH-64E 型導入への重点変更

・地上部隊では、全ての「Infantry Brigade Combat Teams」を「Mobile Brigade Combat Teams」に縮小改編し、よりスリムにして機動性と打撃力向上を図る
・有人航空機、旧式無人機(特に Gray Eagle)、そしてHumvees のような数量過剰な地上車両といった装備品を「廃止」または「削減」する

・2027年までに、陸軍は地上や海上の移動目標を攻撃可能な長射程射撃能力を獲得する。関連で陸軍は2024年に射程 500kmのPrSM (Precision Strike Missile)を導入開始し、海上目標追尾用のシーカー開発にも取り組み中
・2026年までに、全師団が「無人システムとground and air launched effects」を導入。また同年までに全機動「小隊」レベルが「無人機対処能力」を保有し、2027年までに同能力を全機動「中隊」レベルでも装備

・2027年までに、戦城車、軍団、師団本部レベルでAI活用の指揮統制システムを導入する
・2028年までに、ウクライナ戦争で頭在化した弾薬問題に対処可能な、弾薬供給能力の改善に向けた有機的な産業基盤の近代化を図る
・インド太平洋地域でのプレゼンス確保に重点を置いた、事前集積や部隊ローテーション派遣や同盟国等との演習の強化

●調達迅速化への取り組み
・2024年頃から米陸軍省内で検討されている、無人機や対無人機装備や電子戦装備に重点を置いた、柔軟な資金供給の仕組みの迅速導入
・迅速な装備品プロトタイプ製造を可能にする「Other Transaction Authority agreements」の適用範囲拡大に取り組む
・企業側が保有している「知的財産権」に阻まれ、前線部隊での迅速な修理が困難な装備品に対する。「装備システム修理権の取得」を推進し、今後の全ての新規契約に「修理権条項」を盛り込む

●第2弾の改革計画
・Driscoll 陸軍長官によれば、上記の第1弾に続く、第2弾改革計画の取りまとめ指示が既に陸車省内に出されており、「今後数ヶ月以内に」第2弾が開始される模様
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「ヘグゼス国防長官が Dan Driscoll 陸軍長官に指示した米陸軍改革メモ」の現物を確認していませんが、相当に細かく具体的な内容が示されているようです。

どこまでが示された期限までに完了するのか、実現可能性に関する本音を聞きたいところですが、「有人攻撃へリ部隊の削減と再編」と「安価なドローンの群れ部隊編成」など、非常に抵抗が大きそうな内容もあり、米陸軍の本気度が試されそうで注目です

2025年5月5日発表の指示
「国防長官が米軍大将の2割削減を指示」→https://holylandtokyo.com/2025/05/07/11517/

大幅リストラ迫られる米陸軍
「肥大化懸念」→https://holylandtokyo.com/2025/01/08/10430/
「部隊の大幅削減含む改編不可避」→https://nolylandtokyo.com/2024/01/04/5394/

米陸軍ウクライナの教訓検討
「米陸車が評価中の様々な教訓」→https://holylanctokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245

死屍累々の米陸軍プロジェクト
「混迷:ヘリ精密兵器や出型無人機」→https://holylandtokyo.com/2024/07/01/6019/
「3千億円投入済のヘリ FARA 開発中止」→https://nolylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「M1E3 構想が急遽加速化」→https://holylandtokyo.com/2024/06/19/5977/

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