冷戦期・核兵器搭載B-52が墜落した3つの大事故

冷戦最盛期1960年代に第2撃力確保にB-52が空中待機中に
どの事案も爆発寸前か核物質まき散らしの大惨事
これら事故や他の抑止戦力充実で爆撃機空中待機は中止

1月24日は、核兵器の第2撃能力確保のため、米空軍が1960年に開始した核兵器搭載B-52による連続空中哨戒作戦(クロームドーム作戦:Operation Chrome Dome)に就いていたB-52爆撃機(水爆2発搭載)が、機体故障のためノースカロライナ州に墜落し、核爆発寸前に至った冷戦最盛期の事故から64年目となりました。

クロームドーム作戦は、1961年の事故の他にも、1966年と1968年(いずれも1月に発生:17日と21日)発生の爆発寸前又は核物質まき散らしの大惨事を受け1968年に中止されましたが、以下で概要をご紹介するような大事故を起こしながらも8年継続され、多い時には1日に12機もの核爆弾搭載のB-52爆撃機が北米大陸から北極圏、北大西洋からスペインに主る範囲を連続飛行していたことに驚かされます

本日は60年ほど歴史をさかのぼり、核兵器という秘密のベールに包まれた兵器が、いかに恐ろしい経緯を経て現在に至っているか、いかに人間によって扱われてきたかを振り返ってみたいと思います

1961年ゴールズボロ空軍機事故(Goldsboro B-52 crash)
●米本土ノースカロライナ州のシーモア・ジョンソン空軍基地(ゴールズボロ)を離陸し、北極海での任務飛行に就く予定のMark-39核爆弾2発を搭載したB-52が、空中給油中に見つかった翼からの燃料漏れにより基地への帰還を試みるも間に合わず、乗員脱出後に基地の北20km付近の高度約610~3,000mで核爆弾2発を放出し、タバコ農園と綿花畑が広がるエリアに投下した

●1発の核爆弾は、地表まで30mのところで落下傘が開き、地表衝突時の衝撃は弱まって完全な形で回収されたが、調査の結果、6つの安全装置の内の5つは解除状態で、核爆発しなかったのは1個の安全装置がかろうじて機能していたためと判明した

●もう1発は、秒速310mの速さでぬかるんだ土地に着弾して崩壊したが、爆弾内部の起爆装置は作動せず、トリチウムとプルトニウムを含む爆弾の各部は回収された。結果的に完全な起爆状態(fully arming)にならずに済んだものの、この爆弾も部分的に起爆可能な状態にあったという。

●Mark-39核爆弾は広島型原爆の250倍の威力があり、爆発していれば半径約30kmの生物全ては死滅し、米本土中東部の大西洋岸に「ノースカロライナ湾」が形成されていたと関係者は指摘している。乗員5名の内3名が墜落死している

1966年パロマレス米軍機墜落事故(Palomares B-52 crash)
●スペイン南部アンダルシア州アルメリア県の上空で、水爆4発(Mark-28)搭載のB-52と KC-135空中給油機が給油中に衝突し、水爆1発は無傷だったが、2発は核爆発はしなかったものの起爆装置が作動し、パロマレス集落周辺の地上2平方キロの範囲にウランとプルトニウムを発散して土壌核汚染を引き起こした。残る1個は海中へと没し、80日後に海底から回収された。給油機搭乗員4名は死亡。B-52乗員4名は生還


●米軍は1750トンの土を除去して米本土サウスカロライナ州の核施設に移送した。しかし 2011年現在でも、面積30ヘクタールの土地に500gのブルトニウムが残されているといわれ、2006年には環境団体が周辺のカタツムリから高レベルの放射線を観測し問題が再燃している

●スペイン政府は2006-08年に660~クタールを調査した結果、30ヘクタールで規制値以上(最大40倍)のプルトニウムを検出し、場所によっては深さ5mに達したため、41ヘクタールを鉄柵で囲った。スペイン政府は買収した土地の回復策と費用分担について米国と協議している

1968年チューレ空軍基地米軍機墜落事故(Thule Air Base B-52 crash)
●グリーンランド(デンマークの自治領)のチューレ空軍基地から離陸し、4発の水爆を搭載して哨戒任務に就いていたB-52で機内火災が発生し、搭乗員は緊急着陸の余裕なく機体から脱出し、機体は同基地近くのノーススター湾を覆った海氷上に墜落した。
●搭載していた水爆は核爆発こそ起こさなかったが、起爆用の爆薬が爆発して核弾頭が破裂・飛散し、大規模な放射能汚染を引き起こした。米国とデンマークが徹底的な除去および回収作業を実施したが、海中に没した核爆弾1発の一部は捜索でも発見できず、回収が断念された

●1995年になって、デンマーク政府が1957年の非核化方針に反し、グリーンランドへの核兵器の持ち込みを黙認していたことが公表され、政治スキャンダルとなった。また事故の数年後、核物質除去作業に関与した作業員が、被曝による賠償請求運動を行った。2009年3月、タイム誌はこの事故を史上最悪の核惨事の一つと報じた

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人類は、人々が知らないところで、「間一髪」生きながらえているのかもしれません。

以上は核兵器のお話ですが、サイバーやAIや宇宙の世界でも、普通の一般人が知らないところで、このような「間一髪」が起こっているのかもしれません。

B-52を大改修して能力向上B-52Jへ
「2060年代まで現役に向け」→https://holylandtokyo.com/2024/02/27/5575/
「B-52への熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「サウジ戦闘機が護衛」→https://holylandtokyo.com/2022/11/17/3957/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/

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