MQ-25艦載無人給油機は2026年に空母運用開始

米海軍航空部隊司令官が断言する
2025年には量産型が空母で飛行開始
無人機企業トップ:無人機への要求事項を明確にしてほしい

1月29日付DefenseOne 記事は、同28日にサンディエゴで開催のイベント「WEST 2025」で、Daniel Cheever 米海軍航空部隊司令官(海軍中将:Commander, Naval Air Forces)がポーイング社と米海軍が開発中のMQ-25 艦載無人空中給油機について、「私が発言した事として引用していただいて構わない。MQ-25の量産機が2025年には空母で(運用態勢確立に向けた)飛行を開始し、翌年2026年には空母で運用を始める」と述べました。

MO-25は、機種選定を経て2018年にポーイング社案が選定され、2019年に地上から初飛行、 2021年にはFA-18、E-2D。F-35C への空中給油試験や空母プッシュ甲板上での取り回し試験が開始され、開発は順調に進んでいました。そこで米海軍幹部は当時、当初の 2024年MQ-25運用開始を前倒ししようと取り組みましたが、

テロとの戦いによる空母派遣期間の長期化や空母修理施設の負担増大により、MO-25を最初に搭載予定の空母カールビンソンや空母プッシュの無人機受入改修が間に合わなくなり、米会計検査院 GAOが「3年遅れ」の恐れを指摘する事態となるも、米海軍は 2025年の空母運用開始を追求すると述べ今に至っていました

そんな中、2024年9月には米海軍が、最初にMQ-25を受け入れる予定の空母ブッシュに、無人機を管制する「Air Drone Warfare Center」を設置したと発表し、同センターは単にMO- 25を管制するだけでなく、他の米海軍が将来使用するドローンや、米空軍が開発中の無人ウイングマン機 CCAの管制までも視野に入れたもので、2025年初めから海上試験を開始すると発表していました

また報道では、空母ブッシュだけでなく、2025年度予算で空母「Carl Vinson」「Theodore Roosevelt」「Ronald Reagan」にも、空母ブッシュと同様のドローン管制センターが設置される計画だと紹介されており、DefenseOne 記者が最近訪問した空母リンカーンでは、「次回の大規模修理のタイミングで、輸送用コンテナ3個分ほどのスペースがある管制センターが艦内に整備される」と艦長が説明したようです。
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MO-25の空母での運用開始に関しては以上の通りで、今年 2025年は量産機の空母での運用試験や完熟飛行の様子を見守り、2026年の初期運用態勢確立IOCを待つことになろうと思います。

ところで本日引用した DefenseOne 記事は、もう一つ重要な論点を提示していますので、ご紹介しておきます。

つまり、無人機の性能はAIや機械学習の進歩により、自律的運用も相当ハイレベルで可能と開発企業は考えているようですが、米軍つまり政府として、ドローンの自律的運用をどこまで許容するか、もっと低いレベルでは、高度なドローンを有人アセットと融合し、どのように作戦運用するかが固まっていないから前進できない・・・との不満が企業側からあふれ出ている問題です。

以下に、米海軍幹部がほぼ勢ぞろいする1月 28日のイベント「WEST 2025」で、無人機開発 (米空軍の CCA等にも深く関与)で飛ぶ鳥を落とす勢いのAnduril社トップの発言をご紹介しておきます

米軍の無人機導入に対する企業側の「いら立ち」
●Anduri 社の経営幹部 CSOの Chris Brose 氏は「WEST 2025」講演し、「ドローンを既存の艦隊や航空部隊とどう統合するかの問題について、政府と業界が一緒に取り組まねばならない」、「(ただし)政府側は、ドローンの重要事項に関する要求性能について、もう少し積極的に検討していただきたいし、その必要がある
●「ソフトの観点では、自動ターゲット認識から任務遂行に関する自律性活用などの多様なドローン動作まで、その基礎となるアルゴリズム、つまり全ての機能を任務全体でどう統合するかを、政府側に提示していただく必要があり、その管理は政府側によって行われるべきものと私は考えている」
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技術の急速な発達に、米軍首脳部の知見や思考が追い付いておらず、同時に既存の有人機部隊への組織的属人的配慮が前向きな検討を阻害している典型的な事例です。 柔軟な思考で先端技術や作戦運用を変革したものが、戦いを制することになるのでしょう。

今を生きる世代は、ウクライナでその一端を見ているわけですが、より大規模に軍事組織の変革を行う国を目にすることになるかもしれません。 可能性としては中小国家の可能性が高いと思いますが・・・。

台湾がモデルになってくれれば・・・とも思いますが、日本に似て、年長者を敬い、軍人OB が発言力を持つ国ですからハードルはとても高いでしょうねぇ・・・。バルカン半島でコソボと対立の隠れた無人機大国セルビアとか、ロシアにイジメられている周辺国とか、イエメンのフーシ派とかの可能性も・・・

米国防省による無人機大量導入計画の現状
「Replicator 計画の今」→https://holylandtokyo.com/2025/01/09/10455/

MQ-25 関連の記事
「2年ぶりの記事:空母ブッシュに」→https://holylandtokyo.com/2024/09/13/6269/
「VRでE-2Dや P-8と任務連携」→https://halylandtokyo.com/2022/09/26/3677/
「FA-18への給油に初成功」→https://holylandtokyo.com/2021/06/10/1897/
「試験用空母確保難で3年遅れか?」→https://holylandtokyo.com/2020/06/18/626/

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