戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ

Columbia級SSBNが落ち着いたら知見を活かしてSSN-Xへ
Seawolf級とVirginia級とColumbia級の良いとこ取り
2031年1番艦調達を目指して

SSN(X).jpg10月12日付Military.com記事は、米海軍がバージニア級攻撃原潜の後継SSN-X検討を開始し、対中国など本格紛争を意識した重視事項を念頭に置いていることや、現在の潜水艦3種類の「良いとこ取り」を考えている様子を紹介しています

また米海軍首脳の話として、設計開発が佳境を迎えているコロンビア級次期戦略原潜の設計チームを、その知見を活用するため、そのままSSN-X設計チームとして再投入する方向にあると報じています

この記事は最新の話題ではなく、今年7月ごろに各所で発言された内容をまとめた「Business Insider」の記事(10月11日付)を転載したものですが、豪州がAUKUS枠組みで攻撃原潜導入を決定したタイミングでもあり、ご紹介いたします

12日付Military.com記事によれば
Houston.JPG●7月の米海軍協会イベントで米海軍のBill Houston潜水艦隊司令官は、「海洋ドメインにおける究極の最終捕食者(apex predator)となるような次期攻撃型原潜の検討作業に入っている」と語り、設計はまだ固まっていないが、3種類の米海軍潜水艦(Seawolf級SSNとVirginia級SSNとColumbia級SSBN)の良いところを集めた潜水艦にしたいと語った
●そして「最新のノウハウや良い点をどのように組み合わせて一体化するかについて議論している」と述べ、Seawolf級の搭載量と速度、Virginia級の電子搭載機器、Columbia級の無修理での長期運用能力などの特長を生かしたいと語った

SSN(X) 2.jpg●同司令官は、ロサンゼルス級設計時にはソ連後の大国との対峙は念頭になかったが、SSN-X検討は中国の台頭懸念の中で進めるとし、「大規模紛争に備えた艦である必要がある」と述べた
●また「SSN-Xには、敵の活動エリア内に潜入して打撃を加え、我の優位を勝ち取る能力が必要」、「敵が彼らの要塞エリア内に所在しても、敵対能力を拒否することが必要」、「多数の優れた敵潜水艦に対する対潜水艦作戦能力を、新たな優先要求事項に設計することになろう」と要求性能に関して検討状況を語った

SSN(X) 3.jpg●同司令官はSSN-Xの設計要員に関し、コロンビア級SSBN計画の設計開発が山場を越えて生産段階に移行するタイミングと重なることから、米海軍の資産であるコロンビア級SSBN設計チームの知見を活かして、引き続きSSN-Xの設計にも取り組んでもらうと語った
●この発言を受け、米海軍の全ての潜水艦建造に携わってきたGeneral Dynamics Electric BoatのKevin Graney会長は、「新潜水艦への要求事項が固まれば、わが社との協力体制がより強固になる。更に一体となった日々を米海軍と共に過ごすことになろう」とコメントしている

ご参考:3種類の潜水艦の概要は
●Seawolf級SSN
・ソ連の潜水艦発達を受け、ロサンゼルス級後継として1980年代に設計。しかし冷戦終結と高価格なため、わずか3隻で計画中止。米海軍史上最大のパワーと搭載量の攻撃原潜
・8つの魚雷発射管保有で、50発の魚雷や巡航ミサイル搭載可能。25ノット以上の速度で航行可能。就航後、最新のソナーやセンサーに改修更新
・3番艦のJimmy Carterは、約30m延伸して「Multi-Mission Platform」を搭載し、ISRやSEAL用無人艇などを搭載可能に

●Virginia級SSN
Virginia-class submarine2.jpg・高価なSeawolf級に代わり、より安価なロサンゼルス級後継として2011年から調達開始し、現在19隻が就航し、11隻が建造中で、更に4隻が契約済(計34隻)
・4つの魚雷発射管保有で、37発の魚雷や巡航ミサイル搭載可能。特長はミサイル等の垂直発射管と先進潜望鏡
・またVirginia級Block V型は、約24m延伸して「Virginia Payload Module」を増設。4つの垂直発射管(各7発ミサイル搭載可)を追加し、計65発搭載可能に

●Columbia級SSBN
・オハイオ級SSBN後継として2020年に発注され、米海軍史上最大の潜水艦となる予定で、一番艦が建造中も配備は早くとも2031年
・艦寿命42年の間に中間大規模修理が不要
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対中国の軍事作戦を考える時、戦略家ルトワック氏は攻撃型原潜が一つの鍵になると述べ、西側の優位性を最大限に生かせと主張(「ラストエンペラー習近平」奥山真司訳)していますが、強引な豪州への攻撃原潜導入も絡んで、大変ホットな話題になってきました

SSN(X) 4.jpgただ、米海軍の「お財布」の中は心もとなく、6月には当時の海軍長官が、「次期イージス艦、次期攻撃原潜、FA-18後継に優先順位をつけよ。予算不足で同時進行は不可能だ。優先順位を明確にして1つに絞り込め」と2023年度予算編成に向け、米海軍内に指示を出しているところです

そんな6月の海軍長官発言を受け、潜水艦族が水上艦艇族や空母艦載機族に対する「戦いののろし」を上げた形の7月の上記発言です。「中国と戦う前に、陸海空軍が互いに戦う」・・・という、いつか来た道ですが、これが米軍の現状です

それから、無人の攻撃潜水艦を50隻導入との検討も、昨年の春頃には当時のエスパー長官の下であったように記憶していますが、どうなったのでしょうか???

大型無人攻撃潜水艦にも注力を
「エスパー長官の構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
コロンビア級SSBNの関連
「1番艦契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-07-1
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「コロンビア級の予定概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

米海軍の課題&問題の一端
「新海軍長官が4つのCを重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-20
「3大近代化事業から1つを選べ」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「第1艦隊復活を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母フォード責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09

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