北極圏の極寒で戦うとは:砲兵演習より

米英仏スウェ等のNATO砲兵部隊が演習
敵よりもまず自然との闘いが
靴の中に新聞紙がカギ

11月27日付Defense-Newsが、11月中旬にフィンランドで実施されたNATO砲兵演習「Lightning Strike 24」(米英仏スウェーデン・フィンランド参加)を取り上げ、長射程砲兵射撃訓練を焦点にした演習ながら、極寒の北極圏でサバイバルし、部隊として機能発揮する難しさの一端を紹介していますので、この冬一番の寒波に「こたつ」から出られず、連休明けで体も重い皆様にご紹介いたします

演習はフィンランドで行われましたが、同様の環境下で戦う可能性がある北欧3国(ノルウェー、フィンランド、スウェーデン)のほか、北米大陸の米国とカナダにも極圏の極寒下での作戦ノウハウは必須であり、各国とも実地に体感しなければ身に沁みない「ノウハウ」や「教訓」伝授のため、海氷融解による北極圏への関心の高まりの中、多国間演習の緊張感を力に取り組んでいるようで、極地ならではの「エピソード」や「ノウハウ」を記事から列挙してご紹介します

同記事が紹介の訓練項目やノウハウ
●フィンランド軍の軍事教範の一節→「戦闘技術の未熟さよりも、天候への不慣れの方が兵士の命にとって大きな脅威になり得る」
●兵士の靴下やブーツの下に新聞紙を入れて湿気を取ることで、足指の凍傷など寒さによるパフォーマンス低下の予防になる

●積雪のない地吹雪や凍結した路面での重量の重い装甲車運航や、零下30度に達する低温下で榴弾砲を動かし続けるコツの習得
●寒さから武器が詰まりやすく(to Jam)なるため、銃をテント外に置いて凍らせておくことが多い。銃をテント中に持ち込むと、テント内で雪や氷が解けて銃の中に入り込み、屋外で再び完全に凍って詰まりの原因となる。銃は完全にテント外かテント内に置き場所を固定し、移動は避けるべき。

●155mm自走榴弾砲のような大型装備の場合、必要なときにすぐに使用できるよう、大砲のエンジンをいつ事前に始動させるかをその場の環境に応じて体感しておくことが重要
(ちなみに演習参加の某部隊では、持ち込んだ155mm自走砲8両のうち、4両の運転席ヒーターが寒さで故障したとのこと)
●砲兵部隊間の連携のため通信機能の維持は必須だが、極寒の環境では複数の通信手段を確保しておくことが特に重要で、今回の訓練でも複数のデータ送信手段が準備され使用訓練が行われた

●フィンランドだけでなく、北極圏の地域には多数の湖や沼が点在しており、そのような地形での部隊移動には様々なノウハウが必要であり、特に常駐部隊が稀な北極圏では部隊の長距離移動が任務遂行に求められることから、その特性や注意点を把握しておく必要がある
////////////////////////////////////////////////

中東での対テロ対策で蓄積された過去20数年間の「ノウハウ」とは全く異なる、極寒の地での作戦運用ノウハウの「掘り返し」「再評価」「共有」「伝授」がいま求められているということです。

様々な電子回路や電子部品でハイテク化された現代の装備ですが、零下20-30度の世界で連続使用が可能かどうか・・・開発&評価試験段階で仮にクリアーしていても、前線部隊の使い方次第では「想定外」が起こりそうで気になります

北極圏関連の記事
「寒冷地での攻撃ドローン試験ニーズ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/05/4956/
「零下40度にF-35初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/02/07/4257/
「ミニ原発の候補地」→https://holylandtokyo.com/2024/01/16/5432/
「潜水艦作戦強化」→https://holylandtokyo.com/2021/07/21/2023/

世界の安保・軍事情報を伝えたい ブログ「東京の郊外より」支援の会
米国を中心とした世界の軍事メディアが報じている、世界の標準的な安全保障情報や軍事情報をご紹介するブログ「東京の郊外より・・・」を支援するファンクラブです。ご支援お願いいたします。
ブログサポーターご紹介ページ
お支援下さっている皆様、ありがとうございます!そのお気持ちで元気100倍です!!!●赤ちょうちんサポーターの皆様(3000円/月)●ランチサポーターの皆様(1000円/月)mecha_mecha様kenj0126様●カフェサポーターの皆様(...
タイトルとURLをコピーしました