海兵隊精鋭テスト飛行部隊の大佐指揮官が操縦
部隊調査後に任務復帰で指揮官就任も海兵隊司令官が更迭指示
「緊急脱出判断」の基準があいまいと調査報告指摘
10月31日付 Defense-News が、2023年9月に発生した着陸時の機体異常で操縦者がF-35B 機から射出座席で緊急脱出し、機体が11分間無人飛行の後に約 110km離れた林に墜落し、けが人や地上に損害は発生しなかっものの F-35B が全損した事故と操縦者に対する措置について報じ、
2024年1月の事故調査報告書は、操縦者は職務怠慢ではなく操作手順書に基づいて緊急脱出したが、機体の予備系統は機能しており継続飛行は可能であったとして、脱出の判断は誤りだったと結論付けたものの、事故後、操縦者は調査委員会の勧告に従って対応し、2024年6月に操縦資格を回復して6月21日から名門の海兵隊試験評価飛行隊(VMX-1)の司令官に就任していたが、
指揮官就任から 3か月以上経過した10月2日に、海兵隊司令官が事故報告書を確認した結果として、当該操縦者は「指揮責任を遂行する能力に対する信頼を失った」として、VMX-1指揮官職を解任され、後継司令官が指名されたと取り上げています
解任された Charles Del Pizzo 大佐 49歳は、1997年に士官任官後、1999年から海兵隊パイロットとしてAV-8B ハリアーを中心に中東派道6回で飛行時間2800時間の円熟パイロットで、F-35B、MV-22オスプレイ、CH-53Eを有する試験評価部隊 VMX-1で海兵隊航空部隊の戦術や手順の開発改良を担う部隊指揮官の重責を担っていたパイロットでした
事故はVMX-1指揮官就任の前の部隊での訓練飛行後、雨で「極めて困難な認知および飛行条件下」で着陸態勢に入った後、F-35B が故障し主要な機内表示装置と通信が機能不全となったため、高度約 600mで緊急脱出して民家の裏庭にパラシュートで着地したというものです。(幸い大したけがはなく、翌日退院)
問題はパイロットを失った機体で、バックアップ機能が生きており、Pizzo 大佐が最後まで操縦を試みてインプットされた操作に基づき自動操縦で高度を一時は 3000mにまで回復し、11分間以上も飛行して車で2時間ほどの森林の中に墜落したのですが、約 11分間の飛行中は大半がレーダーに映らない低空飛行だったこともあり、墜落現場が見つかったのは翌日の夕方になったとのことです
メディアやSNS上では、「ステルス機がパイロットを失って行方不明」との情報が飛び交い、米海兵隊には当然厳しい声が各方面から届いたようです
10月2日に更迭されたPizzo 大佐は、海兵隊を通さずに「VMX-1の海兵隊員や文民職員を率いる機会を得られたことは、この上ない栄誉だった」、「この予期せぬ任務変更に適応するにあたり、友人や家族のサポートに深く感謝している」との声明を発表したとのことです
なお、F-35B の飛行手順書には、パイロット操作に適切に反応しない航空機は制御不能とみなされ、高度 6,000 フィート以下の航空機ではパイロットは脱出しなければならないと記載されており、
事故調査報告書は Pizzo 大佐が、
「高度6,000フィート以下で航空機の制御が失われたと認識し、適切な緊急手順を適用した」と指摘し、「飛行手順書の制御不能飛行時の定義がぼんやりと広範すぎることが今回の事故の一因となった」とも指摘しているようです
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記事原文には、もっと詳細に事故時の機体の状況や Pizzo 大佐の操作や判断を公開された事故報告書から紹介していますので、ご興味のある方は記事原文や海兵隊の公開情報ライブラリー (https://www.hamc.marines.miAgencies/USMC-FOIAVFRRI)で報告書をご確認ください
焦点の絞れていない概要のみのご紹介となりましたが、読者のご関心の視点により、パイロットの厳しさ(F-35B操縦時間30数時間)、ハイテク戦闘機F-35B の設計、海兵隊の事案への対処要領等々、様々な方面から考えさせられる事案だと思います。
Pizzo 大佐は現在、「今後の任務について選択肢を提示されており、現在、彼と家族は次のステップを検討している」とのこと、新たな道でのご活躍を祈らずにはおれません
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